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サッカーあれこれ(21)

◎岡野俊一郎君カムバック
 日本サッカー協会の会長をつとめた岡野俊一郎君が倒れた、どうやら肺ガンらしいと聞いた時、たいへん驚きました。
 一瞬、私は毎日新聞のサッカー記者だった大先輩岩谷俊夫さんが、肺ガンで亡くなったことを思い出しました。直前まで元気だった40代の若い岩谷さんが突然姿を消し、核心をついた、あのすばらしいサッカー評がもう読めなくなったのかという思い、そして悲痛だったお葬式。
 だが、岡野君は強い、みごと復活しました。
 本人によると昨年ロンドン五輪に行った直後、ついでに見てもらった胸のレントゲンで7センチばかりの腫瘍を発見したそうです。外部には一切もらさず治療を続けていたそうです。
 心配した友人たちが電話しても手紙をかいても一切返事もなく、一時は「どうなっているんだ、よほど悪いのでは」との風説が飛びました。本人は好きな本を読み、ビデオを見ていたそうですが……。
 この5月、故篠島秀雄さん(元協会副会長)を偲ぶ会に「30分だけ出席する」と連絡がありました。大学でお世話になった篠島さん、義理堅い男だな、無理して出て来なくてもいいのにと思ったのですが、久しぶりに顔を合わせた彼は、少し痩せたみたいでしたが、意外に元気でした。
 話の上手な彼は篠島さんの思い出を語り、また文化功労賞(年金つき)をもらったことなどユーモアを交えて満場をわかせました。
 そして、この11月18日本郷湯島のホテルで、大学時代に御殿下グラウンドで一緒にボールを蹴った仲間、32人が集まった席に姿をみせてくれました。「80過ぎた老人のガンは進行が遅いから、手術せずに治すようです」と、すっかり元気になったハリのある声で、仲間を安心させました。

◎むかしの仲間
 思い起こせば、私の現役の新聞記者時代は、「岡野-長沼」の取材がほとんどでした。岡野君は大学で一緒にボールを蹴った仲間であり、長沼健君は亡くなりましたが、私と同じ広島出身で、彼が広島高師附属高時代に私は旧制広島高にいて、よく練習試合をやったものです。よく知り合った2人ですから私の取材は楽でした。
 クラマーさん指導のもと、日本代表の長沼監督、岡野コーチとしてメキシコ五輪銅メダルをとり、その後2人ともサッカー協会長を務め、日体協の役員をやるなど大活躍でした。
 と、思っていたら、面白いというよりなつかしい写真が見つかりました。
 この写真は、少し前に本箱の片隅にある書類の山を整理しているときにでてきたものです。たしかメキシコ五輪直前、テレビ東京に出演した時のものです。みんな若かった。(左から筆者、長沼君、岡野君)


◎「日本人にサッカーは向いてない」
 親しかった2人ですが、私はこの2人にこぴどく叱られたことがあります。日本サッカーは、みなさんご承知のとおり、メキシコの栄光後30年近く、不振のどん底にあえいでいました。
 いまでも最も印象に残っているのは、岡野君が長沼君のあとを継いで監督を務めた1971年のミュンヘン五輪アジア予選(ソウル)で、日韓ともマレーシアにやられました。この時、岡野君は「胃潰瘍で、胃に穴が2つあいた」そうです。
 ソウルでその試合を見ていた直後のことでしたか。私は「日本人はひよっとして、サッカーに向いていないのではないか、と思いたくなる」と書いたのです。あまり負けるのでイライラしていたのでしょう。
 日本選手にはずるさがない。正直すぎて生一本で融通が効かない。人をだますことができない国民である。謙譲の美徳はサッカーに向かない。チャンスを生かせない。個々の動作は巧くても試合全体の流れをつかむことが下手であるなどなど。日本人が持つ生来の美徳がサッカーにマイナスに働いている、というのがその理由でした。
 いまでも、例えばジーコのいう「マリーシア」(ずる賢さ)が、日本人には欠けていると思いますが、怒ったのは長沼・岡野の両君です。日体協1階のスポーツマンクラブに、2人そろって私に猛抗議しにやってきました。
 「中条さんに、あんなことを書かれると若い人たちに及ぼす影響が大きい」
 どういう風に収めたか。いまは忘れましたが、「それなら、もっと国際試合に勝ってくれよ」など毒づいたかもしれません。
 若い時代の、日本代表が少しでも強くなって欲しいと、みんなが思っていたなつかしい思い出です。
 「どうして、あの頃、日本代表が振るわなくなったのか」という質問に亡くなった長沼君は「強化のため海外遠征しようにも、お金がなかった」。岡野君は「新しい選手を作り出す組織ができていなかった」と言っています。
 そして、昔、これも亡くなってしまった八重樫茂生君に同じ質問をしたところ「メキシコまでの8年間、ほぼ同じ顔ぶれでやってきて、チームが一つになっていた。だが、たくさんの選手がメキシコ後引退した。釜本が肝炎を患ったし、チームがガタガタになるのは当然ですよ」。
 彼らの言葉は、いろいろ考えさせてくれます。
(以下次号)

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