Joe's Labo

城繁幸公式。
というか避難所。移行か?
なんか使いづらいな・・・

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痴呆化する保守

2010-06-27 17:48:39 | その他
先日紹介した文藝春秋7月号・大坪論文の横で、藤原正彦がすごい文を寄稿していた。
名前見ただけで読み飛ばしていたのだけど、大坪論文の後に読んでみると、レベル、
視野の広さの違いに惚れ惚れする。いや、やっぱり読み飛ばして正解なレベルなんだけど、
こういう不思議な生き物の生態を知る上では、それなりに有益な文である。

まず、なんといってもタイトルが凄い。
「日本国民に告ぐ」

「ドイツ国民に告ぐ」をパクったらしいけど、これが後に続く本文とのギャップを
素晴らしく高めている。ジェットコースターとかで落ちる前に一段持ち上げる的な。
ここから先の急降下ぶりの一端を紹介しよう。

愛国者・藤原氏曰く、今の日本は様々な危機に直面しているそうだ。
凋落する一方の経済、世界一の財政赤字。政治の低レベル化と官僚の暴走。

そして、氏の国を憂うる思いは、若者にも向かう。
なかなか結婚せず、してもなかなか産もうとしない。モラルも地に落ち、子殺し親殺し、
通り魔殺人など、かつてありえなかったような犯罪が頻発するようになった。
学級崩壊や陰湿なイジメによる自殺の蔓延は、子供の間でもモラル崩壊が進んでいることを
示しているそうだ。

その理由なんだけれども、すべてのきっかけは、戦後にアメリカが日本の誇りを失わせる
ために仕組んだ陰謀だそうである。ここから東京裁判や「第二次大戦は侵略戦争か?」論
まで延々と話が続くのだが、これがもうすごい長さで、途中で何の記事読んでたのか
わからなくなるほどだ(中身がないのでここはパスしてOK)。

ついでに言うと、愛国者・藤原正彦的には、構造改革もまたアメリカの陰謀らしい。
なんでも郵政民営化というのは340兆円をアメリカに差し出すための、そして派遣法改正は
中産階級を破壊するための、そして医療改革は世界一の水準を誇る医療システムを破壊する
ための陰謀なんだそうだ。

で、結論だが、要するに日本は昔から穏やかで格差の無い平等な社会であり、帝国主義、
新自由主義といった非日本的なイデオロギーは忘れて伝統に立ち返れというわけだ。
たとえば自由貿易のための規制緩和を外国から要求されたら、こう切り返せばよいらしい。
「日本人は聖徳太子以来、和を旨とする国柄です」
(冗談じゃなくて、本当にこう書いてる)。

そういったものを取り戻すために、憲法や教育基本法を改正し、個人主義から「長幼の序」
「孝」を叩き込めというのが、氏の日本国民に告げたいことらしい。
よくわからないけど、これで少子化対策もバッチリと言っておられる。

一応30代論者の一人として言わせていただくと、晩婚化も少子化も別にモラルの問題では
なく、先進国共通の現象である。
対策としては(若年層の負担集中を軽減するため)労働市場を流動化し、
世帯の所得を引き上げるために女性の社会進出を進めるしかなく、むしろ藤原センセイの
御提言は日本の国力という観点からはものすごくマイナスなんですけど。

凶悪事件については、あらためて言う必要もないだろう。多くの論者が指摘している通り
治安悪化というのは幻想に過ぎない。
それから外資にお金預けたら全部持っていかれるなんてロジックは氏の頭の中では成立して
いるのかもしれないが、社会一般では「写真で真ん中に立つと魂を取られる」レベルの迷信
だと言っておこう。

そしていつも言っている通り、非正規雇用を生み出したのは氏の絶賛する日本型雇用自身だ。
連立政権が派遣再規制に舵を切った今、氏は「万歳!万歳!」と叫んでいるかもしれないが、
現実に起きているのは雇用の減少である。

さて、この藤原氏であるが、昨年めでたく定年を迎えられたそうだ。僕は定年制度不要論者
なのだけど、初めてこの制度があって良かったと心の底から感じられた。

「祖国再生の鍵はどこにあるのだろうか」と氏は問いかけてみせるが、一つだけ簡単で
すぐに実行できる提案がある。
今すぐ断筆して2度と公では発言しないことだ。
あなたは保守でもなんでもなく、たんなる老害に過ぎないから。


今どき「階級闘争で問題解決」と信じている既存左派はバカ確定だが、
「古き良き日本」というようなもので国際競争に勝てると思っている保守も、
頭の程度は似たようなものだろう。
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64 コメント

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Unknown (Unknown)
2010-06-27 18:52:21
はじめまして。
いつも楽しく読ませていただいています。

>要するに日本は昔から穏やかで格差の無い平等な社会であり

突っ込み所満載ですが、これもひどいですね。
戦前こそ格差の大きい階級社会だったことをお忘れなのか。

日本にまともな保守は出てこないのでしょうか。
有名な (スターチスの花言葉)
2010-06-27 19:02:48
それなりに有名な
評論家が全員信用できるとは限らないと いうことですね。
でも池上 彰さんは 今ほど有名になる前の著作で社会問題を 〇 ×式で解説した 本の中で 日本の財政赤字は多いが丸か× で 丸 多いなんてもんじゃない多過ぎる と適切な解説をしていました。 信用できる有名な評論家だと 思います。
Unknown (  )
2010-06-27 19:21:35
・「団塊が日本を作った」笑
 団塊8~25歳:若手層として単純労働力を提供する立場→実質経済成長率(期間平均) 9.1
 団塊26歳~42歳:中堅層として現場指揮や実務的判断を行う立場→実質経済成長率(期間平均) 4.2
 団塊43歳~61歳:管理職役員層として経営判断を行う責任ある立場→実質経済成長率(期間平均)0.8

