人生成り行き、馬まかせ(目指せ回収率90%)

好きな言葉は『番狂わせ』。
競馬にドップリ浸かっている還暦オヤジ゛の泣き笑い雑記

正蔵を観てきた!!

2005-04-06 21:34:14 | Weblog
「こんなものか・・・」
先日、新宿末広亭に「林家正蔵 襲名披露興行」を観に行った。これまで何度も末広亭には出かけているが、二階席まで満員で立ち見がでるなんて凄い人気。ただ客層をみると寄席が初めてという人が多そうである。
 前座が終わり、知人である林家きくお君の落語から興行が始まる。きくお君が得意の父・木久蔵ネタ(ほとんど悪口だが)で客を摑む。その後ギター漫談家・桜井ペペ師匠、ミュージカル落語の林家しゅう平と続き、正蔵の実弟・林家いっ平が登場。以前観たときに比べ、上手くなっている。正蔵効果か!? さすが2代目林家三平、いや海老名香葉子である。いっ平のあとは曲芸をはさんで橘家円蔵師匠の登場である。円蔵で分からない人は前の月の家円鏡といった方がわかるだろうか、一世を風靡した落語家だ。だが落語は酷かった。『堀の内』をやったのだが、話が飛びすぎる。それでも優しい客からは笑いが起こっていた。円蔵師匠の後は落語協会副会長の鈴々舎馬風師匠。馬風師匠独特の毒舌が出るかと思ったが、お祝いの席ということもあり軽い話でさっと高座を降りた。
 仲入り後、襲名口上である。中央には正蔵が座して、左から春風亭小朝師匠、円蔵師匠、三遊亭金馬師匠、そして正蔵、桂春團治師匠、馬風師匠が並ぶ。小朝師匠の司会で、円蔵師匠、金馬師匠が挨拶。ここでも円蔵師匠は何を言っているか分からない。困ったものだ。次は上方四天王のひとりである春團治師匠の挨拶。しっとりして滑らかで存在感抜群である。締めは馬風師匠。さすがにここはキチッと締めた。最後は皆で正蔵の手拭がばら撒かれた。
 スポーツでいうならここからが後半戦である。まずは小朝師匠が現代の夫婦像を見事に描いた新作で客席を沸かす。その話芸はさすがである。次は金馬師匠が酔っ払いを見事に演じる。そして僕が一番期待していた春團治師匠の登場である。登場から雰囲気が違う。なんと表現していいのだろうか、“美しい”“粋”“繊細”どれもが当てはまる。演目は『野崎詣り』。春團治師匠の十八番である。見事! “来て良かった”と思った瞬間だ。
 紙切りをはさみ(シャレじゃない)、大トリ正蔵の登場だ。最近高田文男氏らが絶賛している落語とはどういうものか、拝見である。演目は『一文笛』。あの人間国宝・桂米朝師匠が作った古典落語で、正蔵がこぶ平の時からよく高座で披露している噺である。今この噺をやるのは、米朝師匠、米朝師匠の弟子桂ざこば師匠、正蔵ぐらいだと思う。まくらがあって噺に入る。「正蔵の落語は初めて聴くが上手いほうだろう」最初の感想である。途中2,3箇所噛むところがあるも無難にこなす。この噺、人情噺で盛り上げ、下げは「あっさり」という流れである。これが米朝師匠だと見事に嵌る。しかし正蔵は下げの前の間が・・・。
 文頭の言葉は僕の正直な感想である。原因は余りにも前評判が高かったため、僕の中でとても期待感が大きかったことだろう。それも談志師匠、志ん朝師匠、米朝師匠並みの・・・。考えてみれば、いきなり名人と比べられては酷な話である。ただ落語に関して一生懸命なのは感じられた。よってまだ若いしこれからもっと上手くなるだろう。頑張って精進して欲しい! 
ただ今日全体の興行に対してはとても不満なことがあった。それはシャレとはいえ、他の師匠の悪口が多かったことだ。きくお君の木久蔵師匠から始まり、しゅう平君が三平師匠を、いっ平君は鶴瓶師匠、歌丸師匠を、馬風師匠が金馬師匠を、小朝師匠が木久蔵、こん平師匠を、正蔵が三平、小遊三師匠を使って、笑いを誘った。シャレだから攻める事はできない。ただここまで多いと客として馬鹿にされているようで仕方なかった。円蔵師匠や馬風師匠は「こんな日にばかり来ないで普段も寄席に足を運んでください」と言っていたが、これでは・・・。今回は特別興行のため、正蔵に対してみんな気を使い本格的落語はやらなかったのだろうが、僕はこんなときこそ皆が本格落語をやるべきだと思う。そして落語の面白さを少しでも初めての人に伝えるべきだろう。落語って本当に面白いのだから・・・。
 あっ、その日一番面白かったのは、落語が酷かった円蔵師匠の小噺に客が笑ったあとのひと言だった。目の前の客に
「ねぇ、僕って面白い事言うでしょう」
参った、これが寄席である。
コメント (3)
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