「どうでしたか」
「やっぱり難しかったよ」
「お疲れさまです」
「ああ。でもたまには自分で買い物もしないとな」
「そうですね」
「何でも運んでくれるのは便利だけど」
「便利すぎてお困りですか」
「困るばかりか怖くもある」
「それはどんな恐怖でしょうか」
「みんな忘れてしまいそうで」
「なるほど」
「手に取ってみると玉葱は重みがあったよ」
「どんな玉葱でしたか」
「とても新しい玉葱だ」
「新しい?」
「箱の中に新しい玉葱が詰まっていたよ」
「それはどのようでしたか」
「渡り鳥のようだったよ」
「それは大変でしたね」
「ああ。手にしても手につかない」
「逃げて行くのですか」
「自分で決めるというのが難しいんだな」
「はい」
「周りの人も迷っているようだった」
「大変な売場のようです」
「戸惑うばかりだよ」
「どれに決めましたか」
「これだというのに決めたよ」
「ベスト玉葱をみつけたのですね」
「そうでもないよ」
「そうですか」
「これだと言う時にはもう玉葱を見ていなかったからね」
「それ以前に見ていたのですね」
「決めたのではなくあきらめたのかもね」
「なるほど」
「だが、手にしたからには作らねば」
「はい。早速レシピを出しますね」
「ああ。明日でいいよ」
「寝かせますか?」
「そうした方がよさそうだ」
「では。そうします」
「ありがとう。マナティ」
「それでは。おやすみなさい」
「おやすみ。マナティ」