医療・介護を支える継続企業の知恵袋

毎日ブログを書き続け10年が過ぎました。2025年、2042年に向けた医療介護の厳しい時代を乗り切る策を考えます。

副作用と薬害

2011-01-26 06:49:05 | 薬局
これは対岸の火事ではない。

「イレッサ」の副作用をめぐる訴訟が暗礁に乗り上げた状態である。
「イレッサ」には副作用として「間質性肺炎」がある。
それについては添付文書にも記載されており、使用時の説明もなされていると思う。
これに対し原告側は「添付文書に副作用の十分な情報が記載されていなかった」と指摘している。
これを受けて東京・大阪の両裁判所は国と企業の責任を認める和解勧告を示した。

ところが、事は単純ではない。
この和解勧告に対し医学会が「医薬品の副作用を薬害だと受け止められては、患者に新薬を提供できなくなる」と反論。
和解文の公表はないが「間質性肺炎」の重要性を、添付文書中でどの様な扱いだったかが問われている。
添付文書の初版では「重要な副作用」の4番目に記載されていたことが重要度の重要性を問う形となっている。
裁判所の判断は「重要な副作用欄の最初に記載し、致死的なものになりうると注意を促すべきだった」としている。
こうなると添付文書に記載されている副作用の順番によっては訴えられる可能性が出てくることになる。
これは事件だ。

さらに、今回の訴訟に国と企業が和解勧告に従った場合、抗がん剤などの副作用の発現が比較的多い薬剤について、不確実な安全情報でも確認が必要になり、新薬承認に時間を要することにもなりかねない。
また、処方する医師にとっても治療がしづらくなる。
副作用を全て説明する必要が出てくる。

薬局においてもハイリスク薬なるカテゴリーがある。
そこには数多くの副作用が記載されている。
その全てについて注意を促し、副作用の発現説明が必要となる。
しかもハイリスク薬の加算の算定の有無に関わらずである。
副作用はあらかじめ分かっていることだ。
だから起こりえる可能性を説明する必要がある。
しかし、薬害は副作用とは意味合いが異なる。
副作用を薬害として処理されては困る。
大阪地裁は2月25日、東京地裁は3月23日に判決を出すらしいが、薬剤師として注目して欲しい。



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