はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

好きな数

2010-03-23 11:04:05 | はがき随筆
 私は「N」という数が好きである。
 暦の月にはもちろん日にもなく、1とN以外では割り切れない。昭和20年、旧制中学に入学したときの受験番号である。
 Nが、道を歩いているとき見た車の下2ケタだったり、旅などのキップの連番になっていたり、まして温泉に行ったときの脱衣所の番号なら、何かよい事がありそうでうれしい。朝測る血圧も、上が「IOOとN」以下になるよう願っている。また動き出すときもN分が多い。
 Nを自分では「いい味方」と都合よく解釈して、いつでもどこでも何にでも利用している。
  出水市 田頭行堂(78) 2010/3/20 毎日新聞鹿児島版掲載

里のひまわり

2010-03-23 11:01:34 | はがき随筆
 お誕生日おめでとうございますと菜の花、桃の絵はがきをボランティアグループ「ひまわり」の方から頂いた。元気で皆様から祝福を頂き、ささやかな幸せに、心身共に健やかな日々を感謝と共に明日への励みとなります。大浦干拓が広がり、亀ケ丘より吹上浜、またリアス式海岸を西に望む、高齢化が進んでいる里ですが、こうして「ひまわり」の方々の活動に元気を頂き、今日を生きゆくしるべとなります。夫と計160歳。達者は□だけとよく言いつつ、野菜作り、また友達と親ぼくを重ねながら、互いの誕生日の絵はがきを友にしたいと思います。
  南さつま市 下村節子(79) 2010/3/19 毎日新聞鹿児島版掲載

自分至上主義?

2010-03-18 22:23:38 | かごんま便り
 阿久根市議会が暗礁に乗り上げている。新年度予算を審議する、年間で最も重要な定例会なのに竹原信一市長は議場に現れず、幹部職員にも「答弁拒否」を命じている始末。まったく八方ふさがりの状況だ。

 本欄で竹原市長を取り上げるのは2度目だ。前回(昨年4月20日付)、私は彼の改革への志がまっとうだとしても、その政治手法には疑問を感じざるを得ないと書いた。彼の物言い、振る舞いはその後も過激さを増す一方。彼なりに計算された意図的なアクションなのだろうが、最近の言動はいかにも常軌を逸し、理解の範囲を超えている。   

 近著「独裁者 ″ブログ市長″の革命」(扶桑社刊)を読むと、竹原氏の自治体職員や地方議会に対する痛烈な批判には耳を傾けるべき指摘も少なくない。「民主主義」という美辞麗句の欺まん性をやり玉に挙げつつ、自身の「改革」「革命」という言葉は無批判に絶対視するなど自分本位な強引さはあるものの、公務員のお手盛り体質やチエック機能を放棄して行政側となれ合う地方議員に切り込む記述には説得力がある。現状打開には荒療治が必要だとの主張も分からないではない。

 だが竹原氏の思いを知れば知るほど、実際の行動には首をひねるしかない。市長の提案に″何でも反対″の反市長派議員の態度が「子どものけんか」なら、堂々と論戦を挑まず「報道陣がいるから」と議場に来ない手法も同じだ。市職労との団体交渉に報道陣を入れてガラス張りの議論を提案したことがあったが、彼の言い訳はご都合主義が目に付く。つまるところ主張がいかに立派でも、改革への本気度は疑わざるを得ず、混乱を楽しんでいるとしか見えない。

 現下の竹原市長に、議会正常化への意志はないらしい。このままでは最も迷惑を被るのは、彼が最も心を寄せ、大切にしたいとしている阿久根市民なのは間違いない。

鹿児島支局長 平山千里 2010/3/15 毎日新聞掲載

そらまめ

2010-03-18 21:29:30 | アカショウビンのつぶやき
 いつも種子島から送ってくださる<Fさんのそら豆>が、今年も届いた。

 新鮮なそら豆を箱詰めにし、業者に発送依頼したところ、海が時化て輸送がストップ…だったらしい。「一昨日の豆ですが…」と、申し訳なさそうな電話があった。立派なさやに入っているそら豆は、日持ちが良い。「ありがたく頂戴いたします」とお礼を述べて待つこと二日、届きました。

 緑色のさやは光沢があり、内側は真っ白で、やわらかなクッションにくるまった豆がきれいに並んでいる。そのさまは、なぜかいとおしくも感じられる。

 分厚い莢に入っている<そら豆>は、ずしりと重さを感じるが、痛む脚をひきずって、新鮮なうちにご近所にお裾分け。

 明日は摂氏1度まで気温が下がるようだが、食卓には春がいっぱい。そら豆ご飯に塩ゆでそら豆、そら豆のサラダ、明日は何にしようかなあ。

「老いらくの心」

2010-03-18 20:36:32 | 岩国エッセイサロンより
2010年3月13日 (土)

