はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

終活 身近なことから

2019-03-17 14:34:54 | はがき随筆
2019年3月17日 (日)
   岩国市   会 員   片山清勝

 両親と遠く離れて住んでいる知人が、父の死後、残された母へ引き継ぐ手続きで苦労したと聞いた。そのことから、私も終活として、妻を置いて先立つ前提に整理を始めてみた。
 そんな時、14日付くらし面のこだま欄に、夫を亡くした後の諸手続きを息子が確実にこなしたことへの感謝がつづられていた。迅速な手続きにより残された者の生活が安定し、安心して次のステップへ進めることを確信した。
 私は生活に直結することから始めている。月々の生活費支払い、公共料金に税金など、かつては人が行っていた集金が、全て金融機関の引き去りに変わり、この変更だけでも大変な数になる。新聞やテレビ、ライフラインなど生活に欠かせない契約の名義変更も大切な項目と気付いた。
 手続きは慌てると抜ける恐れがある。妻や離れて暮らす息子が困らないよう丁寧にまとめようと苦心している。集金人と楽しそうに会話していた母の顔を思い出しながら。

     (2019.03.17 中国新聞「広場」掲載)

春の苦み

2019-03-17 14:34:17 | 岩国エッセイサロンより
2019年3月15日 (金)
岩国市  会 員   稲本 康代

 庭に立っていると、落ち葉の下にみどり色のふくらみが見えた。フキノトウ? 急いで落ち葉をかき分け、摘んだフキノトウ5個を手のひらに乗せて眺める。心が暖かくなり「春だ!」とひとり叫んでいた。

 春の野菜には苦みがある。「春の皿には苦みを盛れ」ということわざがあるが、冬から春へ体を目覚めさせるには苦みという刺激が必要なのかもしれない。冬眠明けの熊が最初に口にするのもフキノトウだという。
 しかし私自身を振り返ると体も心も甘い物ばかり求めては強くなれないと知りつつ苦みより甘みの誘惑に負けるのである。
  (2019.03.15 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

投稿者 花水木 時刻 10時37分