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映画【海を見る(REGARDE LA MER)】

2008-04-16 23:41:49 | 映画
 
 
海を見る
1996
フランソワ・オゾン(Francois Ozon)


先日、10年ぶりくらいにお会いした映画監督と、立ち飲みでひたすら映画談義だったんですが、その監督への「今、ぽっと浮かぶ作品は?」で出てきた作品です。
フランソワ・オゾン監督を尊敬するとのこと。
で、鑑賞。

「60分くらいのサスペンスだからサクッと観られるよ」とのことだったんですが、サスペンスだと聞いていなかったらそれすらもラストまで気付かなかったかも。
確かに、サスペンスです。
しかし、そこに圧倒的な答えが出るまで「ん?サスペンスなの?」という展開。
気付けば、全てはラストに向いていたという当たり前の感想。

本作は、サスペンス映画の本質です。
人がいきなり死ななくても、暴力が無くても、ピストルが出てこなくても、その人の悪意を描くことでサスペンスになりうる。
翻って、その悪意を描きさえしなければただの描写だけの羅列になってしまう。
分かりやすい謎かけはただチープな伏線にしか成り得ず、その謎かけに鑑賞者は気付かなければその作品を楽しめない。

映像で表現するということはこういうことなんですね。
多分、本作の脚本を読んでも映像で描かれていることは殆ど書かれていないでしょう。
突然のラストが来て驚く、というどんでん返し作品として書かれているわけではないでしょうし、そういうことではなくオゾン監督の頭の中にあるイメージは文字ではなく、映像(時間)の中でしか表現できないことなのかもしれません。

「伏線をどれだけ上手いこと回収するか合戦」に辟易している方は是非。
これは「面白い」とはちょっと別なんですが作品としてはもの凄く強烈です。
イヤ、これをして映画を「面白い」と言うんだろうなぁ。


「何度も観てるけど、その度に発見がある」というのは私に勧めてくれた監督の言。
あと3回は観よう。


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