岩国市  会 員   山本 一

「お父ちゃんが近所の若い娘を好いちょるんよ」と母が言う。父が80歳、母が71歳のころである。「いい年をして」と当時の私は一笑に付した。その後も、介護施設の父の部屋に入り浸りの女性がいて、母が激しく妬ける。私は驚きながらも「年寄りが」と軽くあしらった。

ところが、後期高齢者となった今の私はどうだ。女性に対する心のありようは、若いころからちっとも変わっていない。肉体は年老いても、異性に反応する心は変わらない。老いた父母の心も一緒だったのだ。

 お彼岸にはお墓に行って「親父、もてたんだね」と言ってやろう。

   (2010.03.13 毎日新聞「はがき随筆」掲載)
岩国エッセイサロンより転載

バスの深呼吸

2010-03-18 20:23:39 | 女の気持ち/男の気持ち
 むかぁし生徒だったこ ろ、スリッパのペタンペタンまでそっくりに先生の歩き方をまねしたり、あだ名をつけて楽しんだものです。でもそれは人気のある先生方ばかりでした。
  例えばすぐ赤面する音楽の先生は「タコボウズ」、始業の鐘と同時に教室へ入ってくる古文の先生は「消防自動車」。今でもお顔とあだ名は思い出しますが、本当のお名前はどうしても思い浮かばない。
 私が利用するバスは市街地の向こうの高台のホテルから街なかを巡り、反対側までの長い距離を走る路線バス。雨天だったり街に行事があれば運行が遅れるのは日常茶飯事です。
 春浅いある日、教育者らしい人が乗ってきました。
 「バスが遅れてるじゃないか。説明せんか」と運転手さんに角の立った言い方。車内はシーンとなり、運転手さんは恐縮して「どうもすみません」と、5分遅れている理由を話し、停留所ごとに乗降客に謝り続けました。その方が学校正門前で下車した後、バスが深呼吸したようでした。
 5分くらい待てないのかな。大人げないな。いい年をして相手の立場に立って考える心のゆとりを持たない人なんだ。夫婦げんかでもしたのかな……、いろんな思いがよぎります。
 こんな先生にあだ名をつけるとしたら……。でもあだ名をつけてもらえるほど生徒さんから信頼されているのかな……。
 雨の午後のひとこま。
  大分県別府市 楢崎 好江・78歳 2010/3/14 毎日新聞の気持ち欄掲載

エデンの園

2010-03-18 20:15:29 | はがき随筆
 冬のさなかというのに、その日は春のように暖かだった。
 鹿児島市中央公園には楠をはじめ緑の葉がサワサワと光っていた。天文館通りに足を進めた。にぎやかな中に聞き慣れない声が。中国からの団体のようだった。皆ラフな服装で見分けがつかない。外国人の渦の中に交ざって歩くのもまた一興。彼らは電車の軌道が芝生で敷き詰められているのに驚いていた。
 日が陰ってくると、天文館通りにヤングが増えてきた。家族連れも多い。子供を肩車に乗せている若い父親もいる。
 ひょっとすると鹿児島は、世界一住み良い町かもしれない。
  鹿児島市 高野幸祐(77) 2010/3/18 毎日新聞鹿児島版掲載

人生は出会い

2010-03-18 20:05:30 | はがき随筆
 波乱の多い人もいるものだ。昨年7月、久しぶりに会った6人は、1台の車で山□県岩国市に向かった。目的地は、萩焼を体験できる画廊。
 初対面の、その経営者Mさんは「私は学校時代いたずらっ子で、ワルの札をはられ、ぐれていましたが、ある先生と出会い柔道を勧められ、警官になれました」と話した。続けて「現職中、陶芸や美術のうまい方に巡り合い、画廊を営むことになりました。人生は出会いですね」と、昔をしみじみ振り返るように語ってくれた。
 萩焼体験で出会った親切な彼を、私は今も忘れない。
  出水市 小村忍(67) 2010/3/17 毎日新聞鹿児島版掲載

万歳、上村選手

2010-03-16 22:37:05 | はがき随筆
 4年前の冬季オリンピックはフィギュアの荒川選手の金メダルだけに終わった。だが今大会の日本は銀3、銅2の5個となった。金メダルがないのは残念だったが、話題満載のわくわくする日々であった。
 4位でメダルに手が届かなかったモーグル、上村選手の「なんで一段一段なんだろう」の言葉に目頭が潤んだ。オリンピックに4度挑み、願いがかなわない。ファンとして胸が締め付けられる思いであった。
 7日、彼女の吉報が届く。オリンピック銀、銅の選手を抑えW杯で今季初優勝。地道な上村選手はやはり本物だった。
鹿児島市 鵜家育男(64) 2010/3/16 毎日新聞鹿児島版掲載

