水神様の使いっ走り(資料編)

水問題ブログ「水神様の使いっ走り」のサブポケット2です

知事への便りの返事

2010-09-14 13:03:21 | Weblog
県からお返事がきました。

東電素案は南魚の灌漑用水のみを考慮していることを 課長は理解されてないのだと思う。
東電素案は一企業の一案であって、放流試験をするなら、この素案が南魚の灌漑用水だけを考慮している片手落ちだから、同時期に開発された清津川での灌漑用水も含めて素案を作り直して試験するのが、県のスタンスであるのに・・・東電素案は清津川下流を無視した発電のための素案なのに・・・

しかも、5年を過ぎても東電素案のまま放流を続けていることの説明は何もない。

この課長さん、大熊先生の教え子さんなら、両流域がどうなっているかご存じのはず。もう少し理解を深めて頂けると思っていたのに・・・


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みなづき様              平成22年9月13日

         新潟県土木部河川管理課長 田辺敏夫


 お便りをお寄せ頂き、ありがとうございます。
 みなづき様からのお便りに対して、知事からお返事するよう指示がありました。

 この件につきまして、担当課長である私からお答します。
 東京電力の湯沢発電所による清津川から魚野川への分水問題につきましては、旧中里村長と南魚沼市長からの要請により、平成17年度より県が事務局となり、清津川・魚野川流域水環境検討協議会が設立され、関係者間で議論が進められてきたところです。
 この協議会は、当面は東京電力素案の取水制限流量を試験放流し、各調査地点において、調査項目を満足させる流量となっているか検証を行うこととし、その検証は、5年程度行うこととして進められて来ました。
 協議会では、これまでの議論の中で、清津川流域の委員と魚野川流域の委員の皆様からそれぞれの地域を代表した発言もあり、平成17年9月の第2階協議会では、みなづき様にもご出席いただき公開ヒアリングを実施するなど、地域の実情にも耳を傾けてまいりました。
 しかし、この問題は、大正12年の湯沢発電所の運転開始以来、90年近くの長きにわたるものであることから、清津川及び魚野川の水環境及び水利用が調和し、両流域の地域合意の形成が図られることが不可欠と考えており、その解決には、両流域の皆さんがお互いの立場を理解したうえで、妥協点を探っていくことが必要と考えております。
 県としましては、この協議会の議論を踏まえたうえで、流域住民の生活環境等の地域の実情を一番よく理解している地元自治体と調整を図りながら対応してまいりたいと考えておりますので、ご理解のほど、よろしくお願い致します。
 今後とも県政に対するご意見、ご提言をお聞かせ下さるようにお願い致します。


知事への便り

2010-09-14 12:59:55 | Weblog
清津川・魚野川流域水環境検討協議会での合意だった5年間の東電素案の試験放流が終わっても、何の説明もない県に便りを出した。本当にこの問題を解決する気があるのだろうか・・・

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新潟県知事 泉田裕彦様                平成22年8月5日

十日町市(旧中里村)在住のみなづきと言います。
県河川管理課では清津川・魚野川流域水環境検討協議会を開き、5年間にわたり両河川の調整を行ってきました。私たちは期間中、さまざまな放流試験がされ、審議が深まるものと期待しましたが、結果、東電のわずかな放流案を5年間流し続けただけで、清津川下流の環境改善には程遠いものでした。夏は河原が渇き、秋は名勝清津峡に来られた観光客の苦情を聞き、冬は雪崩で閉塞する危険が伴うのです。にもかかわらず協議会では南魚沼の農業者の強欲だけが通り、灌漑期以外にも放流量の増量は一滴も実現しませんでした。約束の5年間が終わって現在も東電素案のままです。県のリーダーシップは全く感じられませんでした。
清津川下流にはいまだに水道すらない集落が複数あります。うちも夕立のたびに渓流水が濁り、観光客にも年寄り子供にも濁り水を飲ませるしかありません。勿論、下水道も消火栓も消雪パイプもありません。本来、清津川の伏流水を使っていた地域が発電に供したため水源をなくし、発展の芽を摘まれた結果です。基本的なインフラが整っていない地に若者が定着するわけはなく、この5年間にも小学校は廃校になり、集落のコミュニティ維持が難しくなりつつあります。
一方、南魚沼は上下水道・消火栓・消雪施設・井戸水も使え、三国川ダムの利水容量にも余裕があります。魚野川は流量が豊かで湯沢発電所が故障で停止している間、清津川の水がなくても水不足は起こりませんでした。もし、本当に灌漑取水に支障をきたすなら、補給口や農業用の池など方法はいくらでもあります。
湯沢発電所は東電全体の総発電可能量の0.03%に過ぎません。水量が多い融雪期は発電取水しても、せめても夏、秋、冬は清津川に水を戻して私たちを助けてください。私たちは泥水を飲む獣ではありません。どうか県民として扱ってください。小さい清津川から大きな魚野川に分水するのは間違いです。
河川法36条の知事意見聴取において、既にこの5年間は事後承諾になっても、今後の許可は融雪期以外は同意し難いと条件付けてくださることを強くお願い致します。

