「返品してもらえますか?」。あえて理由は口にしなかったが、きっと分かっていたはず。心臓がパクパクして怖かった。
ある骨董市でのこと。合戦風の図柄の九谷の花瓶を、一期一会にと衝動的に買った。強引な値切りに渋々負けてくれたが、今思えばそれも、割れ物を売りつけようという狡猾な演技だったろうか。だまされた方が悪い世界だと耳にしたこともある。
例の業者はあっさりとお金を返してくれたが、不信感と怒りはどうにも収まらない。だが、怖いもの見たさに、のこのこともう一巡りする。それが、骨董市の魅力なのかもしれない。
鹿児島県霧島市 白坂功子(61) 2019/9/26 毎日新聞鹿児島版掲載
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