自然の姿

2010-03-16 21:40:13 | はがき随筆
 今年も庭の八重椿が見事な花を咲かせている。「年年歳歳花相似たり」。自然の姿と思いながらも、その美しさに心和む思いである。
 そんな朝、ウグイスの初音を聞いた。目を凝らして見ると赤い椿の小枝がひそかにに揺れている。「あっ居た」。小ぶりの姿が見え隠れして、練習中の鳴き声を披露してくれる。思わず「頑張れ」と声援を送り、私までルンルン気分に浸っていた。
 そんな時、電話が鳴り、叔母の訃報を聞いた。95歳だった。
 「年年歳歳人同じからず」。これもまた、自然の姿なのかと叔母をしのんだ。
  鹿児島市 竹之内美智子(75) 2010/3/15 毎日新聞鹿児島版掲載

御坂の石段登り

2010-03-15 22:34:52 | はがき随筆
 雨の日が続くが、2月28日は晴天だった。熊本にある日本一の石段登りに挑戦。思いがけず6人分の青竹のつえが用意されていて感激。Mさんの手作りという。急な石段登りにそのつえは本当に役立った。所々に踊り場のような平たんな所があり、休み休み、ついに3333段を登り切った。頂上からは阿蘇に続く山々、五木の山々が見える。
799年開基の古い釈迦院を訪ね、引き返し下山。下りは登りよりきつく、脚の筋肉が悲鳴を上げていた。
 東陽村で温泉に入り疲れを癒やし夕食。私を送ってくれて同級生たちは月夜の道を垂水へ。
  霧島市 秋峯いくよ(69) 2010/3/14 毎日新聞鹿児島版掲載

願い

2010-03-15 22:29:20 | はがき随筆
 成人の日にテレビで「あしたをつかめ医療SP」という番組があった。若い医師と看護師が患者さんに真摯に向き合い、共に生きていこうとする姿をとらえた番組であったo
 私は昨年、たくさんの方々に本当によくしていただき命を助けていただいた。番組を見ながら当時を思い出し、ありがたさがこみ上げてきた。そこには一つの命を助けようと懸命に働いておられる方々の姿があった。
 さまざまな病気と闘っておられる方々がいる。ありとあらゆる病気が治せるようになったらどんなにうれしいことだろう。医学の進歩を願ってやまない。
  出水市 山岡淳子(51) 2010/3/13 毎日新聞鹿児島版掲載

前向き

2010-03-12 17:21:24 | はがき随筆
 半身不随の父を残して母亡きあと、父は私の家族と3年半暮らし、平成3年に他界した。母の苦労には及ばないが、父の望む自宅介護でみとることが出来たと安堵したものの、沈みがちな日々が続いた。
 そのころ鹿児島版に「はがき随筆」が誕生。以前から文章を書くことにあこがれもあった。
 一念発起で父のことを書いた随筆が初掲載。その月の選者評でもちょっと触れていただいたことに気をよくし、書くことに楽しみを見いだし、前向きになれた。「はがき随筆」に出会って19年。今では生活の一部になってます。
  垂水市 竹之内政子(60) 2010/3/12 毎日新聞鹿児島版掲載

品格について

2010-03-11 21:34:00 | はがき随筆
 品格とは「その人に備わっている品のよさ」と辞書にある。備わるといえば生来のものと生後に身についたものとあろう。品格を疑われることがあれば自力でそれを正す自浄力の発揮が望まれる。その自浄力のいかんで世聞が騒ぐ。一生勉強という言葉があるが、老いも若きも職場の上位下位にかかわらず求められることで、そこに品格も備わろう。日常見聞する人に、おのずと敬意と好感のもてる人があれば、納得と安心を覚え心が和む。反対の立場は苦々しい。人間社会には品格の無視できない厳しさがあることを銘記して、日々姿勢を正すべきである。
  薩摩川内市 下市良幸(80) 2010/3/11 毎日新聞鹿児島版掲載

「はがき随筆」持ち寄り合評

2010-03-10 23:08:59 | 毎日ペンクラブ鹿児島
14日、大隅地区勉強会お気軽に参加を

 「はがき随筆」「女(男)の気持ち」など毎日新聞投稿欄の愛好者でつくる毎日ペンクラブ鹿児島(岩田昭治会長)の大隅地区勉強会が14日午前11時から、鹿屋市北田町の「この路」(中央公民館そば)である。
 各自が、はがき随筆の体裁(題名7字以内、本文約250字=14字×18行程度)の作品を持ち寄り、互いに読んで批評し合う合評会形式。平山千里・毎日新聞鹿児島支局長が講評す準る。会費は昼食代含め↓OOO円。
 他地区の会員や、会員でない人も自由に参加できる。参加希望者は12日までに西尾さん(0994・43・3702)に申し込みのうえ、当日までに作品を準備する。問い合わせは西尾さんへ。