不安払拭の一手

2010-03-10 21:46:28 | Weblog
5年間試験放流をする間に、JRと十日町市がお互いに信頼できる関係になることを願っている。

それでも、水利権の継続性は厄介なハードルだと思う。

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新潟県知事 
泉田裕彦 様  




   十日町市とJR東日本の「共生水利権」実現に関する意見書 
 
               
十日町市ではこの3カ月間、JR東日本の水利権申請に関し、市民の合意形成に向けた真剣な取り組みが、市長・行政を中心として、市民協議会、信濃川のあり方検討委員会、JR水利権申請専門部会等で進められてきました。またこの間、4度の市民懇談会や市長への便りなどで多くの市民の意見が寄せられました。

市長への便りで寄せられた約8割の市民の意見は、JR東日本との共生を望むものの、川は川らしくとの想いが非常に強いものでした。これは、信濃川が本来の川に戻ってほしいとの民意の表れです。長年水無し川を見続けて運動を展開してきた十日町市民からは、「一旦許可された水利権が、取り返しのつかない未来につながるのではないか」、「どの程度の放流量で川が川らしくなるのか」、「放流試験は実際にやってみなければわからない」など、危惧を抱く多くの声が聞かれます。

このような市民の不安を払拭するため、以下の事項を提案させて頂くとともに、これを明文化することを強く要望いたします。知事におかれましてはこの経緯をご考慮の上、法第36条の意見聴取に臨まれますことをお願い申し上げます。

1. 水利権の法的性格とゼロベースに戻す協定の必要性
これまで数々の水利権訴訟が行われ、その判例における水利権の法的性格は次の通りです。
(1)流水占用とは、ある目的を達成するため、必要限度内で公共物たる河川流水を排他的かつ継続的に使用すること。
(2)許可された流水の占用が他から侵害された場合、その水利権は法律で保護される。
(3)許可期間はその満了を持って当該許可を失効せしめるのではなく、許可の妥当性や遊休水利権の排除などについて一定期間ごとに河川管理者が再検討する。

以上から、水利権は財産権とほぼ同等の扱いを受けるもので、予定されている5年間の試験放流期間後も、水利権者に廃止の意思がない限り法的権利は継続されます。従って、市民の不安を除くためには、試験放流期間終了時に一旦ゼロベースに戻す協定が必要です。

2. 前例がない水利権確認の必要性
上記した通り、水利権の継続性を認めない旨を水利使用規則で明記した水利使用許可は、前例がありません。従って、このような水利権が実際に可能かどうかを河川局水利調整室にて確認し、もし地方整備局の裁量権で許可が可能であるなら、確認文書を作成し公表すべきです。

3. 試験放流申請であることの明文化
十日町市とJR東日本は、基本協定において、相互の信頼によって共生が成り立つことをまず確認しなければなりません。次に、当該5年間の水利権はあくまでも放流試験のためのもので、JR東日本は期間終了後に権利の継続性の主張をしないことを盛り込むべきです。また、双方にとってより良い放流量を模索しつつ、合意後もJR東日本の取水を認める市民合意を十日町市が堅固にする旨を明文化すべきと考えます。

4. 試験放流期間の調査と評価
試験放流期間、誰がどのようにして信濃川の河川環境や生態系や景観などを調査し、結果をいかなる形で評価するか、協定書で明文化する必要があります。

5. 試験放流終了後の申請
5年間の試験放流終了時の申請についても双方合意の上で行ない、さらに試験放流が必要であれば、期間を限定してこれを行なうべきと考えます。

以上、市民有志の意見として提出いたします。 


2010年 3月 10日 





                新たな共生水利権を求める市民有志 
          

十日町新聞への投稿

2010-03-05 15:18:32 | Weblog
1日のJR問題市民対策協議会について十日町新聞に投稿しました。
(3月5日掲載)

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【信濃川問題】協議会の透明化を!


 昨年、JR東の清野社長が謝罪後、市長は発電取水と共生する道を示し、信濃川問題は大きく舵を切った。

 市長が加わっている「JR東日本発電取水総合対策市民協議会」(非公開)に続いて、その下に会の幹事メンバーのような「信濃川の在り方検討委員会」(原則公開)が 設置され、さらにその下に実務メンバーの「JR水利申請専門部会」(非公開)が作られた。それから、より広く民意を集めるために、市内4か所で「信濃川の在るべき姿市民懇談会」を開いて市長が説明、意見交換をし、更に「市長への便り」で市民意見を募集した。
 短期間ではあったが、これだけやれば多様な意見があることや、どんな理由で放流試験量が決まるかなど、信濃川の姿がおぼろげにでも市民に理解できるはずなのに、現実には何がどう話し合われているのかほとんどの市民は知り得ていない。

