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「貸せない」金融

2009-05-26 12:37:43 | 書評
「貸せない」金融―個人を追い込む金融行政 (角川SSC新書)
小林 幹男
角川SSコミュニケーションズ

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自己責任という言葉がある。お酒を飲むのもタバコを吸うのも、もろ手を挙げて
褒められたものではないが、とりあえず自己責任ということで認められているものだ。
もちろん、一定の規制はある。未成年は手を出してはいけないし、酒を飲んだら
車の運転もNGだ。要するに自己責任といっても万能薬ではなく、社会との関わりを
考慮したバランスこそ重要なのだ。

06年、金融業でバランスの見直しがされた。貸金業法の改正により、
ノンバンクは利用者の年収の3分の1を上限とする総量規制及び、上限金利の引き下げ
(いわゆるグレーゾーン金利の撤廃)を課されることとなった。
「サラ金なんて、借りるやつの自己責任」という無為無策から、法による適正化へ
踏み出したわけだ。これで、
①善良な市民がサラ金に手を出し、高利に苦しむ状況
は消えて無くなるはずだった。

ところが。
昨年より、全国のノンバンクの倒産が相次ぎ、急速に無担保融資という市場が縮小し
続けている。代表例は、沖縄県下No1シェアを誇った信販会社オークスの倒産だろう。
きっかけは、過去のグレーゾーン金利に対する過払い金請求だった。

僕は別にサラ金を使ったことも今後使う予定もまったく無いので、業界がどうなろうと
知ったこっちゃないのだが、一つだけ気になったことがある。
というのは、この規制によって、いったい誰が得をしたのかということだ。
まず、融資の利用者は本当に救われたのだろうか?
確かに、パチンコで負けて、ふと隣をみるとサラ金のATMがあって、思わず借りて
しまって、なんて人は減るだろうし、これを気にギャンブルから足を洗えるだろう。
実際に沖縄では、07年に39万人いた貸金業利用者が翌年には22万人に減ったという。

だが、この17万人は、本当にギャンブル地獄から開放された幸運な人々なのだろうか。
仮にそうだとしても、なぜ08年において、ヤミ金との接触者および利用者ともに
増加しているのか。結局、借金の理由はどうあれ、借りたいという人はノンバンク
規制程度で減るわけではなく、彼らはヤミ金に流れるだけではないのか。

「ヤミ金のような非合法なモノに手を出すほうが悪い」
という人もいるだろうが、その自己責任論は①段階での自己責任論とどう違うのか。

そして根本的な疑問は。仮に徹底した摘発と厳罰化で全国からヤミ金すらも一掃
したとして、それで利用者は幸せになれるのだろうか。

著者は商工ローン(中小零細企業向けの無担保融資)のメリットを上げつつ、新規の
融資が激減し、干上がっていく中小企業の実態にも言及する。
銀行には相手にされない、政府系の融資や保証は一ヶ月以上の時間がかかるという彼らに
とって、緊急の資金を融資してくれるのはノンバンク以外になかったのだ。
彼ら中小企業は喜ぶどころか、規制を呪いつつ店を畳むか、ヤミ金に手を出す他ない。

そもそも、オークスは完全な悪であり、東京から出張してきて過払い請求原告団を組織した
弁護士は本当に正義の味方なのだろうか。というのも、この改正で唯一自信を持って
「得をした」といえるのは、彼ら弁護士だから。

かつてリーマンに勤務した著者がたじろぐほど、過払い金の分捕り合戦は凄まじいという。
本書を読むと、ハゲタカとは一体誰のことなのかわからなくなる。

著者は経済の動脈を干上がらせる愚を避けるべきだとして、総量規制及び上限金利の緩和を
提案する。そして過払い金の請求などは、多重債務者に限るべきだとする。
規制と自己責任のバランスを考える上で、優れた良書だ。
シンプルな文章に良く練られた構成も万人向けである。

