眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

雨上がりの朝

2020-04-24 01:17:00 | 夢追い
夜、目覚めると冷たかった
エアコンをつけても
温かいものを食べても
シャワーをあびても
冷たい
ふらふらと歯を磨いて
また布団の中へ入った

(もう目覚めないかもしれない)
少しの恐怖
外は雨
最後に聞くのが雨音というのも
わるくない
風を伴った強い雨だ
ずっと向こうで焚き火のような音がしている
自然は面白い
(もっと楽しめばよかった)
布団の中で手を合わせてゆくのも
わるくない
消えてゆくなら
誰にも見つけてほしくない
ずっと忘れられたい
それだけを切に願う


目が覚めると雨は上がっていた
昨夜より強い意識がある
(夢の中に君が出てくるなんて)
階段を下りると透明ドーナツ
透明ラケットのトラップが
至る所に仕掛けられている
「危ないじゃないか」
「そうなのよ」
君は知りながら放置している
玄関に近づくにつれて
トラップは密になりもはやそれは……

「あとで言うわ」そう言い置いて君は
無法者たちの残骸を片づけに行く
短い夢だった

AM 7:30
僕はタブレットを開いて
玉葱に色を塗り始めた
たいした色なんてない
だけど少しだけ、
光る場所があるんだ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

花の時間

2020-04-23 10:57:00 | 短歌/折句/あいうえお作文
花咲けばいいもんですなお酒持ち
マットの上で過ぎた話も

(折句「バイオマス」短歌)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

404美術館

2020-04-22 21:21:00 | 短歌/折句/あいうえお作文
盛り場の404がうそぶいて
南南西のラムのそよ風

(折句「さようなら」短歌)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

禁断のヒント

2020-04-22 17:38:00 | 短歌/折句/あいうえお作文
耳元でそっとあなたがささやいた
最後の一手1ニ金よ

(折句「ミソサザイ」短歌)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

カク・ヨム・ノベル

2020-04-22 12:52:00 | 短歌/折句/あいうえお作文
書いて読む書いて読むドレミファソラシ
いとおかしきと詩人は述べる

(折句「鏡石」短歌)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

冬の雨、冬の嵐

2020-04-22 11:41:36 | 夢追い
「さあ、触れてごらん」
 無防備な仕草を見せて犬はやってきた。犬の背中を通して、多くのことを思い出した。そうだ。この感覚だ。この仕草だ。あたたかい。遠い昔にこれと似た触れ方をしたことがあった。それを知っているという目を、犬はしていた。触れている内に徐々に無防備になり、犬の背を越えて梅の香りがする場所まで歩いた。もう一度、触れたい。(余計にあとが切なくなるのに)反逆者の声を無視して進む、歩みはもう自分では止められない。
 花に触れる。
 一瞬すべては回復し、一瞬あとにはよほど寂しくなった。けれども、それは必要な瞬間だった。
「記憶は力に、感覚は希望になるのよ」
 木は根の底からささやいた。母と同じ匂いがする。


 外は雨が降っていた。
「最近出かけなくなったね」
 雨が降ったくらいのことで、一昔前に比べると出かけることが少なくなったね、と姉が言った。
 雨なんかで……。昔はどうってことはなかったのに。出かけなければ何もしていないみたいになってしまう。
「1時間くらいは出かけないとね」
 勢いよく自転車に乗って出かけた。すぐに見つかるはずのものが見つからずに、後戻りした。土煙が立つ、ただの空き地。マクドナルド跡地には、誰もいなかった。もうすぐなくなるんだぞ。以前におじさんが汚れたタオルでハーモニカを磨きながら言っていたことを思い出した。聞いていた通りになったのだ。
 ケンタッキー。
 すぐに頭を切り替えて、次の計画を立てる。
「しかし遠いな」
 友達が言う。一駅越えなければならない。雨の中の一駅は、いつもよりも遠くなるのだ。
「待てよ!」
 モス!
 答えは近い場所にあった。完全個室の居酒屋の中にB2への階段が隠されている。空いている、ネズミの休憩所ほどの狭い座敷の中に進入して、机を動かすと小さな穴が見つかり、梯子に足をかけて降りていく。ちょうど頭だけになった。その時。
「ビール飲む?」
 モスへ行くんだよ! 気まぐれなのか、突然誘惑が湧いてきたのか、本当は元からそういうつもりだったのか。こんなことになるのなら、一人で僕はくるべきだったな。
「えっ?」
 躊躇っている間に、テーブルの上にはお造りの盛り合わせが並べられていた。
「飲むだろう?」
 脅迫と懇願の間から声が響いた。
「ああ」 
 弱々しい返事は、同意したに等しい。
 音を立てて、完全個室の壁が壊れていく。人々が談笑する模様が露わになった。意志弱く折れていく2人には、容赦なく冷たい12月の雨のような視線が突き刺さった。