 昨年、公開で政府が行った事業仕分けは、今まで見えなかった税金の使われ方が国民の目の前で論議され、仕分け後もいろんな反論が出て、丁々発止のやり取りが政治への関心を高めた。国民一人一人が公開論議を楽しみ、考え、政治を身近に感じた。

 私は地域のことを話し合う協議会は(個人情報を保護しなければいけない部分を除いて)原則公開にすべきと思う。私自身、今までに県や市の協議会や審議会に加わった時、まずはじめに会を公開にするか否かを問うことにしていた。嘱託され委員をしても議員のように市民の付託を受けたわけではないので、判断の限界を感じていたからだ。市民の大事な案件を話すときに市民が一緒に聴いていてくれることは委員の公明だと思う。「公開にすると自由闊達な意見が言えない」というのは保身ではないのか。


 先般の対策協議会の冒頭で市長が会の公開を求め採決が行われたと聞いた。残念ながら否決され、共生の行方は今も市民には見えないままである。会長である市長が市民の知る権利を尊重し実行しよう!と提案したのに、それより重い非公開審議の理由を委員は説明できるのだろうか。信濃川は水利使用者や漁業権者だけのものでない。川の在りかたは地域全体が次の世代のために責任を持って考える問題だ。合意形成の過程が透明にされ、市民が身近なこととして理解できる協議会運営を願う。



今後の治水の在り方に関する意見投稿

2010-02-17 19:26:32 | Weblog
国交省では今後の治水の在り方に関する有識者会議を行っている。


ここでは一般からのパブコメ方式で意見募集をしている。

http://www.mlit.go.jp/report/press/river03_hh_000215.html

テーマは「幅広い治水対策の具体的提案について」と「新たな評価軸の具体的提案について」です。

じゃあ、私も意見出してみようかな・・・と。

下記の意見を送りました。

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1) 幅広い治水対策案の具体的提案について

①これまでの治水対策が限定的な効果しかないことは、2004年に新潟で起こった7.13水害をみるとよく理解できる。刈谷田川では100年確率(日雨量360mm対応)でのダム治水対策ができており、五十嵐川では2基のダムは完成していたが下流の河道整備が進まず100年確率(2日間雨量340mm)計画の途中だった。7.13水害の降雨は日雨量400mmを超え、ダムによる治水効果は総洪水量の4%~20%ほどで、ほとんどの降雨が濁流となって狭い河道に集まった。人口の密集したところで堤防が決壊して避難する時間がきわめて短かったため高齢者を含め12人が犠牲となった。この災害から学べることは

●ダムに頼った治水は、計画内の雨量がダムの集水域に降った時のみしか効果がないが、実際の降雨は量的にも降雨域もその通りには降らない。
●下流では「ダムがあるから大丈夫」という誤った認識があったため、避難や水防でのソフト面の対策がおろそかになった。
●堤防を越えて溢れ出すゆっくりした氾濫でなく、人家の多いところで一気に堤防が決壊したため家屋が跡形なく破壊されるほどの氾濫流が流出した。

ということで、これに対しては次のように治水の在り方を変えるべきである。

●ダムの治水効果を過大視せず、どんな降雨にも最低限、人命の安全を守る対策をするべき。
●ダムによる治水の限界を知り、日頃から避難や水防の意識を高めること。
●溢れても決壊しない堤防強化と人家の少ないところで越流させる仕組みをつくること。万一決壊しても氾濫流を減勢できるよう人家との間に河畔林帯を整備すること。(被害の軽減を図る対策をすること)

②これまで河川整備基本計画で用いられている確率計算による過大な目標値での治水計画は、永年完成できないままに人命を危険にさらすことになりかねない。現実に即した柔軟な数値見直しを行うこと。堤防強化により余裕高までの流下を認めること。

③信濃川中流域のように狭窄部に発電ダムがあり、その下流部分が中抜け状態に県管理区域になっていることは、上下流を通した視点を必要とする治水政策の足かせになり、計画の遅れになっている。治水事業に充てる予算にも大きな差があり、県管理部分はほとんど対策がなされていない。行政の一貫管理と治水安全上影響のある水力発電施設についても重要視して、発電事業者にも協力をさせて安全度を高めること。

2) 新たな評価軸の具体的提案について

●ダムの評価では、治水・利水効果だけの過大評価をせず、自然環境へのマイナス影響(河床や海岸線の変化・多様な生態系の損失等)も定額化して比べること。また、ダムの維持管理費(地滑り対策も含む)・堆砂の対策費用も算入すること。
●堤防強化策では、人口比・土地利用の状況から、強度(費用)の違う複数の工法を組み合わせて検討して評価すること。
●河畔林帯では、自然環境や安らぎ空間としての利用などを定額化して参入すること。
●氾濫を許容する地域では、地価や土地利用に影響があることが予想されるので、それを補う制度にかかる費用も評価に加えること。