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14 コメント

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同感 (kenji)
2009-05-26 13:56:04
その昔、知人が金を貸してくれと言うから、利子を決めて貸そうとしたら <馬鹿疎なことしたら、後ろへ手が回る>という。何故だ? 個人が金を貸すことは法律で禁じられている。それではどうするんだと聞くと
<借用書を書いてそれに利子を上乗せするんだ>という。
 その程度の知識しかないが、その昔は知人、親戚から借りた。また町内に小口の金を貸す婆(どのようなわけか知らないが婆さん)がいて、それを借りる人が折り、それをといちと言っていた。十日に一割取ったからである。
 今利くと普通は一ヶ月に一割だが、実際は二割になる。なぜかと言うと利子が月割りになっているから、たいてい月末に借りて、翌月に返すから2割となる。
 銀行ローンなどを聞くと、表向きも利子と実際の利子には開きがあり、婆さんの金貸しと尾同じだが、借りる人はそのようには見ていないようです。金は必ず、真の姿が隠れている。
 先ほど記した知人は高利貸しからも借りており、小商売をしているから、高利貸しは悪いことではない。
<お前質屋は>と聞くと、<このごろ質草が無くて、彼らも困っているがあれはいい。返済ができなければ流せばいい。それに借りられる金が決まっている。>と答えた。それでは高利貸しはと聞くと<アレは取りかえせる額を高利貸しが算定する。だから俺が持っている資産、返済能力を彼らが査定するから、大体俺に貸す金は決まっている。だから簡単でいい。これが銀行だと審査があり、支店長とつるまないといけない お前たちサラリーマンには分からない世界さ。>と答えた。そこで私が借金はしないぞデ人生をはじめたと言うと。<其れができればいいが、そんなことはない。お前も、金に詰まって、困れば高利貸しがよく分かるさ>であった。あるとき彼が一緒にいた人の素性を聞いたら、<当ててみよ>と言うから,いろいろ上げたが、すべてはずれであった。<教えてほしいか>と言うので<いえよ>と言うと<あの男は高利貸しが相手にしない人を相手にする高利貸しさ、えげつない男だぞ。寝ている時に灯油をまかれて火をつけられ、大やけどさ> 誰に? <女さ、女房だと聞いたが>であった。

 サラ金は高利貸しより、まだいいと思っていたが、其れが奇妙な道徳で規制したから、とんでもないことになった。これから30万以下の強盗が増える。
 大体、弁護士の飯の種を増やしただけで、世間は弁護士はヤクザよりが悪いである。

さらに言うと高利貸しに金の運用を頼むと金利10パーセントで頼むと幾らなんでも200パーセントで運用はできないだろう。銀行を見ると、預金者には0.1パーセントで借り、貸し出しは3パーセントでその比率は30倍である。事実はサラ金よりも、高利貸しよりもひどいのが今の銀行である。
 世の中にあるものは存在理由があるからあるという知恵を忘れて、そこに道徳や正義を持ってくることはいいが、その前にそのものを知る必要がある。それをして対策を立てないと、その存在理由によって存在しているものがさらに凶暴になって存在する。
 戦後の世界は、大人の知恵と責任と悪徳を忘れた世界である。そのため、愚かと無責任と善意があふれていて、息苦しい世界である。
 金に善悪を持ち出したことが大間違いで、アレは社会を動かすガソリンである。ただ必要なもの過ぎず、それ以上のものではない。
 ただわが国には時たまこのようなことが起きて社会を大混乱に落とし、そして何事も無かったように元へ戻る。その間に利益を得る奴がおり、彼らがそれを起こした実質の張本人だがその利益を得た人がそれをもくろんだわけではなく、別の人々が起こす。結果として利益を受けるから張本人である。今回はやはり弁護士だろう。よっぽど仕事が弁護士はないようだ。だってあんなもの金額が小口でしょ。

 ところで世間商売をかくが弁護士は
1)初めから金があるところへ行く。
2)金が取れるところへ行く。
 つまり泥棒のような商売で、産業を興して金を得る世界ではない。当然悪徳がはびこるのが江戸時代からの世間知である。多分これには勝てない。
潰れても良い企業 (ny)
2009-05-26 14:54:22
>要するに自己責任といっても万能薬ではなく、社会との関わりを考慮したバランスこそ重要なのだ。

素晴らしい言い回しです。使わせてもらいたいと思います。

ちなみに、サラ金にお金を借りなきゃ資金繰りが出来ない企業は潰れてもいいと思うのでは自分だけですか??