 マスクをしていたので証言は後日に取られることになった。僕の証言が決定打となって男は逮捕されることになるのだが、前もって断っておくべきか迷っている内に隅に座っているのはお婆さんに変わっていて、慣れない経路をたどったことで、散々連絡口で迷うことになってしまう。
 カレー屋のショーケースの上が連絡口だ。
「通れますか?」
「通れませんか?」
 長い帽子の男は、厨房の奥から逆に返してきた。
「そこじゃなくて、もう少し上」
 頭からケースの中に突っ込んでどうにか通った。片足でエスカレーターに着地する。狭い。と、思った瞬間に動き出す。転ばないようにバランスを取りながら上に行くと生い茂る植物たちの荒々しいハイタッチの歓迎に圧倒される。どうも正規のルートではなさそうだ。
(危険! その先落とし穴 注意!)
 おい。そういうことは、もっと前に言うべきことじゃないか。引き返そうにも空間がなさすぎる。飛び越えられない暗闇が口を開けるのが見えた瞬間、どこからか釣り竿のようなものが伸びているのがわかった。天の助けと信じて、手を伸ばす。それはしっかりと体重に耐えて、僕の体を上の階にすくい上げた。
 トレイを持ったままテイクアウトしていることに気がついたが、直前までのことを考えればそれは些細な問題として捉えることができた。そして、実際歩いている内にすぐ別のチェーン店を見つけることができたのだった。店の中は空席を見つけるのも一苦労しそうなほど混んでいたけれど、そのすぐ隣の少し懐かしい趣を持つカフェはひっそりとしていた。何より落ち着ける場所と一時の休息を、最も強く求めたのは右足だった。


「間もなく三国、三国……」
 減速していくと看板におぼろげな文字が、車掌の言う通りに見え始めるような気がした。だとしたら、僕は方向を間違えたのだ。
(違う!)僕は長い間、地面を受け止めていたはずじゃないか。
(ここは既に部屋の中なんだ)
 ホームに着いたところで、何も変わりはしない。振動が収まると列車は寸分の狂いもなく決められた通りの場所に停止する。
「扉が開きます」
 開いたとしても、誰も降りも乗りもしない。僕はひとり、みんな夢だったのだから。
「間もなく発車します」
 再び、列車は動き始めた。幻の旅がまだ体を欺いていたけれど、部屋を揺らしていたのは冬の嵐だということは既にわかっていた。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

名店はホームの上に

2020-04-22 02:56:00 | 忘れものがかり
 テレワークが浸透したためか、夜のホームは山口駅のように人が少なかった。その昔、人気のないホームの上にあのうどん屋はあった。ホームに立つ人も疎らなのに夜も遅くまで開いていた。電車を30分、1時間と待つのは当たり前のことだった。
 がらがらと扉を開ける。(いや扉などなかったか)
 肉うどんを注文するとおばあさんが(おばあさんではないかもしれない)手際よくうどんを作ってくれる。

「はい、どうぞ」(無言だったかもしれない)

 昇る湯気、出汁の香り。七味唐辛子を振り入れてうどんを啜る。抵抗なく喉を通る麺。器を抱えて出汁を飲む。熱い。そして旨い。(旨いと目の前の人に伝えたい)僕は黙って息を吐く。それからもう一口。次の電車がくるまで15分余り。うどんならゆっくり食べても十分に間に合う。この出汁はどこから出ているのか。肉からか? それもあろう。鰹と昆布からか。それとも作っている人が持つ特別な何かが……。どんな堺筋のうどんよりも、どんな千日前のうどんよりも、どんな南のうどんよりも、どんなバカでかい器のうどんよりも、確かにそれは旨かったのだ。電車がくることが惜しいくらいだ。一口飲む毎に感動が押し寄せる。もちろん出汁は最後の一滴まで。ごちそうさま。(少年は無言で丼を置いて店を出る)
 あれは本当だったろうか。ホームだから、電車を気にしていたから、夜だったから、風が吹いたから、まだ舌が幼かったから、記憶が旨く盛られているのかもしれない。(もう確かめることはできない)

 ある時、うどん屋は突然なくなってしまった。
 僕がそうなる事情を何も知らなかったからだ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