北陸地方整備局長への要望

2009-12-05 22:09:48 | Weblog
北陸地方整備局長 様
                              

   東京電力㈱湯沢発電所の水利権取り消しを求める要望書


清津川に係る東京電力㈱の3発電所の水利権期間更新は平成17年12月31日に期限を迎えましたが、東電の法手続き遺漏や目的外使用を隠ぺいしての申請などが発覚したことにより、貴局が申請書の再提出を命じ、前回期限が切れて4年近く過ぎた現在も審査が続けられております。

湯沢発電所の維持放流量については、現在、県土木部河川管理課による清津川・魚野川流域水環境検討協議会が行われておりますが、十日町市の放流案も認められず、東電素案による放流量のまま試験5年目に入りました。この間、次々と東電の不正が明らかになり、私たちはこの水利使用がある限り根本的な問題の解決にはならず、流域変更が続くことがかえって今後の両流域にとってマイナスではないかと考えるようになりました。僅かな放流量の調整をしても清津川下流の抱える問題は解決するわけでなく、県民間のわだかまりは残ります。

下記は、この水利使用をなくした方が良いと考えるに至った事由です。


1. 東電が80年にわたり行っていた目的外使用(灌漑用水への分水)は、清津川下流に水利権を持つ農業者に対して、明らかに背信であること。中里村長が在籍16年間に灌漑取水が困難になり、東電に対し頭を下げて9回も放流要請をしていたにもかかわらず、他流域では水利権なく清津川の水で全く不足なく米作りが行われていたことは納得できない事実。

2.上記のような水利権のない分水が複数個所あり、東電は許可された取水量を3割近く超える超過取水の報告を行っていた確信犯であること。

3.東電のこれまでの不正行為については是正だけで、全くペナルティーがないこと。
また、県の協議会の席を借りての簡略な謝罪だけで、東電から清津川流域の住民に説明、謝罪がないこと。

4. 魚野川流域の灌漑水利権の許可は安全側を見て、清津川からの導水を差し引いた魚野川流量だけでも取水可能として許可されていること。または、発電所が停止した場合も本流からの取水口が併設されていること。

5. 近年のもっとも渇水日であった平成6年8月13日の六日町流量から、西部開田取水口地点の流量を算出したところ、清津川導水が皆無であっても灌漑許可量が取水できること。

6. 実際に、平成20年の2月中旬から5カ月間にわたり、湯沢発電所が故障のために停止や部分取水になり、清津川導水が皆無または半分量になったが、魚野川での取水困難や流量の不足は生じていないこと。(この期間は魚野川農業者が「最も取水が困難になる時期」と主張している期間と重なる)

7. 清津川・魚野川流域水環境検討協議会の流量調査により、魚野川での多量の伏没が明らかになったこと。石打発電所放水口より下流の伏没量が清津川導水量を上回っており、魚野川の水不足が清津川導水の有無にかかわらず起こる可能性がある。魚野川では河川の特性を踏まえた取水モラルを作るべきである。

8. 三国川ダムの利水貯水量に余剰があること。魚野川支流の三国川ダムは治水・利水・発電のための多目的ダムとして国の直轄事業として造られた。西部開田の水路延長は16kmと長く、三国川合流地点より下流からの取水口を増設すれば、渇水時に充分な補給取水ができる。

9. 県のウォータープラン21においても魚野川ブロックでは水不足は生じないとしていること。農業用水の需給見通しでは、渇水年においても「供給可能量―需要量」は2005年にプラスに転じ、その後も増え続け水余りとなる。

10. 湯沢発電所は施設が老朽化し、故障による取水停止がいつ起こるか分からないこと。同発電所は完成から87年が経過し、東電自身が古い施設であることを認めている。そのためしばしば不具合が生じ、昨年もバルブが欠損し、スペアパーツがないため鋳型から作るという作業をしたことにより5ヶ月間も平常運転に復帰することができなかった。一民間企業の老朽化した施設に頼らなければ、魚野川流域の農業が成り立たないとするなら、早急に取水の方法を見直し、自水系内で安定取水できるようにすることが南魚沼にとっても必要である。

11. 湯沢発電所の当初許可から95年が経過し、その間にも下流合意のない増設や増取水が繰り返されて、下流地域の発展の芽を摘んだまま取水が続き、流域間格差が大きいこと。清津川下流には最も基本的な生活基盤である水道すらない集落が複数ある。これら集落では昔は清津川の伏流水を利用していたが、現在は不安定な渓流水に頼らざるを得ないため、慢性的に水の濁りや不足に悩まされている。管理費用も個人負担であり、豪雪地であるため冬期間の断水には解決策がない。清津川流域では地下水から温泉成分やヒ素が検出されるため飲用として利用が困難である。一方、魚野川流域ではほとんどの地域で上下水道が完備されており、消火栓や融雪・流雪に不足なく水利用されている。(東電が目的外の灌漑分水をしていた芝原集落でも、水道・消火栓・消雪パイプが設置されている)

