太陽LOG

「太陽にほえろ!」で育ち、卒業してから数十年…大人になった今、改めて向き合う「太陽」と昭和のドラマ

#452 山さんがボスを撃つ⁉ / #453 俺を撃て!山さん

2017年12月03日 | 太陽にほえろ!

連続殺人犯を追跡中、目の前で犯人が通行人を車ではねて逃走。見逃せば次の犠牲者がまた出るだろう。
当時城南署の刑事だったボス(石原裕次郎)は、やむなくそのまま犯人を追跡。
無線で救急車を要請したものの、間に合わずに赤ん坊は死亡。
母親も怪我が元でその後自殺。
目の前で妻と子を見殺しにされたと、10年間ずっとボスを恨んできた寺田(河原崎建三)は、
凶悪犯を捕まえるためにやむを得ない行動だったと告げた山さん(露口茂)の息子を誘拐し、
助けたかったら、ボスを殺せと迫る。


何度も考えました。
ボスがとった行動が、ベストだったのか。
私は、応急処置がむりでも、せめて「救急車を呼ぶから待ってろ」の一声があれば、
寺田の気持ちは多少違ったんじゃないかと思いました。

周囲に電話も他に人もなく、目の前に怪我をした妻と、どんどん出血しているわが子。
ひいたのは犯人だけど、警察に見殺しにされたと思っても無理はないかな、と。

もちろん、ボスは必死で救急車を要請したし、犯人を見逃していたら被害は拡大したかもしれない。
でも、目の前で死にかけている人の命が優先じゃないのかな。

だからと言って、山さんにボスを殺させるために、息子を誘拐したり、爆弾を仕掛けたりというのは
許されることではないけれど。


最愛の息子を人質に取られ、交換条件にボスを殺せと言われる。
山さん最大のピンチです。
息子は無事に取り戻したものの、実は寺田は爆弾をしかけていて、今度はそれをネタに脅してくる。

一係のみんなにとっても、「山さんがボスを撃つ」なんてあってはならないこと。
爆弾の設置場所を探して走り回ります。


子供みたいに泣きながら走るドック(神田正輝)を見て、当時は「泣き虫だなー」と思っていましたが、
この放送からほどなく石原裕次郎さんが病に倒れ危険な状態に陥るわけで、それをふまえて改めて見ると、
当時神田さんも、こんなふうに人知れず泣きながら走ったこともあったのかもしれないなと、今頃もらい泣きしてます。


めずらしく取り乱して寺田にとりつく長さん(下川辰平)。その必死の叫びがスピーカーを通してボスと山さんにも届く。
やがて我に返ってひざまづき、「刑事が憎いなら俺を殺してくれ」と拳銃をさしだす長さん…。



「殺されるより殺す方がつらい。山さん、つらい思いをさせてすまなかった」
ボスの言葉に、さすがの山さんも涙を流します。
山さんが引き金をひこうとしたそのとき、寺田がついに復讐をあきらめるのでした。


爆弾を処理したという無線を受け、しずかに見つめあうボスと山さん。
「進退伺なんて妙なこと言わないでくれよ」
「ボス」


ふたりはそれぞれ覆面車に乗って走り去るのですが、山さんの車がバックして、ボスの車に先をゆずり、後ろからついてゆく。
多くを語らずとも、俯瞰でとらえた車の動きだけでふたりの心情が伝わってきます。

長いあいだ関係を積み重ねてきた演者と、見続けてきた視聴者をも信じてくれている粋な演出でした。