折句ラッシュ・クリスマス

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、縦読み
クジラうえリクエストした水族館マダイが歌うスローバラード、クリスマス

ゆずるの裏返し

2009-08-25 18:57:49 | 狂った記述他
「涙ばかりが出るよ。
それは、あくびばかり出ているせいでもあるが」
賢者は、言った。

「じゃんけんで譲り合っている人の話を聞いたことがあるかね?」

お先にどうぞ
そちらがどうぞ
あなたがどうぞ
いえいえどうぞ
そちらからどうぞ
いえいえそちらからどうぞ
いえいえどうぞそちらからどうぞ
いえいえそちらからどうぞそちらから
いえいえどうぞそちらからどうぞどうぞ

「というわけでね」
賢者は、お茶を口に含んだ。
茶柱が、一本立っていた。
おかげで、主題は茶柱に移る。

それでついにじゃんけんの話は聞けなかったのだが、別にどうでもいい。
話が途中で聞けなくなってしまうことは、よくあることだ。
気になるような気にならないような、無数にあるそういうものに含まれるもの。
最終回だけ、見逃したことはないのかい。


「黄金時代はあったのかい?」
ケルベロスが口ほどにものを言ってきた。
「誰の?」
「何が?」
「黄金時代」
「どうして?」
「キミが訊くから」
「何時代?」
「黄金」
「どんな色?」
「黄金」
「いい時代?」
「きっと」
「どうして?」
「知らない」
「知らないの?」
「知ってる」
「知ってるの?」
「知らない」
「知らないの?」
「何を?」
「黄金時代はあったのかい?」
「思い出したの?」
「思い出したの?」
「キミは?」
「キミは?」
「何を?」
「キミってへんなの!」
そう言って、ケルベロスは去って行った。


15年後。
賢者は、同じ話を始めた。その時は、忘れてしまっていたが、後になりそれが同じ話だったと思い出したのだった。
「というわけでね」
賢者は、お茶を口に含んだ。
茶面には、茶柱一本と立たない。
おかげで、主題はどこにも移らない。

「譲った方が勝ったのだよ。
 不思議なものでね」

「不思議でしょうか?」

「譲るのだよ」
賢者は言った。

「100歩譲る。500歩譲る。
いやいや。もっと譲ってごらん。
余裕ができるじゃないか。
2500歩譲ってみようかね。
そうすれば、私は死ぬかもしれない。
だけど、いつでもその覚悟はできているのだ。
譲る覚悟はできているのだ」
賢者は言った。



「いつも死ぬことを考えているのですか?」


「片隅に 留めているのだ」
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