城台山日記

 城台山の麓で生まれ、毎日この山に登り、野菜・花づくり、読書、山登りをこよなく愛する年寄りの感動と失敗の生活日記です。

デジタル社会の光と影 21.1.17

2021-01-17 19:23:06 | 面白い本はないか
 昔、本は当然本屋で買っていた。その本屋にない場合は、名古屋等の大きな本屋に行くか、注文するかだった(こうなると一ヶ月程度かかってしまう)。それが、アマゾンが登場して、状況が一変した。アマゾンで検索し、注文すると翌日か翌々日にはもう家に届く。アマゾンがやっているビジネスは下の写真でいうと黄色の部分(これをロングテール、日本語だと「長いしっぽ」)で需要が少なく、スペースに限りがある本屋がターゲットにしない部分ということになる。

そして、アマゾンには新書のみではなく古本も扱っていて、よりリーズナブルな値段で買うことができる(本は新書だと勝手に安売りできない)。かつてブックオフの実店舗があったが、ある本が限られていた。それが今や個人も含めて古書店がアマゾンに出店している。最初本だけであったのが、今やその取り扱い商品はあらゆる分野にわたっている。本好きにとって、あるいはネットでの買い物好きにとって、今やアマゾンは快適な生活を送るためのインフラとも言うべき存在となった。

 アマゾンに限らず、スマホ等で従来有料あるいは簡単に収集できない情報がいとも簡単に手に入るようになった。検索サービス、地図情報サービス、SNS等々、これで我々の生活は随分便利となった。では、この先、我々の生活はデジタルによって良いものになっていくのであろうか。野村総合研究所の所員が書いた「デジタル資本主義」を紹介しよう。世界、あるいは日本は経済が停滞し、賃金も伸びていない。しかし、その一方で生活者は生活の質の豊かさを享受している。すなわち、GDPでは捉えきれないデジタル化の影響がある。物を買うときネットで価格を調べ、少しでも安い価格のところで買う。結果、消費者余剰(この内容であればこれぐらいは支払っても良い思う金額と実際の価格の差)が大きくなった(逆に生産者はコストを下げない限り生産者余剰が小さくなる)。

☆少し与太話をする。例えば登山靴、これをいきなりネットで買う人はいないであろう。やはり、実店舗で試し履きをする必要がある。ぴたっとあった靴があってもそこでは買わない。そのメーカーの同じサイズの靴をネットで探し、そこで購入する。これはおじさんの話ではない。ひよっとしたら常識だと言われそうだが。

 デジタル化によって進んだ現象として、シェアリングエコノミー(あまり使われていない資産やサービスを無料または有料で共有する経済システム)の進展。オンデマンド配車サービスのウーバー(2009年、サンフランシスコで創業)、空き部屋を活用したい人と宿泊場所を探している人をマッチングするエアビーアンドビー(2008年、カリフォルニアで創業)、名前がとってもユニークのがブラブラカー(2006年、パリで創業)で、自動車の空きシート(所有者が出張などで車でA市からB市に移動する際、それに同乗させてもらう(電車よりもうんと安い)を活用。BLAというのは英語でおしゃべりするという意味で、利用者は自分のしゃべり度をあまりしゃべらないBLA、おしゃべりを楽しむBLABLA、しゃべり始めたら止まらないBLABLABLAと三段階で申し込む。

 しかし、デジタル化には影の部分がある。アマゾンで働く人たちはほとんどが非正規でその勤務内容も厳しい(関連本が出ている)。金融機関を例に取ると、ロボット・AIの導入により、事務職の一部は解雇される。24時間サービスの導入などによりその銀行の労働生産性(少ない労働力で多くのアウトプットを生み出す)は上がるが、従業員の賃金は増えない。ホワイトカラーも含め多くの仕事がロボットやAIに置き換えられ、大量の失業者が生まれる。日本が得意だった製造技術を持つ企業もGAFAなどのプラットフォーマーたちの傘下に置かれるかもしれない。日本のお家芸とも言われた「すりあわせ」で出来ていた自動車、これが電気自動車となると部品が少なくなり、すりあわせの必要も減少する(パソコンや家電製品で起きたことが自動車でも起きる)し、さらに自動運転技術の導入により日本の産業に多大な影響が出ると予想されている。

 産業資本主義は私有財の領域を拡大させてきた。18世紀の産業革命の前提となった共有地として用いられてきた土地を囲い込み(エンクロージャー)、そこを追われた農民が都市部に労働者として流れ込んだ。21世紀今度はデジタル化により、公共財や準公共財(シェアリングエコノミーによって私有財が公共財や準公共財財に変わる)の領域を拡大させている。その例として、おじさんも良く利用するウィキペディア、2001年にジミーウェ-ルズ、ラリー・サンガーによって創業、約4700万件のトピックが投稿され、7200万人の編集者がおり、それをたった3800人の管理者が管理している。今も開発進行中のコンピューターのOSの一つであるリナックスというのも準公共財だろう。

 明るいような暗いようななんだかよくわからない未来予測であるかもしれない。 




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