風音土香

21世紀初頭、地球の片隅の
ありをりはべり いまそかり

「ストリート・チルドレン」

2013-04-02 | 読書
構成がすごい。
まるでガルシア・マルケスの「百年の孤独」。
100年どころか300年間を254頁にまとめた
このスピード感、疾走感。
元々時代時代のそれぞれの物語や
過去からのDNAに興味があったから一気に読めた。
自分の系譜に置き換えてみると
戦前戦後を挟んで、
結果的に7~8浪して大学へ進んだ親父公平。
山口県の実家を若い頃に飛び出し
紆余曲折を経て岩手に根を下ろした祖父鏘一。
婿養子だった曾祖父菊松。
なぜか小林から現姓に変えた曾々祖父寅吉。
それぞれの時代にそれぞれの人達の人生があり
思い出があり、物語がある。
そういうことに思いを馳せることがよくある。
本書は新宿を舞台とした、1系譜の物語。

しかし、あまりにも短い。
スピード感や疾走感はいいけれど
できればじっくり、各時代毎1冊ぐらいで
大河物語でも良かった気がする。
まぁ盛田さんのファンは
その後の作品群がそれぞれの物語なんじゃないかと
書いているけれど。

ところで本書の初見は1988年。
物語最後のシーンは1994年。
近未来を描いている。
もしかしたら著作当時はバブル前夜かも知れない。
その後のバブルの狂瀾とその崩壊が
日本人の価値観や考え方、生き方を
根底から覆してしまった。
バブル時代が無ければ・・
この物語のような時代だったのかも知れない。
みんなイベントに狂喜しながらもどこか昭和な世界で、
フィクションながら懐かしい。

「ストリート・チルドレン」盛田隆二:著 光文社文庫
コメント
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