風音土香

21世紀初頭、地球の片隅の
ありをりはべり いまそかり

夜間歩行

2005-06-07 | 風屋日記
恩田陸「夜のピクニック」を読んでいる。
高校の伝統行事である80kmの夜間歩行の話だ。
高校に入るまでは歩いたこともない、
そして今後も歩くことはないだろう距離を理由もなく歩く理不尽な行事。
しかしその行程の中で様々な思いが語られ、
ひとりひとりの生徒のささやかな秘密が明らかになっていく。
そして皆が理不尽な思いも忘れ、充実感とともにゴールするのだろう。
青春とは概して理不尽なものだったりするのだ。

私も高校時代、一度だけ花巻から盛岡までの40数kmを
徹夜で歩いたことがある。
毎年6月上旬に行われる高校総体岩手県予選の開会式は、
今でこそ盛岡と北上の隔年開催だが、当時は毎年盛岡だった。
各校にとって開会式終了後の応援合戦が目玉行事だった。
そして私の高校では、前日夕方に学校を出発し、
翌朝開会式が行われる岩手県営陸上競技場まで
応援団幹部とともに有志が歩いたものだ。
私の時には、応援団幹部10名を含め、総勢50名程が参加。
途中でOBや父母からの差し入れをいただきながら、
約10時間かけて歩き通した。

出発直後は気分も高揚しているので、皆妙なハイテンションなのだが、
だんだん夜も更けてくると口数は減り、黙々と歩くようになる。
そのうちぽつりぽつりと告白が始まる。
好きな異性のこと。
自分の夢。
家族を含む、生活上の悩みなど・・・。
真夜中を過ぎてくると、その語り口調がなぜか標準語になっていく。
「人生ってさぁ・・・」みたいな(笑)
でもその時はみんな真剣に自分をさらけだしていく。
もちろん全員の前でではなく、それぞれのグループ毎だけどね。

私の仲間は途中から走った。
だらだら歩いていると途中疲れて歩けなくなりそうだったからだ。
集団から離れ、ひたすら前を目指しながら色んな話をした。
出掛けに女の子からもらった差し入れを見せびらかすやつもいた。
長い距離を歩いたり走ったり、体の辛さと戦いながらも気分は爽快だった。
目的地に到着した時も、実はまだ歩いていたかった。
仮眠をとった後の足は大変なことになっていたけれど(笑)

「夜のピクニック」と我々の違いは女の子が参加していなかったこと。
それだけはかえすがえすも残念だ(笑)
もし全校生徒での夜間歩行であったならもっと楽しかったに違いない。
でも歩き通した有志達は、皆得意げに胸を張っていたけどね。

今でも後輩達は高総体開会式と野球応援の時に夜間歩行しているらしい。
一度差し入れをしたいと思いつつ、
歩いている生徒達に出会ったことが、残念ながらまだない。

本を読んでいて思い出したつれづれごと。
本の中の彼ら、彼女らも、かつての私達とおんなじだね。
コメント (12)
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