かちこのアメリカ奮闘記その後

アメリカの大学院での登録栄養士(RD)を取得、帰国して日本の病院でNST奮闘中

ルームサービス形式の病院食(インターンシップ4週間目の最後)

2011年02月25日 | 病院でのインターンシップ

今日はインターンシップ4週間目の最後の日(金曜日)でした

(この書き込み、途中で止まってて後からアップロードしたので前後関係がひっくり帰ってるですが大目にみてください・・・

毎日たくさんの経験をさせてもらって学ぶことの多い日々ですが、

ここ数日は患者さんの食事のトレーラインに入って患者さんのトレーを確認したり

調理場の一角にあるコールセンターの電話を受ける体験をしたりしていました

前にも書きましたが、うちの病院は数年前から

・患者さんの好きな食事が患者さんの好きな時間に運ばれてくる

・食べる直前に患者さんが注文し、注文が入ってから一人前ずつつくる

という形式で食事を提供しています。

いろんな論文を読むと、この形式は患者さんの病院に対する満足度に大きく貢献するらしく、

病院の質の向上のために近年アメリカで注目を浴びている食事形式です。

ある文献によるとアメリカにある食事を提供している病院の約40%が現在すでにこの方式を取り入れているか、

または2年以内の導入を検討しているんだそうです。

日本はこの形式にしている病院ってあるのかな・・・。

 

ところでこの形式をあんまり知らない人は、いったいどうやってそんなシステムが成り立っているのか気になりますよね?

あくまでうちの病院を例に挙げると、、以下のような仕組みになっています。

 

患者さんは自分の病状に会ったメニューを持っていて、自分の頼みたい時間に部屋についている電話から注文。

コールセンターは患者さんから電話を受けて、患者さんのID をパソコンに入力することで、

選択可能なメニューのみを表示し、その中から患者さんの注文を聞いていく。

注文を受け取り終わったらそこからパソコンのワンクリックで厨房の数か所で注文がプリントアウトされ、

それを見て、注文完了から数秒後にはコックさんたちが料理を始める。

そしてトレーラインに注文した料理や飲み物が集まり、注文品目をすべて乗っけたら

最終チェックを経て患者さんの元に運ばれる。

といった流れになっています。

患者さんが部屋から電話で注文をしてから料理を受け取るまで30分~一時間くらい。

ピザとかラーメンの出前感覚でしょうか

なので患者さんには、食べたい時間の一時間くらい前に注文してくださいとお願いしています。

温かい皿は保温機能のあるカバーがついていて一時間は70℃を保つと言われています。

ただ、アツアツは難しいみたい。実際は。

 

でも作り置きをあまりしないのと一人づつ作るので大量調理にありがちな煮崩れとかがほとんどありません。

コックさんたちもみんなレストラン経験者ばかり

こんなに食べ物の質に気を使えるなんて、本当にすごいと思います

ただ、これを成し遂げるにはたくさんの苦労と工夫がありました。

このシステムやこの病院の食事の質の高さは最近ではABCニュースやタイム紙などに取り上げられ、

私の働いている病院は研究、がん治療、食事の質とホスピタティのすばらしい病院としてかなり知られるところのようです。

マスコミに取り上げられたり患者の満足度が数字として明らかに上がることで私の部署は予算や人件費を獲得していっているようです。

実績をつくりながら将来のさらなる発展の種をまいていく、これはどの分野でも大切なこと。

私も見習いたいです


ホスピタリティと治療

2011年02月25日 | 病院でのインターンシップ

私の実習先の病院は一番上のシェフ(executive chef ) が午後、病棟を回ります。

食欲がなく、体重が減りがちな癌患者にとって食事を十分に食べて体力をいかに落とさないかというのは

とっても大切なんです。

そのため、病院の料理は患者さんの好きなものを、レストランのメニューのようなたくさんの品目の中から

自分の好きなものを好きな時間に病室からして注文します。

料理は一時間以内に部屋に運ばれてくることになっているので、

患者さんは自分の食べたい30分~1時間前くらいに注文するんです。

 

さてさて、そんな食事の質に力を入れているこの病院ですが、シェフがとってもすごい人なんです。

特にいろいろな環境の変化や、治療に大きく食欲を左右されがちな小児病棟を中心に、

食事が口に合わない人がいないか、何か食事に関して質問や意見がないか、

病室をまわるんです。

先日、ちょうど夕食の時間帯に、シェフが料理をカートに乗せてエレベーターに乗り込むところを発見!

私は自分の実習時間は終了していたので、思わず

「一緒に病室に行ってもいいですか?」って聞いてみたら OKだというので

ついていきました。

シェフが病室に入ると部屋から大きな歓声が。

個室にはまだ幼い患者さんとご両親らしき人が。

さらにシェフが料理のふたを開けるとその男の子が

顔を赤らめて「きゃー!」と感激の声。

どうやら男の子が特別に食べたいものをシェフにお願いして

つくってもらったみたいなんです。

男の子は頭にシェフとおそろいのコック帽をかぶっていて、シェフの大ファンのようです。

でも憧れのシェフを目の前にしてすごい恥ずかしがりよう。

お母さんに抱きついて真っ赤になって喜んでます

そしておかあさんにこそこそ声で何か一所懸命伝えています。

お母さんが「自分でシェフに言ってみなさい」と男の子に言うんですが、

男の子はシェフにお願いごとがあるのに恥ずかしくて直接言えないみたいなんです。

シェフが「なんでも言っていいよ」っていうのに

なかなか男の子が言えないので、見かねたシェフが

「じゃあ私後ろ向いててあげるから、そしたら言える?」って男の子に聞いて

男の子に背を向けました。

そしたらやっと男の子が小さな声で

「また好きな料理頼んでもいい?」って。

シェフはすごい大笑いして「なーんだ、そんなことか。2回目どころか何度でも好きなもの言って!作ってあげるから!」って

男の子の喜びようったら!体をくねらせて喜んでました。

そしてもう一つお願いがある・って

男の子はあこがれのシェフとおそろいのコック帽にシェフのサインをもらいたかったんです。

男の子はシェフにサインをもらい、さらにツーショットで写真をとってもらい、本当にうれしそうでした。

そしてそれを見守る両親のうれしそうな顔!!!

癌の治療って大人でも大変なのに、小さな子供はたくさんの大人に囲まれて毎日つらい治療と戦っています。

そんな子供にあれだけの幸せなひと時をプレゼントできるシェフって、本当に素敵だなと思いました。

もちろん憧れのシェフに好きなものを作ってもらった男の子はきっといつもよりもたくさん食べれたんじゃないかなと思います。

シェフだけでなく、この環境をコツコツと作り上げてきた栄養部の人たちに脱帽です。

友達に「癌専門の病院で働くなんて大変だね、毎日死とかに向き合って、すごくつらそう」って言われることがあるんですが、

そんな中でもささやかな喜びや幸せがたくさんあるんだな。

そんなささやかな幸せを大切にしてる人たちって素敵だなって思いました。