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労働市場改革の経済学

2009-12-05 17:48:51 | 書評
労働市場改革の経済学
八代 尚宏
東洋経済新報社

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経済学的な観点から、日本型雇用の弊害について説く。
最近はかなり一般メディアでも取り上げられるようになったが、本書では特に
“家族”というアングルが新鮮だ。

たとえば、終身雇用を維持するには、全国転勤を通じた柔軟な組織内再配置が必要だ。
となると、女性には家庭に入ってもらって夫を支えてもらう必要がある。
労組も雇用保証とバーターだとわかっているから、転勤はもちろん、女性の肩たたき
にも寛容だ。
こうして、男は過労死するまで企業戦士として働き、女性は学卒
だろうが修士だろうが家庭に入るという家族像が生まれたわけだ。

ここにメスを入れずに罰則強化するだけでは、過労死も男女差別も永遠に無くならない。

だが、大黒柱である男性正社員の昇給モデルが破綻したことで、この家族モデルは
機能不全を起こし、世帯あたりの出生率低下を引き起こした。
本来なら北欧やフランスのように共働きで対応すべきなのだが、子育ての一段落後の
再就職では非正規雇用が中心となり、収入・キャリアの両面で著しいロスが生じる。
大卒女性が子供を二人出産した場合の機会費用は2億3千万にのぼり、こうなると
子供手当て程度では焼け石に水だ。

抜本的な少子化対策には、著者の言うように、雇用の流動化を進め、多様な働き方を
実現していくしかない。年齢や性別に関わらず再チャレンジできるシステムへの
切り替えだ。

もちろん、安易な規制強化も厳しく戒める。
当の派遣労働者たちが望んでもいないのに、「かわいそうだから」と言って外野が
派遣規制を求めるのは「高熱の子供を水風呂に放り込む」ようなものだと切り捨てる。

だが、個人的に強く印象に残ったのは、労働組合についての鋭い言及だ。
大手の労働組合は、年功序列賃金により賃金の一部を会社に出資しているようなもので
(しかも転職市場が無いから)株券と違って自由に売買も出来ず、株主以上に会社に
密接な運命共同体である。これはそもそも本来の労組とは根本的に異なるものであり、
欧米での労・使対立とは、日本でいうなら労・労対立だとする。

本書を読み終えてふと感じたのだが、現在の日本型雇用システムで得をしている人間が
果たしてどれくらいいるのかということ。大手の45歳以上男性正社員がそうなのだ
ろうが、彼らは雇用労働者の1割程度にすぎない。また彼らにしても、気づかず
失っているものは数多い。
それを気づかせることが変革の第一歩なのだろうが、それにはもう少し痛みが
必要なのかもしれない。
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23 コメント

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流動化への道 (V)
2009-12-05 19:19:59
「しなければならないこと」はだいぶ煮詰まってきたので「どうやってそれをやるのか?」という書き込みが見られるようになってきた。以下、日本のだめな部分をさっさと切り捨てるために普通の若者ができること。


1.シンプルライフを心がけ無駄な消費を可能な限り慎む。
2.優秀層は、国境に関係なく自分を一番高く買ってくれるところで働く。
3.モノを買うときは、ベストな製品・サービスを提供する会社を国境に関係なく選択する。(現在は、特に家電)


とにかく「このままではダメなんだ」ということ、「日本も世界と競争しているんだ」という当たり前のことをできる限り多くの人がわかってこれば、社会システムは少しづつ変化する。

今の若者が若いうちに日本が行き詰れば、結果的に若者にはより大きなチャンスが残る。遅ければ遅いほど損。

参考
http://oasis.halfmoon.jp/about/sirent.html
企業内労働組合は解体すべき (fisico)
2009-12-05 20:18:24
ちょっとアゴラにコメント投稿できないのでこちらに投稿しようと思いまして(とんでもない理由ですいません)

この手の話、オレもよく会社でするのですが、意外と正社員からの受けは悪いです。彼らはわかっていてオレの意見に反対するのではなく、なんとなく周りの雰囲気で反対するようなのです。

そして象徴的なのは、そういう人達が何年かに一度、オレに労働組合の委員長をやってくれなどと要求してくるのです。もちろん断りますが。

でも一度はやってみてもいいかなと思っています。もしなれたら、一日目にはユニオンショップ規定を利用して歴代の組合役員を組合から追放(=解雇)し、二日目には(企業内)労働組合を解体しようかと思っていて、実際表明しているのですが・・・

誰も乗ってくれません(当たり前か)(^^)
質問です。 (yuki)
2009-12-05 20:38:54
あたまが悪くてごめんなさい!日本における「労・労対立」がなぜ欧米での「労使対立」に繋がるのでしょう?
八代尚宏さんの論文を流し読みしましたが、
ピンときませんでした。。

