風音土香

21世紀初頭、地球の片隅の
ありをりはべり いまそかり

「岩手の方言」

2018-03-09 | 読書


書棚の中には大切にしている本がいくつかあるが
この本もそのひとつ。
当時岩手医大教養部助教授だった国語学者によって書かれ
1982年に出版された古いものだ。
大学時代に書店で見つけ、2500円という、
当時にしては高価で貧乏学生にはきつかったが、即買い。
エンタメで書かれたものではなく、
きちんとした学術書なので読み応えもあった。

物書きになりたくて文学部に進学したものの
文学系の講義やゼミは作家論中心。
私には重箱の隅をつついているようにしか見えなかった。
そんな時に国語学演習で言語地理学と出会った。
面白い。
柳田國男の「蝸牛考」をテキストに
言語学的なアプローチによって比較文化を学んだ。
同じ先生の別な演習では語彙史を学んだ。
そっかー、方言といえど種類があるんだな。
現代標準語からは消えてしまった古語が残っていたり
発音やイントネーションの関係で音便化したりしたものが
今は方言という扱いになっているんだ。
ということで、
それ以来方言の語源について考えることが多くなった。

本書は単語や用法ばかりではなく
イントネーションについても取り上げていて
その奥の深さにハマったものだった。
方言研究は意外にポピュラーな学問で
たとえば→ココ には777冊もの本が紹介されている。
それだけ面白い学問ということだ。
なにせ言葉は時代とともに変化し続けているから、
例えば今花巻で方言調査をし論文にまとめると
「2018年時点の花巻地方の方言の第一人者」になれる。
時代、時間という縦軸と、地理という横軸に乗っかった
幅広い学問なのだ。

残念ながら本書は絶版となっているので大切な本。
なんと活版で印刷された本なんだぜ。
その手触りも貴重。

「岩手の方言」森下喜一:著 教育出版センター
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