12. 30年前の期間更新時から比べると電力事情が大きく違っていること。清津川上流には湯沢発電所の100倍の発電量をもつ奥清津発電所(J-パワーの揚水発電所)ができ、稼働率は20%以下でほとんどの期間休止している。ベース電力とピーク電力の違いがあるとはいえ、湯沢発電所を廃止しても電力供給の不足が生じるとは考えられない。

13. 現在行われている東電素案による放流試験において、清津川下流の河川環境の改善がないこと。 東電素案による維持流量は、11月~3月までの流量はわずか0.334m3/sに過ぎず、豪雪地の渓谷ではしばしば雪崩による河道閉塞が起こり、川底の石が露出して乾いたままの状態になる。更にその後、一気に出水し危険である。また、秋の観光シーズンの流量も0.537m3/sと少なく、上信越高原国立公園・名勝天然記念物清津峡の景観改善にはなっていない。イワナなど魚類の産卵期でもある秋期の流量は資源保護のために適しているとは考えられない。

湯沢発電所の流域変更は、私たちの次の世代にまで不条理な地域間格差を強いるものであり、僅かな放流量では将来的な問題の解決には至らないため、水利権の期間更新時に根本的な問題の解決を望んでおります。落差が稼げると言うだけの理由で始まった流域変更は下流の人権を疎かにしてまで続ける道理はありません。

つきましては、現在審査中の湯沢発電所期間更新につき、許可されないよう要望するものです。


                   
                    平成21年11月30日
                    清津川流水問題懇談会

三重県からの返信

2008-07-15 16:19:55 | Weblog
7月5日に三重県知事に送った書信に返事がきた。

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平成20年7月14日

みなづき 様

       

 このたびは、ご意見を頂戴し、ありがとうございます。

近畿地方整備局は、去る6月20日に淀川水系河川整備計画案を公表し、即日、関係する2府4県に意見照会が行われました。

国が整備計画案を提示されたことに関しましては、流域の市町村や住民、流域委員会のこれまでのご意見も踏まえ、河川管理者として総合的に判断されたものと受けとめています。

 今後、県として計画案の内容を検討するとともに、関係市からも意見を聴取し、三重県としての意見をとりまとめていきたいと考えています。


三重県県土整備部河川・砂防室

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総合的に判断されたもの???って・・・・国に頭押さえられてる県の職員ならではの表現ですね。



近畿地方整備局への書信

2008-07-05 15:37:08 | Weblog
国土交通大臣
 冬柴 鐵三 様
国土交通省近畿地方整備局
局長 布村 明彦 様
                   
                            平成20年7月5日
 


                       

       淀川水系流域委員会の意見を聴いてください!



私は新潟県の信濃川水系清津川流域に住む者です。

かつて清津川には、国交省直轄事業の清津川ダム計画があり、信濃川上流部に幾つものダムを建設し、洪水時に下流部での水位を下げるという計画の一つとされていました。 その規模は総貯水容量一億七千万立方メートル、建設費二千五百億円(平成10年度の算定額で実際には五千億円と言われた)の大きな多目的ダムでした。

信濃川水系には一貫した流域委員会が設置されておらず、北陸地方建設局事業評価監視委員会は、学識者や経済人など第三者からなる諮問機関(清津川ダム専門委員会)を設けダム計画について検討させました。専門委員会は1年間にわたり、治水利水・費用対効果を審議し、また一般住民からのヒアリングも行い、地域にとって最良の答申をするべく回数を重ねました。会は原則公開となり、多くの傍聴者が毎回その行方を見守りました。
結果、専門委員会が出した答申は、信濃川全体の治水計画において、清津川ダム建設は河川・堤防改修等他の施策と比べ順位性が低いとし、実施計画調査を中止するというものでした。北陸地方整備局はその答申を受け、計画を事実上の中止としました。

下流域の私たちは、当初計画でダムに沈むはずだったブナ林や、ダム直下になる名勝天然記念物清津峡の景観を守り、次の世代に残すことができたことを心から喜びました。


貴局の設置された淀川流域委員会は、全国でも進んだ取り組みとして河川法が正しく運用されているものと注視しておりましたが、このたびの約束破りの見切り発車はどうしたことでしょう。これでは先進例どころか、国が専決で行っていた時代に逆戻りで、河川法第16条二は何のためにあるのでしょうか。

ご存知の通り、新潟県では平成16年7月豪雨の洪水で、大きな被害がありました。この7.13水害では、信濃川支流の堤防が決壊し、逃げ遅れた体の不自由な高齢者が命を落とすことになりました。支流上流にあるダムは想定範囲の雨には一定の治水効果はあっても、未曾有の豪雨に対しては無力に等しく、「かえって下流の水防意識を低下させることになった」、「破堤しないよう堤防強化策がとられていれば、たとえ溢れても人命に係る被害は免れたのでは?」との声もあります。ダムに頼った治水は、流域に住む人の危機意識を低くし、川と人の関係が希薄になりかねません。流域の治水は流域自治の考え方で進めるべきで、そのための河川法改正であったと思います。

