Joe's Labo

城繁幸公式。
というか避難所。移行か?
なんか使いづらいな・・・

「人数が少ないから高くていい」というセリフは、完全流動化の後に言うべき

2010-05-25 10:29:46 | その他
事業仕分け第二弾で、日本宝くじ協会の仕分けにおける伊藤・鹿児島県知事の発言が話題となった。
役員の年収が2千万近い点を追及された際のものだ。
「それは簡単です。人数が少ないからです」

この発言は2種類の解釈が可能だ。
まずは、「少ない人数でやっているのだから、高くてもいいだろう」
確かに、大変な仕事は報酬が高いというのは正しい市場の論理だ。だが日本はこと労働に関しては
そういう市場原理は働きにくく、まして公益法人の役員報酬がそういうロジックで根付けされているとは
とうてい思えない。

よって、もう一つの解釈が妥当だろう。
つまり「人数が少ないのだから、報酬総額としては常識的な範囲内でしょう」という意味だ。
この常識は、世間一般のそれとはずいぶんズレている。

理想的な組織とは、組織運営上もっとも合理的な人数の役員がいて、その給与は市場原理に従って
決定されている組織だ。各事業部門ごとに権限を持つトップがいて、その給料は業績によって決められ、
かつヘッドハンティング等の流動化が進んでいる国であれば、民間企業はたいていこうなっている。

次に偉いのは、まあそんなに働いていないしお飾りのポストも多いけれども、経済状況の許す範囲で定員と給料を
決めている組織だ。多くの日本企業はこれである。必ずしも合理的な人選とも言えないけれども、
少なくとも企業自体は市場の洗礼を日々受けているわけで、そんなにむちゃくちゃなお手盛りはやれない。

氏の発言が失笑を買ったのは、そういうガバナンス、民の常識が完全に欠落していたからだ。
だいたい、お世辞でもいいから普通は「いろいろ御批判はあろうかと思いますが大変な仕事であります」
くらい言いそうなものだが、悪びれもせず「人数×給与で予算内でしょ」と言い切ってしまうあたり、
さすが旧自治省出身のセンスを感じてしまう。
そういう視点しかないから、ひたすら天下り先という入れ物を増やそうとするわけだ。

というわけで、何気ない発言とはいえ、霞が関のロジックを垣間見た気分である。
この体質を変えるには、人事システムを180度変えるしかなく、それは天下りという出口を禁じるだけでは
不可能だろう。霞が関が理想の組織になる日はまだまだ先になりそうだ。