一部とはいえ、資本調達コストが10%を越すような状況ならば、やっていけるとは思えません(自営業なのでそこら辺は自分の経験として実感出来ます)。

一時的に資金があればどうにでもなる、というなら銀行からお金が借りれるはずです。

銀行から借りれないのは、公的金融機関や信用保証協会の保証で限度額まで借り、担保目一杯まで借り、業績は悪い、そういう企業です。

ダメな企業の淘汰をスムーズに進めるには、企業向けの消費者金融は無くても良いかと思いますがどうでしょう。個人向けならまさに自己責任ですけど、闇金が暗躍し、学校でクレジットカードの使い方や借金の意味すらちゃんと教えない状況では、借金地獄はそうなってしまった奴が悪い、とは言いにくいかと。ならば事前規制してあげるのもあながち悪いとは思えません。ただ、過払い請求はありえないです。あくまで今後の新規の借金のみに適用されるべきです。

しかし一昔前はサラ金のCMが山ほど流れ、今は過払い請求の弁護士事務所のCMまで流れて、両極端に振れるなあと思います。
記事の紹介です。 (KKMM)
2009-05-26 22:05:23
軍事ジャーナリスト、作家の清谷信一氏が、ご自身のブログで
マチ金と中小企業と金利の関係について、幾つか記事を載せてます。

【パックインジャーナル】愛川欣也、田岡俊次この血も涙もない人たち 清谷信一公式ブログ
http://kiyotani.at.webry.info/200609/article_8.html

グレーゾーン金利と景気と零細企業
http://kiyotani.at.webry.info/200802/article_9.html

中小企業の支援のためにグレーゾーン金利の復活を
http://kiyotani.at.webry.info/200812/article_7.html

城氏の記事と似たような主張が書かれていて、驚きました。

清谷氏自身、小さな貿易会社を経営されているそうなので、
その経験から語られる言葉には重みが感じられます。

一読されてみては、いかがでしょうか。
Unknown (Unknown)
2009-05-26 23:27:11
>一時的に資金があればどうにでもなる、というなら銀行からお金が借りれるはずです。

その言葉を銀行のお偉方が信じるとでも?

「来月にはコレコレの売上が確実に上がります。」と確約できるビジネスなんて、世の中にはそうはないですよ。
無知こそ罪 (Unknown)
2009-05-26 23:46:36
金融業を規制しなくても闇金は繁盛しますよ(笑)これは心理学の問題です。通常消費者金融で金を借り始める人は「利息」なんて気にしてません。彼らにとって重要なのは今手元にいくら出してくれるのか?です。
だから闇金は小口で十分もとがとれるからおいしいんです。
自殺した老夫婦だって「闇金」で借りたつもりなんか全くありませんよ。電話一本3万まですぐ用立てます、なんていわれるから借りてしまうんです。
彼らは当座の生活資金を自治体が貸し付ける制度があるとか、共産党の生活相談所があるとか、そういった社会で地獄へ落ちずにすむための「知識」がないのです。教えてくれる人もいないのです。
借金で首が回らなくなる人はたいてい返済という重大事を考えていない人です。手元にも、将来見込みもまるで資金が無い人間が他人の金を自分の金と勘違いして引き出しつづけるんです。
どうせ規制をするなら年利20%で貸し出し時に50万借りると完済した時にどれくらい金利を支払っているのか借り主に教えることを義務化したほうがいい。知ったらバカバカしくて借りる気が間違いなくなくなるから(笑)
re:記事の紹介です (城)
2009-05-27 09:30:46
>我が国では銀行や信金が本来金融機関の機能のキモである与信機能がないわけです。しかも彼らは零細企業や自営業者に金を貸したがらないわけです。

これに尽きるでしょう。
金融機関が会社名でしか融資しないので、中小零細はノンバンクに頼らざるを得ない。住宅ローンも正社員限定。よって国民はますます寄らば大樹となって地盤沈下は止まらない。
キンキンもそうだけど、こういう情緒的な話しか出来ない人と言うのは、社会人経験があまり無いんじゃないか。
成熟 (kenji)
2009-05-27 09:46:00
>潰れても良い企業 (ny)

