木曾宿場町を辿る その３

８月１３日

寝覚めの床～（国道２６号）～乗鞍高原～乗鞍～松本IC～四つ木

曇り～小雨～濃霧～快晴

起きてみると山々は霧に煙っていた。

そういえば昨夜は生あたたかく雨の降る予兆なものが感じられた。（山では前の晩に冷え込むほどあくる日の天気はよい）

霧雨の中、国道を挟んで宿の向い側にある名勝地「寝覚めの床」に降りてみる。

上流から走ってきた木曽川の流れがここで、図ったように見事な方状節理の花崗岩の岩郡にさえぎられ美しい緑乳色の淵を作り出している。

ここには浦島太郎伝説なるものがあり、竜宮城から帰った太郎がしばらく村で暮らすうちに心細くなって玉手箱を開けたのがこの岩の上だったという。

なぜ海から帰った太郎がこんな山奥の谷に来たのか、不思議なのだがそのへんは伝説のおもしろさ。

８時、宿を出る。

このまま１９号を上り、松本に出て長野道を西走するルートだと２時間以上かかるのだが、宿のおじさんから、「藪原駅手前から左に折れて国道２６号を行くと奈川渡で長野道と合流するので一時間はショートカットできますよ」と耳寄りな情報をいただいたので、そのとおりに走る。

のどかな山里の静かな道でこちらの道が木曽川源流に繋がる。地名は忘れたが、山奥から流れ出る小川が２か所に分岐している地点があり、そこが奈川と木曽川の分岐点かと思われる。

境峠を経て左に折れれば野麦峠を越えて昨年旅した高山に向う道。

予定していた乗鞍スカイラインは前々日の台風の影響で土砂崩れのため封鎖しているので山を迂回する格好になったが一時間ほどで乗鞍高原に着く。雨脚が次第に強くなってくる。

乗鞍岳もマイカー乗り入れはできないので高原観光センターにてバスに乗り継ぐ。

乗鞍へはまだ中学生だった頃、来たことがある。文字通り馬の鞍のような美しいカーブを描く山容が素晴らしかった。一昨年上高地から来た時は時間がなくバスに乗るのを断念したので今度こそ再びあの景色を見たい！と思っていたのだが、あいにくの雨。

約一時間バスに揺られているうちにも霧はどんどんどんどん濃くなってくる。

山頂付近の畳平に着くと、そこには高山植物の群れる花畑がある（はず）、北アルプスも中央アルプスも一望のもと（のはず）、雷鳥にも会える（はず）、なのになんと無情なことか眼前はホワイトアウト状態～。雪でも降るのではないかと思うほど寒い。

やむなく乗ってきたバスでそのまま引き返す（涙）

バスの運転手さんは盛んに「皆さん素晴らしい景観を想像してください、想像してください」、とアナウンスする。

そうそう、想像力はどんな時も百万の味方！！

九州阿蘇山の草千里の濃霧も北海道摩周湖の濃霧も想像力で無念さを乗りきったものだ。またいつかきっと来る！という楽しみが高まるというもの。

バスセンターを１２時頃に出発。何度も来ている松本までの道（長野道）を走り、途中の波田市で名物のスイカを買い求め、松本で昼食。そのままインターに入り中央道をまっしぐら東京に向かう。

往きはよいよいで走った中央道上り車線は笹子トンネル手前から渋滞～～～。

台風と地震の影響で東名高速が工事のため封鎖されみんなどっと中央高速になだれこんだらしい。おまけに山梨に入った頃から気温はぐんぐん上がって境川サービスエリアに休憩をとったときはギラギラの日差し。

八王子を過ぎると世界が変わったように急に山がなくなる。車のときはいつもこのあたりで東京に帰ってきてしまった、と感じる。首都高に入ると山はビルに変わり、川の流れは車の洪水に変わる。

６時、家に帰着。東京（四つ木）は思ったより蒸し暑さはなかった。

帰宅して早くも次の旅をもくろんでいるわたしである。