Joe's Labo

城繁幸公式。
というか避難所。移行か?
なんか使いづらいな・・・

仕事するのにオフィスはいらない

2009-09-04 12:50:16 | 書評
仕事するのにオフィスはいらない (光文社新書)
佐々木俊尚
光文社

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オフィスに縛られず働くノマド(遊牧民)ワーキングについて、様々な事例を
中心に紹介していく。
事例の中には著者自身のワークスタイルも含まれる。
携帯端末一つで身軽に動きまわり、気に入った無線LAN付きのカフェでクラウドに
アクセスする。必要なアプリも資料も、サーバにおいてあるから、場所や端末を
選ばずに仕事が出来る。

一定の自己規律さえあれば、これほど快適で効率的なワークスタイルはないだろう。
エアコンの温度もBGMも、誰にも合わせず自由にデザインできるのだから。

とはいえ、基本的にはテレワークやSOHOといった言葉で語られてきたコンセプト
であり、それほど新鮮さは感じられないかもしれない。

面白いのは、そういった既存のコンセプトが“IT”中心に切り込んでいたのに対し
著者は雇用情勢の変化も絡めて読み解いている点だ。

大企業の正社員であるからといって安泰という時代は、もう終わり
ました。どこにも安全な場所はなくなり、マスコミからメーカー、商社、
金融まで、ありとあらゆる産業分野で大規模なリストラが今後始まり、
多くの人たちが仕事を失ったり、収入を激減させてしまう時代が
やってくるのです。そのような時代にどうやって生きていけば
よいのでしょうか? (中略)
従来の、会社にひたすら仕える企業戦士ではなく、能動的に行動し、
何のために仕事をしているのかという価値観をしっかりと持って、
新たなワークスタイルを実践している人たちこそが、ノマドなのです。


実際にリストラされるかどうかはともかく、今後は大手であっても、人生かけて滅私奉公
するなんて割に合わない時代になるだろう。

考えてみれば、サラリーマン的ワークスタイルは、ノマドワーキングの対極と言っていい。
出勤退勤の裁量が無く、プライバシーの無い大部屋で、欧米より年300時間も長く
こき使われる。有給は半分も取らせてもらえず、辞令一枚で全国転勤。
言うまでもないが、こういったサラリーマン文化は、すべて日本型雇用の副産物だ。
それが崩壊しつつある以上、サラリーマンのワークスタイルも変わっていくはずだ。

「リスクなんて取りたくないし、生涯、人に使われていたい!」
という人は、地方公務員にでもなるといい。

後半は一気にITオタクぶり全開なので引く人もいると思うが、それも含めて
“時代”なのだろう。これからの労働観を考える上でヒントになる書だ。