ほとんど音楽もない、効果音もない、
手持ちカメラによるシーンが続いていて、
なんと主人公の台本上のセリフもないという
役者さんたちが出ているからこそ劇映画とわかる
まるでドキュメンタリーのような映画。
出ている人々がみんな自然で演技とは思えない。
根底に流れる主人公はじめ登場人物たちの悲しさと優しさ。
震災に津波で家族を失ったひとりの少女が
身を寄せていた広島から、故郷の大槌まで旅をする
ある意味ロードムービーなのだが
それまで心のうちに閉じ込めていた感情を
最後には解き放てるぐらい成長する姿を淡々と描く。
途中、40歳を超えてシングルマザーの道を選ぶ女性や、
日本に亡命しながら入館に拘束されるクルド人たち、
やはり津波で家族を失った男、
福島第一原発で故郷を壊された家族などが横糸となり
主人公の旅に絡んでいくのだが
そのすべての人々がみなさりげなく優しい。
たぶんそれは自分の内にも哀しみを抱えているから。
とにかく主人公役のモトーラ世理奈さんがすごい。
2020年ベルリン映画祭において
準グランプリにあたる国際審査員特別賞受賞。
重いけれど、何度も見たい作品。