はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

サイレン

2009-08-07 22:35:30 | はがき随筆
 「しまった。また寝忘れた」朝6時の吹鳴を時々寝忘れて地域の方に迷惑をかけた。山あいの小さな学校に勤務していた若いころのこと。宿直は夜間の学校の管理とサイレンの吹鳴があった。1日の時の流れを知らせる大事な情報だった。昼の12時、午前の仕事の疲れの癒やし、昼からに備えての吹鳴は人々に活力を与えていた。戦時中は警戒警報、空襲の吹鳴に人々はおびえた毎日だった。サイレンの吹鳴は、人々の脳裏に悲喜こもごもの思い出の歴史があると思う。現在は平和な世の中。長く続くように祈っているのは、みんなの願いだ。 
  薩摩川内市 新開譲(83) 2009/8/7 毎日新聞鹿児島版掲載

きな臭い煙の中で

2009-08-07 22:33:19 | 女の気持ち/男の気持ち
 夫の父は85歳になる。2年前に母が亡くなってからは、隣に住む弟夫婦が世話をしてくれている。母を亡くしてしばらくは、自分の体調の悪さもあって父はすっかり気弱になり、弟のお嫁さんにすがるようにして暮らしていた。それが1年たち、2年がたとうとしているこのごろ、以前の頑迷なじいさんが完全復活してしまったという。
 穏やかだった母が生前「私も時には爆発して、父さんに食ってかかるのよ。すると2、3日はおとなしい」と言っていた。弟のお嫁さんも「お母さんはよく辛抱していらっしゃる」と漏らしていたので、父の頑迷ぶりは想像できた。離れて暮らしている私が目の当たりにすることはなかったが。
 弟のお嫁さんは献身的に父の世話をしてくれている。私たちはいつも頭の下がる思いでいた。なのに父ときたら。
 「小さいことまでガミガミ。そしてその□の悪さときたら。ついに私も堪忍袋の緒が切れて、もう少し言いようもあるでしょうと食ってかかりました」と、弟のお嫁さんから途方に暮れた声で電話があったのだ。
 今さら変えられない父の性格。「父には最小限のことだけしてやればいいよ」と言っても、そうはできないお嫁さんの立場。きな臭い煙の立ちこめる中で、彼女は立ち往生している。それでも弟夫婦に頼るしかない頼りにならない兄たちなのです。

   鹿児島県出水市 清水 昌子・56歳 2009/8/7 の気持ち掲載