はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

新聞休日の不思議

2018-12-29 15:49:33 | はがき随筆
 新聞がお休みの10日朝「肥薩線の近代化遺産」という本の、太平洋戦争直後に復員軍人ら50人以上もの犠牲者が出た第二山神トンネルのページを開いていた。ふとテレビに目をやると、お天気キャスター「山神」さん。あまりの不思議さに「きょうの星占い」欄を見ている気になる。
 朝食後「交通事故に気をつけて」という暗示かもと思いながらマイカーのハンドルを握る。二つ目の目的地に向かう際、よく通るコースなのに狭い住宅地に迷い込む。20分近くロスしたが無事到着。あとは快適に運転でき、胸をなで下ろした。
 熊本市東区 中村弘之(82) 2018/12/20 毎日新聞鹿児島版掲載

ツワブキの花

2018-12-29 15:41:31 | はがき随筆
 山から下山途中、人里近くになって、黄色の花があちこちに咲いている。ツワブキの花だ。道路にそって群落ぎみに茎を伸ばして咲いている。観賞用に庭に植えている人家もあるが、この花はの山に咲いてこその草花だ。昔は春、ツワブキを取って、それを油でいためたり、しめものにした食べ物が一番好物であった。葉は火であぶってやけどや湿布につけた記憶もある。妻は秋はコスモスの花が好きだというが小生はツワブキの花に軍配をあげる。人知れず、そこはかとなく咲いた花は鑑賞、食べ物、そして実用の薬として活躍しているからだ。
 鹿児島市 下内幸一(69) 2018/12/20 毎日新聞

ジングルフライバン

2018-12-29 15:33:55 | はがき随筆
 10歳を頭とする4人の子供たちへのプレゼント。男の子2人には青い紙で、女の子2人には赤い紙で包んだ。クリスマスイブの深夜、抜き足、差し足で、そろりと外へ出た。そこは草木も凍る銀色の世界。キーンと冷たい師走の風が胸元を刺す。(さあ、サンタがきたぞ、シャンシャンシャン……)私はフライパンをすりこり木で思いっきりたたいた。ゴン!ゴン!ゴン!ジングルフライパン? の鈍い音が響いた。
 あの夜の4つのびっくり顔がよみがえる。30数年がたち、一人暮らしとなった今でも、それは私の心の灯りとなっている。
 宮崎県西都市 金丸洋子(68) 2018/12/20 毎日新聞

感激の一日

2018-12-29 15:25:15 | はがき随筆
 OB会総会の案内状が来た。体調不良の不安があり、女性代表役員の友人に電話する。「こっちから電話しようと思っていたのよ。是非出席して。米寿祝いするから」「エッ、だったらはってでも行かないとね」。二人して大笑い。
 当日、会場は懐かしい顔ばかり。現在のように冷暖房はなく、夏は天井の扇風機、冬はストーブのみ。和気あいあいと頑張っ仲間たち。思い出話は尽きない。総会に入り「米寿と喜寿」祝いに。私が会最初の米寿祝い者だ。大黒様のような帽子と半袖を着け、皆と記念写真。素晴らしいひとときだった。
 熊本市中央区 原田初枝(88) 2018/12/20 毎日新聞

五色の紙風船

2018-12-29 15:16:19 | はがき随筆
 少し肌寒い季節になると「ごめんください」と唐草模様の大きな風呂敷包みを背負った「越中どん」が年1回わが家にやって来ていた。母ちゃんはいつも「まあ茶いっぺ」ともてなしをしていた。縁側に荷物をおろし中を開く。すると薬独特のニエ(匂い)がプーンとする。使った分の薬をつめ替えて代金を清算する方法だった。「毒掃丸」「赤チンキ」「ケロリン」など置き薬があったが、ぼくの心待ちはおじさんからもらう「五色の紙風船」。息をふき込み、ポンポンと突いて遊んでいた。歳を取るたびに、こども時代を懐かしむ。生きている証しかなあ。
 鹿児島県さつま町 小向井一成(70) 2018/12/19 毎日新聞

