はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

一匹のヤモリ

2008-06-30 07:20:40 | はがき随筆
 6畳間に古ぼけた応接台と座椅子が無造作に置かれ、書籍や雑誌類が散らばり足の踏み場もない。腰高窓の奥にはほの暗い竹林が広がり時々風にきしむ。私の隠れ部屋であり俳句工房だ。愛犬ビスが昼寝に来る以外、家族もめったに寄りつかない。
 その部屋を夜な夜な訪れる客がある。8時になると音もなく現れてガラス窓に張りつき、白いのどを見せて私をのぞく。ガラス越しに息遣いさえ感じる。
 風の音を聞きながら、静かな会話がはずむ。後期高齢者の称号を頂いた私には、かけがえないパートナーである。
 一匹の守宮と風の音を聞く
   鹿児島市 福元啓刀(78) 2008/6/29 毎日新聞鹿児島版掲載

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