会場:日本橋三越本展 会期:2013年10月22日まで
日本画の花鳥画はしょうもない作品ばっかりだと思っていましたが,この方のはひと味違います。
最もよいと思ったのは黄菖蒲を光琳風に描いた「春麗」。琳派の表現をおさえきった上で,勝負の表現に個性を出しています。さすがに真っ先に売れていました。対をなす秋の「秀麗」より魅力的でした。
四季の花と富士を描いた連作では,霜の降りた椿の葉に油絵を超える写実を見せつける「歳旦」に喫驚しました。
屏風「麗日遊鱗」は池の真鯉というよくある画題ですが,水をそれと描かずに鯉の動きだけで描ききり,しかも距離をおいてみると鯉の動きの動線まで生きているように見えてしまうという手練の技。また,鯉の対する愛情がないと描けない作品でしょう。
一方,「道辺」では草むらの中で遊ぶ3羽の雀を表情豊かかつ諧謔性をもって描くとともに,イネ科の雑草を超絶技巧で再現し,これまたスから落ちたスズメのヒナを育てていたという画家ならではの作品に仕上がっています。
さすが川端龍子の最後の内弟子,川端康成の贔屓画家だけのことはあります。
2013年10月16日観覧