人生にロマンスとミステリを

小説を読むのも書くのも大好きな実務翻訳者です。ミステリと恋愛小説が特に好き。仕事のこと、日々のことを綴ります。

クリス・ウィタカー『われら闇より天を見る』

2023-11-05 15:04:04 | 読書記録(紙書籍のみ)
クリス・ウィタカー著、鈴木恵訳『われら闇より天を見る』

人生はものすごく複雑だというのはわかる。
でも、あまりにも主人公たちがかわいそうだ。胸がつぶれそうになりながら読んだ。

冒頭は行方不明になったシシーという女の子を、小さな町の住民総出で
捜索するシーン。警察官志望のウォークがシシーの遺体を発見。

シシーは車に轢かれて亡くなったのだけど、轢いたのはウォークの親友の
ヴィンセント。ヴィンセントが兄の車を勝手に借りて、恋人のスターと
ウォークとウォークの恋人のマーサを乗せていたときのこと。
卒業式前かなんだかで、みんなビールを飲んで浮かれてた。
スターはシシーの面倒を見るはずだったのに、テレビにシシーのお守りを
させていた。シシーはスターを探すために外に出たのだった。

月日は流れ、父親が誰かわからない姉弟(スターの子)。姉ダッチェスはたくましく
弟を大切に面倒を見ている。

ヴィンセントはシシー殺害の罪で服役。刑務所内でのけんかで服役囚を殺害して
刑期が延びていたが出所。けれど、スターには会うのを拒否される。

ある晩、スターが銃で撃たれて殺された。現場にはヴィンセントがいた。当然逮捕される。

ダッチェスと弟ロビンは今まで音信不通だった祖父ハルのもとで暮らすことに。

シシーの死後、妻が自殺してハルは田舎に引っ越した。ほったらかしにされていたと
思うダッチェスは反発ばかり。けれど、母スターが死ぬ前、スターに暴力をふるったと
思って、ならず者的不動産(転がし)屋のダークのバーに放火し、
防犯カメラのテープを捨てたことで、ダークに追われている。
誤解が解け、少しずつ打ち解けたダッチェスが、ハルにダークのことを打ち明け、
ハルはダッチェスたちを守ろうとしてダークに撃たれて死亡。

ようやくダッチェスとロビンに幸せが訪れたと思ったのに、またもや2人は家族を失う。
お金目当ての養父母の家でひどい扱いをされ、優しい夫婦が養子縁組してくれることに
なったのに、養父母の娘が超絶性格が悪く、ダッチェスはその娘に暴力を振るわれ、
振るい返したのもあって、養子縁組はご破算。ホームに預けられることに。

スター殺しの犯人と思われていたヴィンセントがウォーク(警察署長)とマーサ(弁護士)
の尽力で無罪に。
それを知ったダッチェスはヴィンセントを殺そうとする(射撃はハルに習っていた)。

ここから盛大にネタバレ。

ヴィンセントとスターはずっと愛し合っていて、ヴィンセントが服役中、2人は
夫婦用の部屋で面会し、ダッチェスとロビンを授かっていた
(けれど、夫婦用の部屋が取り壊され、大部屋でスターと会うと、ほかの囚人が
あれこれスターに言うので、危険だと思ったヴィンセントがスターに「来るな」と
言った。スターは急に拒否されて精神が不安定に)。

ダッチェスがヴィンセントを殺しに来たシーンが悲しい。娘を守るため、
君を巻き込むつもりはない、とヴィンセントは投身自殺。

その後、ウォークがダッチェスに手紙を送る(もともとウォークはダッチェスとロビンを
気にかけて世話をしていた)。ダッチェスはヴィンセントが父だと知る(この時点でロビンは
件の優しい夫妻に引き取られている)。

最後に、ず~っと書けなかった家系図の宿題(父親欄が空白だった)を完成させて
発表するシーンで終わる。

そこで疑問。ダッチェスはヴィンセントがスターを殺したと思っているままなのか?
母親を殺した男を父親だと思っているのか?
それとも本当の犯人を知っているのか?

そこははっきり書かれていないのでわからない。私の読解力不足なのかもしれないけど。

本当にちょっとしたボタンのかけ違いみたいなもので、いろいろな事件が起こり、
人が殺される。人が死ぬ。でも、ダッチェスに原因があるのもあって、なんとも言えない。
ダークが金の亡者になった理由もちゃんとあって、でもだからと言って、
そのために他の人を殺めるのは許せない。いろいろ複雑で悲しくてつらい。
ダッチェスの強さに少しの救いがあるけど、私には悲しすぎる本だった。

コメント
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