スプリング

2020-04-21 19:03:00 | 短歌/折句/あいうえお作文
ユニクロを着こなす春の膝下を
過ぎる高速ウーバーの影

(折句「ユキヒョウ」短歌)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

夏、ノック、ノック、ウーバー

2020-04-21 04:39:00 | 夢追い
 季節は夏で着ていく服が決まらない。色やサイズや生地で迷い、一度着た服がベッドの上に乱雑に重なっている。分解されたPCは暗号がきつく、なかなか組み立てられないのでアラームが鳴らない。逆算すると新大阪着24時30分。そんな列車があるのだろうか。
「あんた。何やってるの。ほれ、時刻表」
「ありがとう」
 分厚い。いつのだ。いやそんな時代じゃない!
「何の音? 風?」
「猫がドアをノックしてるのよ」
「まあそうですか」
「どうせよその猫だから」
 アプリが改悪されていてダイヤが調べ辛い。スマホを表にしたり裏にしたり操作性の悪さに焦る。

「ちゃんと働きもしない……」
 兄が隣で僕の悪口を言っている。そんなはずはないのにな。兄は何も言わないはずなのに。改札を出てやたらと長い階段を上っていくと空が見えた。ああ、もうこんなとこでおしまいか。

「いらっしゃい」
 階段を下りると会社に着いた。
「椅子の上を歩いてください」
 飛び石を渡るように丸椅子の上を歩かされるおかしな会社だ。椅子はどれもみんな不安定で恐ろしい。
「落ちても大丈夫ですよ」
「うわーっ」
 会社の向こうはコンビニとつながっている。コンビニと会社とを行き来するのがこの会社の仕事だ。

「毎度、ウーバーです!」
 小窓を通って戻る度に何かぼけなければならない。おかしな会社だ。
「親子でっか? いや頼んでへんわー!」
 ああ、もう面倒くさい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

夢みるもの(君の選択)

2020-04-21 01:52:00 | 【創作note】
描きたいものが描けない
君はどうするの?

離れるの
置いていくの
捨ててしまうの

それとももがいてみる?

描きたいものの周辺を
懲りずにさまよって

夢でもみる?

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

読む力

2020-04-20 23:06:00 | 短歌/折句/あいうえお作文
独り夜の窓辺にかけて詰パラに
耽る明日も7時半起き

(折句「暇つぶし」短歌)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

レインコート

2020-04-20 08:05:00 | 短い話、短い歌
 旅のはじまりと終わりに僕はあふれだした。扉が開いて迎えるのは雨。強く優しい打ち消し線よ。傘よりも大きく僕のかなしみを覆ってくれ。叩きつける激しさで、僕の嗚咽をかき消して。横殴りの態度で僕の泣き顔を上書きして。僕はもう止まらないよ。「大丈夫。復活できる」おせっかいな雨よ。語りまでつけて雨は何度も再生する。「私は知ってるんだ」抑揚ある雨よ。いつまでも僕に注げ。「いいよ。もっと泣いて」


もてなしの雨に打たれて行く内に
ゾンビに触れる歌のはじまり

(折句「モアイ像」短歌)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

カラー・パレット

2020-04-19 10:33:00 | 短歌/折句/あいうえお作文
ミニマムなソーダの中に賽を振る
作者は夢をインディゴに染め

(折句「ミソサザイ」短歌)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日曜のばあちゃん

2020-04-18 21:20:00 | 忘れものがかり
日曜日はいつも他と違う
隅っこに追いやられている
赤く色づいている
担当者がいない
のんちゃんがおやすみ
手数料を取られる
ドアが閉ざされている

いいな ばあちゃんはずっと日曜日で
(僕はばあちゃんの子供時代を知らなかった)
いいな 学校がなくて

いつもばあちゃんは一人で畑に出ていた
日が暮れて帰ってくると人形のように座っていた
怒ったとこなんて見たことがない
何があっても笑っていた


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

背中を押すパワー

2020-04-18 06:40:00 | 忘れものがかり
 どうしても箸が進まない。
 そのような状態にはまる時がある。
 前回の食事からは十分な時間が経過している。あれこれ思考を巡らせて、ずっとキーボードを叩いていた。だけど、胸がいっぱいだ。今日は駄目な日かもしれない。不安を引きずったまま、弁当箱の蓋を開ける。
 中から現れた肉と玉葱には、黄金の味がかかっている。
 重々しい箸を、その一切れにつけてみる。

(ああ、そうだ。これだ)

 気がつくと休みなしに箸が動いている。
 黄金の味によって動かされている。
(あの不安は何だったのだろう)
 不安だから助かったのかもしれない。不安だからこそ今がうれしいのかもしれない。
 考えてみればいつもそうだ。
 何もできなくなったという時にそれは決まって現れて、何かをさせるようにするのだ。
 そんな不思議な力によって私は生かされているようだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする