はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

また会おうね

2009-08-29 13:56:23 | 女の気持ち/男の気持ち
 爆竹と精霊舟で初盆の御霊(みたま)を浄土へ送った翌日の長崎の街で、46年前に中学を卒業した仲間たちが19人、開きそこねていた還暦クラス会をしようと集まった。
 多感な一時期を同じ教室で過ごした連帯感と、年のせいで紅顔が厚顔になった元級友たちは言いたい放題だ。
 私を見るやK君が一言。
 「美人やったとに、ばあさんになって」
 無礼者!
 M君は昔の乙女数人を前に
 「体育の時、更衣室が別々で……」と語り出した。のぞきの告白?と身構えると、「着替えて出てくるブルマー姿がまぶしくて」。
 一同ひっくり返って大笑い。自分らのちょうちんブルマー姿を15歳の少年たちがどんな思いで見ていたかなど、想像すらしていなかった。互いに失ってしまった少年少女の初々しさが愛おしくなる。
 公立中学に大勢があふれていた時代、いろんな境遇の人がいて、その後の人生も多種多様だ。障害を持ちながら自立し、おしゃれで明るい人、家族の介護に疲れている人、縁なく独り身の人……。はた目には分からずとも、誰もが大なり小なりなにがしかの荷を背負いながら生きている。
 それでも年をとればこそ話せる、聞けることが増えてくる。ばあさんになるのも、おつむが薄くなるのもよろしいではありませんか。
 3年6組のみんな、また会おうね。
  長崎市 木内美保子・61歳 2009/8/29 の気持ち掲載



どうして

2009-08-29 12:44:41 | はがき随筆
 夏休みも終りだ。算数の宿題が残っている。今日一日で出来るはずもない。どうしようでパツと目が覚めた。4時である。戸窓を開け、仏様にお参りしているうち夢などすっかり消えた。もう宿題などない現(うつつ)である。
 思えばそんなことがあった。算数だったかどうか定かでない。でも宿題を忘れるくらい手伝いをした。毎朝の田の油入れ、虫払いから草取り、田車押し。とにかく人力で米を作っていたころの小学生。小さな母を助けることが中心だった。大豆を植え、ひきたたき、盆の豆汁(こじる)に使い、あわをまくと幾朝か踏む。必要が教えた処生だ。
  鹿児島市 東郷久子(75) 2009/8/29 毎日新聞鹿児島版掲載


植物採集会

2009-08-29 12:40:10 | はがき随筆
 久しぶりに、植物採集会に行った。5月の最後の日曜日。
 会に参加した30入近い小学生たちは、話を聞き逃すまいと講師の後に続き、シャベルで根を掘ったり、ビニール袋に入れたり、汗の中、採集に懸命だ。
 子らは出水市の会場校S小の校庭で、30種類をこえる植物を採ったようだった。どの子も植物を入れて膨らませたビニール袋を手に、満足げのよう。
 隣の子どもに「何が楽しかった?」と聞くと、「10円玉をカタバミの葉でこすったら、きれいになった」と答えてくれた。
 子らは、疲れていただろうが、帰路の足取りが軽く見えた。
  出水市 小村忍(66) 2009/8/28 毎日新聞鹿児島版掲載