ピアノ

2018-12-29 15:08:09 | はがき随筆
 音楽に疎い私はいつの頃からか、疎ましい程、音楽に執着を持っていた。20歳の頃、主人に惹かれたのも、一つ、電話を通しての声の良さだった。音楽を愛する環境になかった私は、子供たちにはそうなって欲しくない一心で、苦しい加計の中からピアノを買い教室に通わせた。
 長女、二女共に10年以上頑張ってくれた。そして孫が4歳になり、思い入れがあるピアノを修理し使ってくれるという。次につなげられる喜びを与えてくれたみんなに感謝! 今、孫がそのピアノで喜んで練習してくれている。初めてのピアノ発表会が楽しみです。
  宮崎県延岡市 飛鳥井真弓 2018/12818 毎日新聞

もう一度

2018-12-29 15:01:06 | はがき随筆
 「わぁ、ありがとう」。娘が見つけてきてくれたピンクの髪留めは、銀色の髪にしっとりとなじんでみずみずしく光った。
 この1年、老化のオンパレードで、どん底の体調を引きずりはがき随筆にも遠くなった。
 大きく育ったドーダンツツジの赤と、少し背の高いモミジがコラボして絶妙の構図を見せる。もう何年も実をつけなくなった柿の古木には、青空に一番近い所に懐かしい柿色の実が5.6個。ナンテンもふっくらとまあるい実がなった。
 この小さな私の宇宙の素晴らしい風景を長くとどめたい。うーん、時間よ止まれ。
 熊本市東区 黒田あや子(86) 2018/12/17 毎日新聞

薩摩の偉人

2018-12-29 14:52:42 | はがき随筆
 大河ドラマ「西郷どん」も終盤となり、偉人たちの活躍をより深く知ることができた。
 西郷さんと共に明治維新の大業を成し遂げた大久保利通の本がある。没後百年を記念して刊行されたもので、錦絵も挿入され、誠実な人柄や逸話などが書かれ、興味深く読んだ。
 政治家としても先見の明があり信念が強く、決して言い訳をしない薩摩人です。西郷さんと共に誇れる郷土の偉人でした。
 有名な書に「為政清明」がある。政治は清潔にして透明に行うべきの教えと思うが、平成の政治家はこの言葉、ご存知でしょうか。
 鹿児島市 竹之内美知子(84) 2018/12/16 毎日新聞

48年目の再会

2018-12-29 14:45:21 | はがき随筆
 山口県に住むKさんが「大学の仲間に会いたいね」と言った。U君と連絡を取り、呼びかけと店の予約をしてくれた。当日6人が集まった。同期は12人。卒後、全員で集まることもなく48年が過ぎ、古稀を迎えたが、すでに2人が亡くなっている。
 N君、S君は再就職して今も現役。U君は2年早く退職し、病気を克服。好きなサッカーを楽しむ。2度の臨死体験をしたH君は痛みを抱えながら、鹿児島から参加した。Kさんは退職後介護の資格を取り、頼られる存在だ。皆精いっぱい生きて、今も継続中! 早世した二人にも会いたかった。
 宮崎県高鍋市 井手口あけみ(69) 2018/12/15 毎日新聞鹿児島版掲載

物音

2018-12-29 09:29:34 | はがき随筆
 鳥が走る。スズメ、セキレイ、ヒヨドリ。見知らぬ鳥。杉垣に声はしても姿は見ない。散り切らぬ毬の窓に映える巨大な影。地をこする落ち葉の濁音。時々ドスンと地響きは、隣のカリンの落果音。秋はかしましい。
 私は原因を知るから判別できるが、以前、叔母が一人で家の留守番をした時、静かなザワザワ音が怖かったか、鍵もかけずに別の親戚宅に逃げた。町暮らしの叔母には田舎の変化の物音が訳もない恐怖をあおったのでろう。この住みか、私にはパラダイスだが、他人にとっては魔界もあり得るなぁ。愉快な音も知らねば恐怖にしかならぬ。
 熊本県阿蘇市 北窓和代(63) 2018/12/14 毎日新聞過去しま版掲載

