はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

ある演奏会

2007-10-09 22:18:40 | かごんま便り

 霧島市牧園町高千穂の「みやまコンセール」を初めて訪れた。お目当ては、四半世紀ぶりに復活した大型ピアノトリオのコンサートである。
 ピアノの中村紘子さん、バイオリンの海野義雄さん、チェロの堤剛さん。中学生で日本音楽コンクールを制し、ショパンコンクールで日本人初の上位入賞を果たし天才少女とうたわれた中村さんを筆頭に、いずれも若くして華々しくデビュー。その3人がトリオを結成したのが74年。千両役者がそろい当時「三千両トリオ」と称されたが、81年秋を最後にトリオとしての活動を休止していた。
 現在、中村さんは浜松国際ピアノコンクールの審査委員長、海野さんは東京音大学長。堤さんは桐朋学園大学長。かつての若きスターたちは今や楽壇の重鎮となった。人生の年輪を重ねた彼らがどんなステージを繰り広げるのか、わくわくしながら開演を待った。
 演目はアンコールも含めて3曲。情熱的でダイナミックなピアノ、温かな美音のバイオリン、骨太でしかもよく歌うチェロ。素晴らしい演奏だった。
 今回の公演は全国4会場だが、3大都市圏を除く「地方」は鹿児島だけ。都留鏘(たかし)・副館長によると、地理的ハンディから平日開催は集客の点で難しく、日程的に当初は開催が危ぶまれたという。だが結局、堤さんが施設のバックグラウンドである霧島国際音楽祭の音楽監督を務めている縁や、ホールの音響の良さなどが幸いして実現したとのことだ。
 インターネットの登場で中央と地方との情報格差は大幅に縮まったが、音楽や演劇、美術などの「本物」に接する機会は、中央と地方とでは雲泥の差がある。地方で「本物」が見られるためには資金面など運営側の条件はもちろん、興行として成り立つかなどさまざまな制約がある。幸運な聴衆の一人となれたことに感謝しつつ、質の高い文化事業が今後も鹿児島の地で展開されることを望みたい。
 毎日新聞 鹿児島支局長 平山千里
 2007/10/1 毎日新聞鹿児島版掲載

教え子たちの還暦

2007-10-09 12:46:26 | はがき随筆
 昭和33年、社会人として第一歩を踏み出したのが旧串木野市立荒川小学校であった。赴任2年目に担任した6年生の還暦同窓会に招待された。学年1クラスの小規模校で全校児童が200人余りではあつたが、団塊の世代と言われる彼らのクラスが特に多かった。
 あれから48年、各地から集まったのが23人。あの幼かった面々が白髪を交えた初老の紳士・淑女となり、親しく話ながら、一人一人の昔の面影を手繰り寄せるのに懸命だった。泣きながら集団就職列車に乗って働きに行かざるを得なかったことや定年後の事などなど時のたつのも忘れて話した。
   志布志市 一木法明(72) 2007/10/9 毎日新聞鹿児島版掲載