はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

今年も健康第一で

2014-01-22 22:24:07 | ペン&ぺん
 

 浜松市の小学校で起きたノロウイルスの集団食中毒。12~1月が流行のピークで感染力が極めて強く、吐き気や嘔吐、下痢などの症状が出る。高齢者や子供は自分の嘔吐物を吸い込んで、肺炎や窒息を起こすことがあり、油断は禁物だという。
 今月2日、母(84)が早朝から嘔吐と下痢を繰り返した。ベッドの中の母の顔はげっそり。病院へ連れて行こうとすると「大丈夫。寝ていれば治る」と。でも、よほどつらかったみたいで「やっぱり、連れて行って」。
 正月に診察してくれるのは休日当番医。古里は人口10万人の街だが、待合室は大混雑し、診察までの待ち時間は3時間。母を待合室で長時間待たせるわけにもいかず、予約をして再び3時間後に母を連れて病院へ。点滴をし、処方してもらった薬を飲み、安静にしていたら3日ほどで回復した。
 母用のおかゆを作り、市販の消毒剤でトイレや廊下など拭き掃除した。母は「すまないね。でも、あんたがいてくれて良かった」とホッとした様子。でも、私が帰省していなかったらと思うとゾッとした。母は元気になり、通常の生活を送っているが、これが認知症で徘徊したり、病気やけがで寝たきりになったら……。考えただけで眠れなくなる。普段は元気だが、急病で倒れた1人暮らしの高齢者は一体どうしたらいいのか。
 親の介護に直面している働き盛りの同僚、知人がいる。同様の問題を抱えている人たちは増えるばかりだ。優秀な人材なのに高齢の親の面倒をみるため、退職したり、昇進を辞退したりと。
 母の看病で年が明けたのも「健康と親を大切にしろ」と何かの暗示かも。母の件で「1年の計は元旦にあり」ではないが、今年は高齢者や福祉問題を勉強しなければと痛感。皆さんも病の早期発見、予防の徹底で午年を乗りこなしましょう。
  鹿児島支局長 三嶋祐一郎 毎日新聞鹿児島版掲載

謎のシャンプー

2014-01-22 22:13:33 | はがき随筆
 朱一色の印刷のパッケージは、昭和初期の雰囲気を持っている。着物姿の女性が上半身を露わにし、髪を洗う姿もレトロなイラスト。髪洗粉の白抜き文字が髪の上に記されている。薩摩特産の文字も。商品名は金砂。
 「倉庫にあったのよ」と渡され、友人宅から妻が持ち帰った。昔のシャンプーだとは分かるが、金砂とは何なのか。SNSで調べたがヒットしなかった。子供の頃、金物屋の店先や銭湯で同じ様な物を見かけた。昔はシラスで髪を洗ったと聞いたことがあるなど、知り合いが悩んでくれた。使えば謎は解けるのだが、まだその勇気がない。
  鹿児島市 高橋誠 2014/1/22 毎日新聞鹿児島版掲載

シイタケセット

2014-01-22 21:52:15 | はがき随筆
 生協で毎週食料品を配達してもらっている。昨年12月、注文した覚えのない品が届いた。「シイタケ栽培セット」。注文番号を間違えたらしい。返品できるか尋ねると食品扱いになるので「難しい」とのこと。少々高いが購入することに。
 「半年くらい、食べられますよ」と言われ、半信半疑で挑戦した見た。菌床全体を水でぬらし、ビニール袋で密封して新聞紙をかぶせる。約1週間で芽が出てきた。直径15㌢ほどになって収穫。バターで炒めておいしくいただいた。その後、みそ汁やパスタなど、我が家で大活躍。思わぬ贈り物となった。
  鹿児島市 津島友子 2014/1/21 毎日新聞鹿児島版掲載

はがき随筆12月度

2014-01-22 21:26:10 | 受賞作品
 はがき随筆の昨年12月度の入賞者は次の皆さんです。(敬称略)

【月間賞】27日「古里の思い」小向井一成(65)=さつま町宮之城屋地
【佳作】10日「思い思われ」清田文雄(74)=出水市高尾野町芝引
▽14日「晩秋のある日」内山陽子(76)=鹿児島市田上


 古里の思い 自分の心の原風景を描いた絵が展示されたら、原発事故で鹿児島に転居している少女に、郷愁を感じると褒められた。逆境の中にいる人にとって、一枚の絵でもそれを通しての心の触れあいが、いかに貴重なものか。古里を失い望郷の念の中にいる彼女には、励ましの言葉しかなかった。温かい文章です。
 思い思われ スーパーのレジで親切な係の人に出会い、夫婦でファンになり、その人の居る時に買い物をすることにしている。こういう、優しい人が優しい人と労りあうのはいいですね。その場の光景が彷彿とするのも、文章の巧みな構成の効果です。
 晩秋のある日 所用の帰路、新しくできた葬祭場を見学し、パンフレットを貰って帰り、自分の葬送の時の娘夫婦の様子を想像したという、少し驚かされる文章です。結びの部分の、死は再生だと自分に言い聞かせるのも、実感があります。誰でも覚悟しないといけないことですが、その覚悟が、晩秋の一日の挿話としてさらりと書かれていて、考えさせられます。
 この他の優れたものを紹介します。
 川畑千歳さんの「ひげそり」は、高校2年の長男が、父親の電気カミソリでひげをそるようになった。男と子の成長は、父親にとって嬉しいとともに複雑な心境です。大人の男性としてのこれからの対応が大変です。その予感がよく表れています。
 津島友子さんの「ですです」は、外部からみたカゴンマベンの不思議さが描かれています。地方紙の投稿欄は、どうしても我がもの褒めになってしまいますので、こういう外からの愛情のある視線は大事です。
 有村好一さんの「災難」は、小春の一日、海岸で景色を〝おかず〟に弁当を使っていると、トンビに弁当を攫われました。本当にこういうことがあるのですね。その驚きを、油断大敵の教訓に結びつけた軽妙な結びが、秀逸です。
 12月分は優れた投稿が多く選に迷いました。今年も力作をお願いします。
 (鹿児島大学名誉教授 石田忠彦)