その昔、ヤクザが市民から裁判を起こされて、それを弁護した弁護士が、ヤクザも生きる権利がある。それにこの裁判は憲法違反だといたことがあり。そのときの弁護士の表情は忘れられない。
 くだらん、愚かな、裁判を起こしてと言う表情であった。

金融は経済の状況応じて生じる。その経済の状況が高利貸しや、サラ金を必要としている。無担保で貸すことは、企業が新規事業をすることと同じである。
 これを法律的にいけないとしても其れは起きる。
この手の議論の反論は売春防止法に尽きる。この法律が売春を言うほうとしたが、売春はあり、其れが売春防止法と、逆のセットのなって機能していればいいが、異なるから、さらに悪い方位へとすすんでいる。
  グレーゾーンの禁止は、金利と言う商品の価値を否定する。なぜなら商品の価値は一応需要と供給によって、決まるからである。
 商売をしている知人と話すと、サラ金規制は150パーセント誤りで、誤りはそれなりの損を確実に社会へと押し返す。すでにいろいろなことが起き始めている。
 その負担はサラ金による損よりはるかに形も異なるが大きいだろう。

 サラ金を規制するより、日銀のゼロ金利のほうがはるかに社会的に悪であるとは考えておられないようである。
 其れこそ銀行を潰せばよい。

今のわが国に問題は小さい問題において、奇妙な正義を主張するが、其れと同じ理屈で大きな問題に対して大してはしないと言うか、きずかないのか、愚かか、私には良く分からない。
 この手の人々はマスコミ、学者、宗教界、教育関係者にいる。本来その世界は逆であるはずだがわが国は異なる。
 昔はその世界は世間知らずで、世間も当人たちもそれを暗黙に認めていたが、今は其れがどのようになっているか、分からない。
小学生以下の正義と理屈を持ち出しては、いけない。
必要なものは大人の悪で、その上で世の中を落ち着かせることである。
グレーゾーンは撤廃すべき (松本孝行)
2009-05-27 10:35:29
 グレーゾーン金利は絶対に撤廃しないといけませんでした。これは法律の整合性の問題であって、金利上限は29.2でも20%でもどちらでもいいんですが、必ず上限は法でしっかり定めておく必要があります。これをずっと怠っていた立法府には問題を大きくした責任があると思いますよ。

 それと、労働問題でも同じですがバランスが大事です。そもそもヤミ金へ走ることは容易に想像できたわけですから、銀行や信用金庫が個人や中小企業相手に貸付を行う仕組みを作るとか、政策投資銀行が個人への貸付を増やすといった方法が必要だったわけです。しかしそれはやらず、単に利息のルールを変えるだけ変えて混乱を起こしたのだと思います。

 おっしゃるとおり、日本の金融機関は与信機能を持っていないといわざるを得ません。それは政策投資銀もしかりですね。
Unknown (めるめる500☆)
2009-05-27 20:14:42
似たような議論に、

「株主への配当が多すぎるのはけしからん」

というのを最近よく聞きますね。法定金利にくらべたら配当利回り
なんて全然低いじゃないですか。企業がバッタバッタと倒れるこのご時世にも
かかわらず。なのに、同じコメンテーター・政党が、

「銀行は普通預金の金利を低く設定していて、けしからん」

というのも聞きますねえ。普通預金の原資はどこなんでしょうね?
どっちかにしてくださいよ、って思いますよ。
Unknown (999)
2009-05-27 20:24:31
私は以前金融機関ではありませんが、それとかかわりのある業界で勤めておりました。私もそれまでは、ノンバンクや市中金融など悪の権化くらいに思っていたのですが、よかれ悪しかれ、そういう業界があって資金が回っているのですから、その資金の流れを絶ってしまえばショーとするところが出てくるのは当然なんです。その月だけ高利でも手形を割って資金調達したいというニーズはあるんです。銀行とノンバンク間の金利の市場がないことが問題とされて久しいですが、銀行の与信機能が低いからどうしようもない。銀行は金を貸して稼ぐ商売でリスクの高い商売のはずですが、日本は貸さないで損しないだけの商売です。銀行員の給料なんて500万円もあればいいんであとは預金者に金利で還元しろと言いたい。

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