どうか貴局が発表した淀川水系河川整備計画案を取り下げ、流域委員会の意見を真摯に聴いてください。流域委員会と貴局の関係改善をはかり、国民に開かれた河川行政をされることを願っています。


                                 以上
 




熊本県知事への手紙

2008-06-11 13:41:13 | Weblog
熊本県知事 蒲島郁夫様

                      平成20年6月10日


私たちは、新潟県信濃川水系清津川流域の住民です。

清津川にはかつて国交省直轄の清津川ダム計画がありましたが、湯沢町の3集落と国立公園に指定されている貴重なブナ林が水没すること、下流の名勝地清津峡に及ぶ影響など地元では反対の声があがり、環境重視に大きくシフトした時勢の中、2002年中止答申が出されました。その頃より、貴県の荒瀬ダム撤去の取り組みには注目し、「他県では撤去されるダムもある時代に、貴重な自然を損なう新たなダム建設は、時代に逆行している」と思っていました。

しかしこの度、知事に選ばれた貴殿が、その荒瀬ダムの撤去凍結を発表されたとお聞きし、たいへん驚いております。日本で一番先にダム撤去という先進的な選択をされたはずの熊本県がどうしたのでしょう。

 清津川では、国のダム計画中止後、上流で取水し流域を変更して発電をする東京電力湯沢発電所の期間更新をめぐり、住民が引き続き運動をしています。ダム反対運動を通じ、少しでも誇れる川を次の世代に残したいという環境意識が高まり、発電と河川環境のバランスを企業に一方的に決めさせるのでなく、流域の声を反映して決めたいと願っています。県営とはいえ、その意味でも荒瀬ダム撤去は、僅かな発電と河川環境を進歩的にジャッジした例と羨ましく見ておりました。

 発電取水による河川環境悪化で長年苦しんでいる流域の住民として、どうか、貴殿が荒瀬ダムの撤去凍結を再考し、流域に住む者の声を反映した英断を下されることを心よりお願い申し上げます。


 

生物多様性基本法

2008-06-01 13:09:35 | Weblog
生物多様性基本法 全文

目次
 前文
 第一章 総則(第一条―第十条)
 第二章 生物多様性戦略(第十一条―第十三条)
 第三章 基本的施策
  第一節 国の施策(第十四条―第二十六条)
  第二節 地方公共団体の施策(第二十七条)
 附則

 生命の誕生以来、生物は数十億年の歴史を経て様々な環境に適応して進化し、今日、地球上には、多様な生物が存在するとともに、これを取り巻く大気、水、土壌等の環境の自然的構成要素との相互作用によって多様な生態系が形成されている。
 人類は、生物の多様性のもたらす恵沢を享受することにより生存しており、生物の多様性は人類の存続の基盤となっている。また、生物の多様性は、地域における固有の財産として地域独自の文化の多様性をも支えている
 一方、生物の多様性は、人間が行う開発等による生物種の絶滅や生態系の破壊、社会経済情勢の変化に伴う人間の活動の縮小による里山等の崩壊、外来種等による生態系のかく乱等の深刻な危機に直面している。また、近年急速に進みつつある地球温暖化等の気候変動は、生物種や生態系が適応できる速度を超え、多くの生物種の絶滅を含む重大な影響を与えるおそれがあることから、地球温暖化の防止に取り組むことが生物の多様性の保全の観点からも大きな課題となっている。
 国際的な視点で見ても、森林の減少や劣化、乱獲による海洋生物資源の減少など生物の多様性は大きく損なわれている。我が国の経済社会が、国際的な密接な相互依存関係の中で営まれていることにかんがみれば、生物の多様性を確保するためには、我が国が国際社会において先導的な役割を担うことが重要である。
 我らは、人類共通の財産である生物の多様性を確保し、そのもたらす恵沢を将来にわたり享受できるよう、次の世代に引き継いでいく責務を有する。今こそ、生物の多様性を確保するための施策を包括的に推進し、生物多様性への影響を回避し又は最小としつつ、その恵沢を将来にわたり享受できる持続可能な社会の実現に向けた新たな一歩を踏み出さなければならない。
 ここに、生物多様性の保全及び持続可能な利用についての基本原則を明らかにしてその方向性を示し、関連する施策を総合的総合的かつ計画的に推進するため、この法律を制定する。

 第一章 総則
 (目的)
第一条 この法律は、環境基本法(平成五年法律第九十一号)の基本理念にのっとり、生物の多様性の保全及び持続可能な利用について、基本原則を定め、並びに国、地方公共団体、事業者、国民及び民間の団体の責務を明らかにするとともに、生物多様性国家戦略の策定その他の生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関する施策の基本となる事項を定めることにより、生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって豊かな生物の多様性を将来にわたって継承しその恵みを持続的に享受できる自然と共生する社会の実現を図り、あわせて地球環境の保全に寄与することを目的とする。