ツワブキの花

2018-12-28 22:22:06 | はがき随筆
 11月中旬の庭にツワブキの花が咲き誇っている。最初は2株ほど植えたのが増え続け、今では始末に困るほどだ。ざっと50株ほどが花を掲げて咲いている。葉も花も元気いっぱいという風情だ。ミツバチやアブなどが来て蜜を吸っている。一点の曇りもない明るさと温かさを感じる。花言葉は「謙譲」「困難に負けない」とある。
 まだこんなに増えていない庭で「こん花があたいは好っじゃがを」と母が言ったことがあった。戦争未亡人となって、ひたすらに働き抜いた母の強さと、いつも人を立てて控えめだった母をしのぶ花である。
 鹿児島県霧島市 秋峯いくよ(78) 2018/12/13 毎日新聞鹿児島版掲載

ウオーキング

2018-12-28 22:13:35 | はがき随筆
 文化の日、時間を作り秋祭りに行った。目的はウオーキング。今は、解散したフラダンスの仲間とその友達との参加だ。
 受付に着き、1年に1度の再会を喜び合う。体操して、注意などの説明を受け開始を待つ。
 市役所を出発し蔵元橋から川沿いに歩いた。秋桜が咲きそろい沿道に秋の風情を添えていた。川面は日差しを受けて輝き静かだ。5㌔のコースを喋りと笑いでゴールに着いた。
 着順にお楽しみ抽選を引き、2等の野沢菜の漬け物が当たる。お米、柿と友達も手にしてる。来年もねと約束。穏やかな秋日和の快い日に感謝の念。
 宮崎県串間市 武田ゆきえ(64) 2018/12/13 毎日新聞鹿児島版掲載

人間の値打ち

2018-12-28 22:03:34 | はがき随筆
 ある寿司店の箸袋に「おごるなよ いばるなよ それで人間の値打ちがわかる」という文章が横書きしてあった。そうだよな。人前でみえを張ったりおごったりするのは確かに見苦しいものだと感銘したものだ。
 私の職業は教師だったが、現役中も退職後も慎ましい生活をしてきたつもりで、周囲の人に対しておごったり威張ったりするような行為をとったことはないと思うが、その値打ちを評価するのは他人ではなかろうか。
 若かったころは仕事に熱中する面があり、家庭のことは家内に任せっきりだったので、苦労かけたなあと反省している。
 熊本市東区 竹本伸二(90) 2018/12/13 毎日新聞鹿児島版掲載

子猫が

2018-12-28 21:51:13 | はがき随筆
 早朝5時、いつものように玄関横のポストに新聞を取りに行く。ところが、待っていたかのように「ニャー」と子猫が泣きながらすり寄ってくる。びっくり。生後1~2ヶ月だろうか。小さくて、とても人なれしている。どうしたものか戸惑う。あまりに「ニャーニャー」泣くので牛乳をついでやると、ペロペロとたいらげた。おなかがすいていたのだ。次に煮魚の身をご飯にまぶして食べさせた。
 以来、1週間たっても飼い主が現れない。もうペットは飼わないと決めていたのに、ついにキャットフードを買いに行った。
 鹿児島県志布志市 一木法明(83) 2018/12/13 毎日新聞鹿児島版掲載

なにがおかしい?

2018-12-28 21:45:36 | はがき随筆
 友人の着ていたTシャツの色が素敵だったので、ごく自然に褒めたつもりだった。「きれいな藤色ね~」と。
 そのとき、周りにいた若い仲間たちはドッと吹き出した。趣味で通っているダンススタジオ内でのことだ。なんで笑われたのか理解できなかった。キョトンとしていると「ラベンダーですよ」と教えてもらった。
 そうか、いまどきの人は藤の花の色なんて使わないんだ。世代の違いをつくづく感じた。
 言葉も世につれれて変化するのはわかる。とすると小豆色とか山吹色なんてのも時代遅れで忘れ去られていくのだろうか。
 宮崎市 藤田悦子(70) 2018/12/13 毎日新聞鹿児島版掲載