 ふ~ん、団塊が日本を作っちゃったんですね笑
 成長率の順調な変化をみれば良く分かります笑

・消費税引き上げ分「年金・医療・介護に」
菅首相は18日夜、消費税率を「当面10%」に引き上げた場合の使途について、「高齢者にかかる福祉の費用を、新しい税率の消費税でほぼ賄えるようになる」と述べ、国の予算総則で消費税の使い道と決めている基礎年金、高齢者医療、介護の3分野を中心とする考えを示した。
http://www.yomiuri.co.jp/election/sangiin/2010/news1/20100618-OYT1T01044.htm

・高齢者の犯罪増加は政府機関が白書で特集するほどになっている
平成20年版犯罪白書
〈第二部〉特集「高齢犯罪者の実態と処遇」
http://www.moj.go.jp/housouken/houso_2008_index.html

・団塊世代の少年期の少年犯罪は現在の4倍

経済を止めて若者を殺し、年金負担で若者を殺し、犯罪で若者を殺す。
若者は団塊に3度殺されます。

団塊の皆さん、あなた方の大好きな言葉は正しいのかもしれません。
「若いときの苦労は買ってでもしろ」
ああ、今の若者の話じゃないですよ。彼等は(報われないけど)苦労はしてますから。
若い時分に金の卵とかいわれてちやほやされちゃうとロクでもない人間の屑になっちゃうんだな~って、そういう話。
怖いですよね~~。
ささいな話ですが (Hi-Low-Mix)
2010-06-27 19:29:27
たぶん「労害」でなく「老害」ですよね。
Unknown (V)
2010-06-27 19:47:51
保守論客って激ウマ商売ですね。な~~~~~~~~~~~~~~~~~~~んにも考えないで原稿料だけ頂ける。国を憂う人はジャンジャンお布施してやれ。
Unknown (d)
2010-06-27 20:04:44
「老害」ですよね?
「『労』働市場の『害』を与える人」ともとれますが。
やはり城さんも反論しましたか (1970年生まれ)
2010-06-27 20:26:27
あの文藝春秋の藤原「論文」はひどかったですね。
いつ城さんが反論するか、待っていました。

文藝春秋もああいう文章を掲載した責任がある以上、識者に反論させたらいいんです。雇用の問題は城さん、昭和史の問題は半藤一利さんや保坂正康さんなど。半藤さんなんか文春の役員をした方なんだから喜んで反論しますよ。

アメリカが太平洋戦争開戦から日本占領・サンフランシスコ講和条約まで一貫した陰謀的な戦略など持っていなかったことは様々な研究で明らかです。占領政策にしたって、行き当たりばったりのところがあり、ワシントンと東京のGHQ、GHQ内部の対立、連合国各国の対立があったり、それだけで1冊の本が作れる。

治安・犯罪件数の問題も警察白書1冊を読めば、藤原さんの言っていることは論破できる。

早い話が、藤原さんの言っていることは、老人の若者たたきに過ぎない。
藤原さんは60代半ばにも達していないはずですが、その年齢でこんなことを言っている。

こういうことを平気で公言するご本人もご本人だが、出版社の文春にも責任がある。
文春は「文春新書 JAL崩壊」という2ちゃんねるの書き込みみたいな匿名で誹謗中傷するような本を平気で出版するようになりました。

藤原「論文」への反論誌上討論会を責任を取って主催すべきでしょう。
その際は、
・雇用・若者問題担当:城さん
・昭和史担当:半藤一利さん・保坂正康さん
・治安・犯罪担当:警察庁関係者
・格差問題担当:大竹文雄大阪大学教授
などでどうでしょうか

当然藤原さんもご同席です。
定年に付いて付け加えると (fisico)
2010-06-27 20:31:43
私の勤める会社は60歳定年なのですが、年金支給開始時期が65才になったのに合わせて再雇用制度が運用されています。ところがこの制度のおかげで老害がさらに増しているのが現状。

その意味からも藤原氏には即刻あらゆる論壇から退場して欲しいです。間違っても再雇用制度を使わないで欲しい。迷惑千万です。

同時に再雇用に代表される定年延長制度、無制限に全員に適用するのは絶対ダメ。老害そのもの。

むしろ定年制度自体を撤廃し、年齢にかかわらず解雇できるようにするべきなのです。
愛国は逃げ切り世代のポジショントーク (Keizo)
2010-06-27 20:45:51
拝見する限り、藤原氏の主張は愛国心を装った逃げ切り世代のポジショントークと感じています。
ある事ない事を並べ立てて昔の(自分たちにとって都合のいい)日本に戻そうという主張は、①自分たちに有益であること、②愛国心という名のノスタルジーから、60以上の世代の琴線に触れるみたいです(実例をよく見かけます)。
藤原氏に本当に愛国心があるなら、そんなポジショントークではなく、現実的・客観的な主張をして欲しいものです。
修正 (城)
2010-06-27 20:47:35
「労害」は別に深い意味は無くて変換ミスだから修正しました。

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