城台山日記

 城台山の麓で生まれ、毎日この山に登り、野菜・花づくり、読書、山登りをこよなく愛する年寄りの感動と失敗の生活日記です。

青春プレイバック・番外編=苦い山行 20.8.6

2020-08-06 19:13:45 | 過去の山登り記録
 若い頃の思い出には少し苦い山行ももちろんある。昭和52年7月の聖岳と昭和56年11月の奥美濃・左門岳である。まずは、聖岳から始めることにしよう。昭和50年にM氏と二人で三伏峠~荒川岳~赤石岳~椹島に行った。そして、赤石岳からさらに南部の聖岳に行こうとしたのが昭和52年。この時は当初2人で行くはずだったが、単独山行となった。当時、南アルプス南部はまだベテラン向きのコースが大半を占めていた。山小屋はシーズンのみ管理人が入っていたが、基本は寝袋、食料持参であった。そして、椹島までは林道を4~5時間歩く必要があった。

 計画は、畑薙大吊橋を渡り、茶臼小屋で一泊、百間洞で二泊目、椹島で三泊目としていた。金谷駅での前泊は蚊に悩まされ、睡眠不足。大井川鉄道から千頭・井川さらにバスで畑薙第二ダム、大吊橋をこわごわ渡った(6年前にツアーで聖岳~光岳を登り、帰りに大吊橋を渡った。43年前は川幅一杯に水があったが、その時は真ん中を少し流れているだけとなっており少し拍子抜けした。)。ウソッコ沢の出合から少し登ったところで、大きな蛇に遭遇(おそらくヤマカガシ、毒をもっているが性格はおとなしいと後で知った)。横窪沢小屋から茶臼小屋までは遠かった。二日目は小屋から上河内岳そして聖岳に向かうが、足取り重く、百間洞小屋まで行くことは無理と判断し、聖沢小屋から空身で聖岳往復し、翌日信州側の西沢渡に下ることを決めた。

 予定どおり、三日目聖沢小屋から西沢渡への登山道を下って行った。1時間半過ぎたころ、道がわからなくなってしまった。しばらくは踏み跡があったので下ったが、やがてその道はなくなった。一度は元の道まで戻ったが、再びわからなくなってしまった。仕方なく、そのまま下り、遠山川の支流の西沢に出た。この沢は時に廊下状になっており、そのたびに高巻きを行う必要があった。このあたりでは造林事業が行われており、至るところに作業道があった。上に登れば登山道に合流できるかもしれないと何回か登ってみたが、空振りに終わった。最後に吊橋が見えてきたが、前には大きな堰堤が横たわっていた。堰堤の高さはかなりあり、飛び降りることもできない。幸い、左側斜面にはワイヤーが張ってあった。小屋を出て10時間、さまよった結果、メガネと帽子を紛失、シャツは泥で汚れ、血まみれ。近くの雨がしのげるくらいの小屋で眠れぬ夜を過ごす。易老渡を経て、北又渡まで歩き、そこからトラックに便乗、さらに本谷口から平岡駅(飯田線)までバスに乗った。


 聖沢小屋~西沢渡 どの辺から登山道をそれたのか今となってはわからない。43年前だから登山道も変わっているかもしれない。

 その4年後、会の長老M氏とI氏を誘い、奥美濃左門岳に出かけた。既に奥美濃水力発電所は工事が始まっていたが、左門岳周辺にまでは及んでいなかった。沢から尾根に取付き、激藪のなか左門岳山頂に達した。山頂からつい歩きやすい沢筋を降りてきてしまった。方角を見ると北の方向に向かっている。このままだと福井側に行ってしまうとその時思ったが、県境を越えるには尾根を登る必要があるとわかった。沢は最初北東そして東南東、南、東とめまぐるしく方向が変わっている。途中で銚子洞にいることがわかったが、日没のためビバークを強いられた。11月初旬の夜は結構冷えた(私だけシュラフカバーを持参していた。)翌日銚子滝を高巻きで下り、林道に出てから、写真の撮影に来ていた方の車に同乗させていただいて、岐阜市M氏宅まで戻った。M氏宅で思いがけないことを聞いた。すなわち、戻らない3人に対し、職場の山岳会の方で遭難救助隊が作られ、そのメンバーが根尾の樽見にいると知らされた。すぐに、そのメンバーと連絡を取り、無事であったこと、迷惑を掛けたことを詫びた。当然、各家庭及び職場(無断欠勤)には大いに迷惑を掛けてしまった。

 左門岳 登った経路

 左門岳 山頂付近 やや複雑な地形となっている 板取側は大きく育ったスギなどがあり、歩きやすかった

 前者の場合は複数での登山であれば、間違わなかったかもしれない。逆に左門は複数だったので、安易に考えた可能性がある。どちらにしても初歩的なミスを犯していることは間違いない。今だったら赤布は持参するし、GPSという強い味方もいる。しかし、左門岳で最近遭難したケースもあるので、知らない山では最大限の注意が必要だ。もちろん生命の危機をどちらも感じてはいないが、一歩間違えばどうなっていたかわからない。今でも、この時のシーンが蘇ってくる。 

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