眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

屋根の上のライブ

2013-09-24 00:27:32 | 夢追い
 兄がライブを開催することに決まった。
「えっ、屋根の上で?」
 お客さんが屋根の上で見るのではなく、兄が屋根の上で歌うのだった。
「お金取るの?」
 1人300円取るのだという。
「有難いねえ」
 お金を払ってまで来てくれる人がいる。家族みんなで、有難いと言い合った。実際に兄が歌い始めると近所の人が誘い合って集まってきて、草の上に腰掛けて兄の歌を聞き始めたのだった。3曲を歌い終えて、兄の喉の調子も順調に上がってきた。機材を抱えた父も、音量レベルを調節したり、カメラの方向を変えたりと大忙しだ。
 すべてが順調に回っていると思えた頃、突然、兄の歌声が聞こえなくなった。それは父のせいだった。

(チャンネル変えたら駄目じゃないか)
「お父さん!」
 機材の方を向いていた父がようやく異変に気がついて、リモコンを手にした。すぐには復旧しない。
「入力切替!」
 父に向けて叫んだが、なかなか父に指令が届かない。ついに父からリモコンを奪い取って、入力切替ボタンを押した。画面が切り替わる。それでも兄の歌声は復活しなかった。最初の設定とどこか違っている。早く元に戻さなければ、わざわざ兄の歌なんかを聴きに足を運んでくれた近所の人たちに申し訳がなかった。
「チャンネルなんて変えるからよ」
 姉(や母や誰か)がそう言って過去のことを責め出すことを恐れて、理論を超越したボタンの連打が始まった。そうすることで得体の知れない問題が解決するということも、稀にある。動揺は広がっているはずだが、客はまだ帰らない。
「兄ちゃん、シャウト!」
 困った時は、シャウトだよ。


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