Joe's Labo

城繁幸公式。
というか避難所。移行か?
なんか使いづらいな・・・

働き方革命

2009-06-02 09:22:19 | 書評
働き方革命―あなたが今日から日本を変える方法 (ちくま新書)
駒崎 弘樹
筑摩書房

このアイテムの詳細を見る


長く働けば働くほど生産性が上がるという時代が、かつては確かにあった。
業種にもよるだろうが、80年代くらいまでだろうか。
さすがに、今は自信をもってそう言える人は少ないだろう。
社会が成熟し、工業型からサービス型へ移行しつつあること、グローバル化で国際分業が
進んでいることが理由だ。IT化もこれに拍車をかける。

ただし、空気までは簡単には変わらない。
僕自身も経験があるが、膨大なエントリー用紙の入力を外部に頼みましょうというと
「だめだ、仕事とは増やすものだ」と言われ、いやコスト的に僕等の残業代より
全然安いですよというと、最後は「この敗北主義者め!」と怒られたことがある。
山本七平の旧軍ルポに出てきそうな話だが、つい10年ほど前、某IT企業での話だ。
フォローしておくと、似たような話はいまだにあちこちから聞くから、個人的には
特別ひどいエピソードという印象はない。

そんなことやってたんじゃ幸せになれないし、誰も幸せにできないし、というかむしろ
生産性低いから会社にとってもマイナスですよ、と気づいた著者の改革日記が本書だ。

恐ろしいもので、残業というのはある一点を過ぎると、逆にひどく充実して達成感を
得られてしまい、それが無いと不安で落ち着かなくなる。
ランニングハイならぬ残業ハイだ。
著者はアメリカでの研修に参加することで、そういったハイな気分から目が醒める。
そこから先は、オーソドックスなワークライフバランスの話に、自己啓発系の話を上手く
からめて飽きさせない。
結局のところ、残業中毒から目を覚まし、自分がどういう目的地に
行きたいかを意識できれば、自然と必要な仕事と
そうでない作業は見えてくるものなのだ。


ここでいう残業中毒とは、そのまま昭和的価値観と読み替えてもいいだろう。

社会を変えるプロセスではないが、個人が変わるアプローチを探している人には
得るところの多い良書だろう。