眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

さよならの予感(pomeraの異音)

2020-05-21 13:11:00 | 【創作note】
コーヒーの表面に
わっとミルクが滲んで
やがて現れる1枚の絵
それが僕

たまたま開いた小説の
1ページの中の3行目
それが今日

「かけがえがない」
と誰かが称える

「どこにでもある」
とまた誰かがこぼす

ん? どうなん?


出窓の前には鉢植えが置いてある
そこは一つのサイドテーブルだ
取り壊された建物は
新しくお弁当屋さんになろうとしている

国道を走る車をずっと眺めていた
絶えず動く風景を見ていることは
なんて気楽なことだろう

色や大きさ
速度や車間距離はみんなバラバラだ
しばらく間が空く時は信号の周期だろうか
大型バス
続いてバイクも

代わり映えしないとみることもできるが
変わり続けているとみることもできる
どこを切り取ったとしても
全く同じ絵にはならないだろう

動かしている者が人であるとするなら
急ぐ者もあれば楽しむ者もあるのだろう

ファストフードの2階が
今夜の僕の運転席だ

pomeraよ 早くエンジンをかけて


「ふりだしにもどる」
またこれか……

2時間かけてあたためたモチーフが
夜をまたぐと冷え切っている

「何もない」
自身の中に価値(愛)が見出せない

たかが一つの夜なのに


調子のいい時は
どんどんどこかに行きたくなる
どこまでもどんどん行きたくなる
調子に乗ってどこまでも
みんな忘れて行きたくなる

あの調子はどこに行った?

放っておいてもどんどんあふれてくるような
あの素敵な調子はどこに行った?

調子は待っても現れない
調子は呼んでも戻ってこない

お調子者が!

お前なんかだいっきらいだ


膝の上にpomeraをのせて
あなたは待っていた

「何も始まらないよ」
「えーっ? 今日からじゃないの」

きっと思い違いをして
あなたが見つめるスクリーンは
pomeraの空だった

「あなたから打ち込まなければ」
「私から?」

「あなたはアスリートになるんだ!」
「私になれるだろうか」
(そんなつもりもなかったのに)

「あなただからなれるんじゃない」
「私、走ったこともない……」

「あなたにはpomeraがいるのだから」


書き出した詩に蓋をして
石を載せて寝かせておく

誰の目にも触れない
冷たい場所に歳月は積もり

ああ たしかここにもあったな……

ふと思い出し
懐かしい恋情がこみ上げるように
取り戻したいものがあふれてきたら

その時こそ君が詩を書くべき時だ

さあ 重たい石をどけて
詩を解放せよ!


カチカチと内部で音がする
つないでいた何かが
離れ始めている

(永遠はない)と隣人が教えてくれた

違和感なく僕のタッチを受け入れている
オー pomeraよ
きっともうすぐさよならなんだ

最後のタッチは
明日にも
次の瞬間にも

やってくるのかもしれないな


書かずにはいられない
書いても進まない
書いても書いても
どこにもたどり着かない

「書いてどうするの?」

脳裏に再現される兄の問いかけ
(あなたはどうして書くのだろう?)
(あるいはどうして生きるのだろう?)

乗り越えて、駆け抜けて、手に入れて、
実らせ、倒し、クリアして、次のステージへ……
そのような手応えが
このゲームにはみつけられない


どうせ終わりだとばかりに
暖房は切られている
コーヒーは底を突き
少年も猫も通らない

警備員が近づいてきて
閉店時間を予告する

「あと少し」

寂しくなる時間に
ときめくものがある

ここで もう一編の詩を







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