 (定義)
第二条 この法律において「生物の多様性」とは、様々な生態系が存在すること並びに生物の種間及び種内に様々な差異が存在することをいう。
2 この法律において「持続可能な利用」とは、現在及び将来の世代の人間が生物の多様性の恵沢を享受するとともに人類の存続の基盤である生物の多様性が将来にわたって維持されるよう、生物その他の生物の多様性の構成要素及び生物の多様性の恵沢の長期的な減少をもたらさない方法(以下「持続可能な方法」という。)により生物の多様性の構成要素を利用することをいう。

 (基本原則)
第三条 生物の多様性の保全は、健全で恵み豊かな自然の維持が生物の多様性の保全に欠くことのできないものであることにかんがみ、野生生物の種の保存等が図られるとともに、多様な自然環境が地域の自然的社会的条件に応じて保全されることを旨として行われなければならない。
2 生物の多様性の利用は、社会経済活動の変化に伴い生物の多様性が損なわれてきたこと及び自然資源の利用により国内外の生物の多様性に影響を及ぼすおそれがあることを踏まえ、生物の多様性に及ぼす影響が会費され又は最小となるよう、国土及び自然資源を持続可能な方法で利用することを旨として行われなければならない。
3 生物の多様性の保全及び持続可能な利用は、生物の多様性が微妙な均衡を保つことによって成り立っており、科学的に解明されていない事象が多いこと及び一度損なわれた生物の多様性を再生することが困難であることにかんがみ、科学約知見の充実に努めつつ生物の多様性を保全する予防約な取組方法及び事業等の着手後においても生物の多様性の状況を監視し、その監視の結果に科学的な評価を加え、これを当該事業等に反映させる順応的な取組方法により対応することを旨として行われなければならない。
4 生物の多様性の保全及びその持続可能な利用は、生物の多様性から長期的かつ継続的に多くの利益がもたらされることにかんがみ、長期的な観点から生態系等の保全及び再生に努めることを旨として行われなければならない。
5 生物の多様性の保全及びその持続可能な利用は、地球温暖化が生物の多様性に深刻な影響を及ぼすおそれがあるとともに、生物の多様性の保全及び持続可能な利用は地球温暖化の防止等に資するとの認識の下に行われなければならない。

 (国等の責務)
第四条 国は、前条に定める生物の多様性の保全及び持続可能な利用についての基本原則(以下「基本原則」という。)にのっとり、生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関する基本的かつ総合的な施策を策定し、及び実施する責務を有する。

 (地方公共団体の責務)
第五条 地方公共団体は、基本原則にのっとり、生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関し、国の施策に準じた施策及びその他のその地方公共団体の区域の自然的社会的条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。

 (事業者の責務)
第六条 事業者は、基本原則にのっとり、その事業活動を行うに当たっては、事業活動が生物の多様性に及ぼす影響を把握するとともに、他の事業者その他の関係者と連携を図りつつ生物の多様性に配慮した事業活動を行うこと等により、生物の多様性に及ぼす影響の低減及び持続可能な利用に努めるものとする。

 (国民及び民間団体の責務)
第七条 国民は、基本原則にのっとり、生物多様性の重要性を認識するとともに、その日常生活に関し、外来生物を適切に取り扱うこと及び生物の多様性に配慮した物品又は役務を選択すること等により、生物の多様性に係る影響の低減及び持続可能な利用に努めるものとする。
2 国民及び民間団体は、基本原則にのっとり、生物の多様性の保全及び持続可能な利用のための取組を自ら行うとともに、他の者の行う生物の多様性の保全及び持続可能な利用のための取組に協力するよう努めるものとする。

 (法制上の措置等)
第八条 政府は、生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関する施策を実施するため必要な法制上、財政上又は税制上の措置その他の措置を講じなければならない。

 (施策の有機約な連携配慮)
第九条 生物の多様性の保全及びその持続可能な利用に関する施策を講ずるに当たっては、地球温暖化が生物の多様性に深刻な影響を及ぼすおそれがあること等にかんがみ、地球温暖化の防止、循環型社会の形成その他の環境の保全に関する施策相互の有機約な連携か図られるよう、必要な配慮がなされるものとする。

 (年次報告等)
第十条 政府は、毎年、国会に、生物の多様性の状況及び政府が生物多様性の保全及び持続可能な利用に関して講じた施策に関する報告を提出しなければならない。
2 政府は、毎年、前項の報告に係る生物の多様性の状況を考慮して講じようとする施策を明らかにした文書を作成し、これを国会に提出しなければならない。

