働き方革命―あなたが今日から日本を変える方法 (ちくま新書)駒崎 弘樹筑摩書房このアイテムの詳細を見る |
長く働けば働くほど生産性が上がるという時代が、かつては確かにあった。
業種にもよるだろうが、80年代くらいまでだろうか。
さすがに、今は自信をもってそう言える人は少ないだろう。
社会が成熟し、工業型からサービス型へ移行しつつあること、グローバル化で国際分業が
進んでいることが理由だ。IT化もこれに拍車をかける。
ただし、空気までは簡単には変わらない。
僕自身も経験があるが、膨大なエントリー用紙の入力を外部に頼みましょうというと
「だめだ、仕事とは増やすものだ」と言われ、いやコスト的に僕等の残業代より
全然安いですよというと、最後は「この敗北主義者め!」と怒られたことがある。
山本七平の旧軍ルポに出てきそうな話だが、つい10年ほど前、某IT企業での話だ。
フォローしておくと、似たような話はいまだにあちこちから聞くから、個人的には
特別ひどいエピソードという印象はない。
そんなことやってたんじゃ幸せになれないし、誰も幸せにできないし、というかむしろ
生産性低いから会社にとってもマイナスですよ、と気づいた著者の改革日記が本書だ。
恐ろしいもので、残業というのはある一点を過ぎると、逆にひどく充実して達成感を
得られてしまい、それが無いと不安で落ち着かなくなる。
ランニングハイならぬ残業ハイだ。
著者はアメリカでの研修に参加することで、そういったハイな気分から目が醒める。
そこから先は、オーソドックスなワークライフバランスの話に、自己啓発系の話を上手く
からめて飽きさせない。
結局のところ、残業中毒から目を覚まし、自分がどういう目的地に
行きたいかを意識できれば、自然と必要な仕事と
そうでない作業は見えてくるものなのだ。
ここでいう残業中毒とは、そのまま昭和的価値観と読み替えてもいいだろう。
社会を変えるプロセスではないが、個人が変わるアプローチを探している人には
得るところの多い良書だろう。