●『労働市場の改革』八代尚宏(http://www.rieti.go.jp/jp/publications/dp/08j040.pdf)より以下抜粋

 企業内で既得権を持つ労働者(インサイダー)と企業外で新規に雇用機会を求める労働者(アウトサイダー)との間の「労・労対立」

上記がなぜ欧米だと「労使対立」になるのでしょうか?
Unknown (A)
2009-12-05 20:42:59
流動化するにしても、業務を分かってない人事が評価の権限を握っているような会社はだめでしょうね。ひとつの会社にずっといることを前提とした馴れ合いの評価システムも変えていかないと。城さんは富士通の人事のあまりのひどさに会社をやめたのでしょうけど、日本のほとんどの企業はは人事がだめだと思う。モノを生み出す人よりただの管理屋の方が偉ぶってる世の中ってどうなの?
Unknown (ny)
2009-12-05 21:19:06
製造業への派遣禁止はバカらしいと思うのですが、事前に説明されるとは言え短期労働は次の仕事が見つかるかどうか分からないというリスクがあるのも事実。

ならばハイリスクにはハイリターンで応えるという事で、派遣労働は最低賃金の2倍を下限とする、といったルールはどうでしょう。これも余計な規制ですかね。まあコレくらいは払ってる会社の方が多いと思いますが。同一労働同一賃金は実現までは案外手順が多そうですので、手っ取り早くて分かりやすい対応策はこれかなと思いますが。



いずれにせよ、派遣禁止とか言う前に現行の法律すらろくに守られずに名ばかり管理職とかサービス残業が蔓延している状況をどうにかしろ、現行法でも出来ることは一杯ある、と言いたいですね。
Unknown (めるめる500☆)
2009-12-05 21:43:11
既存の民間企業や労組については、経営の自由や結社の自由があるわけですから勝手にやればいいとは思いますが(最終的には企業イメージダウンや労組離れで跳ね返ってくるだけなので)、現政権が非正規労働者へ不利な政策を取ろうとするヘンなバイアスを影で持っていないかどうかが問題ですね。

>年齢や性別に関わらず再チャレンジできるシステムへの

まず、第一は役所がするべきですね。(既存の報酬体系の解体や、公務員試験の年齢制限など)役人には猛烈な痛みが伴うと思いますけど。あと、司法試験の受験回数制限なんかも一種の年齢差別になるのでやめるべきですね。弁護士のセンセイ方々には猛烈な痛みが伴うかもしれませんが。
(ようするに役所が率先して再チャレンジしずらいシステムをやっているわけです。)

世論迎合と役人の既得権維持の目くらましのために、派遣規制だとかで民間を圧迫しようとするのには腹が立ちますね。
Unknown (b)
2009-12-05 22:10:54
企業に人事制度の改革を促すのは無駄。
日本の産業構造を製造業から第3次産業に切り替えるのを利用して別の労働の形態を支援した方がいいんじゃないかと。
ブラック企業の社長を相手に仕事するより、近所の庭の掃除とか窓ふきとかのように直接消費者を相手にして個人対個人で仕事した方が顧客の満足度が上になるようにしたほうがまだましではないかと。
思いつきの意見ですいません。
Unknown (MICHI)
2009-12-05 22:45:42
八代先生は以前、労働ビッグバンについて発言された時に「御用学者」だ何だと、酷いバッシングを受けましたよね。
あれはマスコミの恣意的な報道が原因だと思いますが、最近は多少なりとも風向きが変わってきたようで何よりです。
http://newsing.jp/entry?url=www.mainichi-msn.co.jp%2Fkeizai%2Fseisaku%2Fnews%2F20061219k0000m020089000c.html
八代尚宏氏 (???)
2009-12-06 00:18:05
この人ホワイトカラー・エグゼンプション推進派なんであんまり好きじゃないんですよね。民間で働いた経験がなく理論だけが先に立っているから、残業を減らすためには労働時間を自由化すればいいというか発想にいきつくのでしょう。労働時間の自由化なんてしたらサービス残業が増えるだけなのが現実でしょうに。

ただ城さんのブログの内容見る限り、この本は割とまともな内容なようなので読んでみようかな・・・
今日も仕事 (城)
2009-12-06 10:00:02
>日本における「労・労対立」がなぜ欧米での「労使対立」に繋がるのでしょう?

日本の大手正社員なんて終身雇用に将来の出世&脱組合+経営サイド入りが約束されているわけで、そんなの欧米からすれば労働者でもなんでもないだろうという話。インサイダー・アウトサイダー理論はまた別の話だ。

>八代先生は以前、労働ビッグバンについて発言された時に「御用学者」だ何だと、酷いバッシングを受けましたよね。

いつも不思議に思うのだけど、なんの御用学者なんだろう?経団連って連合同様、終身雇用維持を公言しているんだけど。
厚労省やマスコミの御用学者はいっぱいいるけどね。

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