 第二章 生物多様性戦略
 (生物多様性国家戦略の策定等)
第十一条 政府は、生物の多様性の保全及びその持続可能な利用に関する施策の総合的かつ計画約な推進を図るため、生物の多様性の保全及びその持続可能な利用に関する基本的な計画(以下「生物多様性国家戦略」という。)を定めなければならない。
2 生物多様性国家戦略は、次に掲げる事項について定めるものとする。
 一 生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関する施策についての基本的な方針
 二 生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関する目標
 三 生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関し、政府が総合約かつ計画的に構ずべき施策
 四 前三号に揚げるもののほか、生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
3 環境大臣は、生物多様性国家戦略の案を件成し、閣議の決定を求めなければならない。
4 環境大臣は、前項の規定により生物多様性国家基本計画の案を作成しようとするときは、あらかじめ、インターネットの利用その他の適切な方法により、国民の意見を反映させるために必要な措置を講ずるとともに、中央環境審議会の意見を聴かなければならない。
4 環境大臣は、前三項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、生物多様性国家戦略を公表しなければならない。
5 前三項の規定は、生物多様性国家戦略の変更について準用する。

 (生物多様性国家戦略と国の他の計画との関係)
第十二条 生物多様性国家戦略は、環境基本法第十五条第一項に規定する環境基本計画(次項において単に「環境基本計画」という。)を基本として策定するものとする。
2 環境基本計画及び生物多様性国家戦略以外の国の計画は、生物の多様性の保全及びその持続可能な利用に関しては、生物多様性国家戦略を基本とするものとする。

 (生物多様性地域戦略の策定等)
第十三条 都道府県又は市町村は、生物多様性国家戦略を基本として、単独で又は共同して、当該都道府県又は市町村の区域内における生物の多様性の保全及びその持続可能な利用に関する基本的な計画(以下「生物多様性地域戦略」という。)を定めるよう努めなければならない。
2 生物多様性地域戦略は、次に掲げる事項について定めるものとする。
 一 生物多様性地域戦略の対象とする区域
 二 当該区域内の生物の多様性の保全及びその持続可能な利用に関する目標
 三 生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関し、総合約かつ計画的に構ずべき施策
 四 前三号に掲げるもののほか、生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関する施策を総合約かつ計画約に推進するために必要な事項
3 都道府県及び市町材は、生物多様性地域戦略を策定したときは、遅滞なく、これを公表するとともに、環境大臣に当該生物多様性地域戦略の写しを送付しなければならない。
4 前項の規定は、生物多様性地域戦略の変更について準用する。

 第三章 基本的施策
  第一節 国の施策
 (地域の生物の多様性の保全)
第十四条 国は、地域固有の生物の多様性の保全を図るため、我が国の自然環境を代表する自然的特性を有する地域、多様な生物の生息地又は生育地として重要な地域等生物の多様性の保全上重要と認められる地域の保全、過去に損なわれた生態系の再生その他の必要な措置を講ずるものとする。
2 国は、農林水産業その他の人の活動により特有の生態系が維持されてきた里地、里山等の保全を図るため、地域の自然的社会的特性に応じて当該地域を継続的に保全するための仕組みの構築その他必要な措置を講ずるものとする。
3 国は、生物の多様性の保全上重要と認められる地域について、地域間の生物の移動その他の有機的なつながりを確保しつつ、それらの地域を一体的に保全するために必要な措置を講ずるものとする。

 (野生生物の種の多様性の保全等)
第十五条 国は、野生生物の種の多様性の保全を図るため、野生生物の生息又は生育の状況を把握し、及び評価するとともに、絶滅のおそれがあることその他の野生生物の種が置かれている状況に応じて、生息環境又は生育環境の保全、捕獲等及び譲渡し等の規制、保護及び増殖のための事業その他の必要な措置を講ずるものとする。
2 国は、野生生物が生態系、生活環境又は農林水産業に係る被害を及ぼすおそれかある場合には、生息環境又は生育環境の保全、被害の防除、個体数の管理その他の必要な措置を講ずるものとする。

 (外来生物等による被害の防止)
第十六条 国は、生態系に係る被害を及ぼすおそれがある外来生物、遺伝子組換え生物等について、飼養等又は使用等の規制、防除その他の必要な措置を講ずるものとする。
2 国は、生態系に係る被害を及ぼすおそれがある化学物質について、製造等の規制その他必要な措置を講ずるものとする。

 (国土及び自然資源の適切な利用等の推進)
第十七条 国は、持続可能な利用の推進が地域社会の健全な発展に不可欠であることにかんがみ、地域の自然的社会的条件に応じて、地域の生態系を損なわないよう配慮された国土の適切な利用又は管理及び自然資源の著しい減少をもたらさないよう配慮された自然資源の適切な利用又は管理が総合的かつ計画的に推進されるよう必要な措置を講ずるものとする。

 (生物資源の適正な利用の推進)
第十八条 国は、生物資源の有用性にかんがみ、農林水産業、工業その他の分野においてその適正な利用を図るため、生物の多様性に配慮しつつ、生物資源を有効に活用するための研究及び技術の開発並びに生物資源の収集及び体系的な保存の推進その他の必要な措置を講ずるものとする。

 (生物の多様性に配慮した事業活動の促進)
第十九条 国は、生物の多様性に配慮した原材料の利用、エコツーリズム、有機農業その他の事業活動における生物の多様性に及ぼす影響を低減するための取組を促進するために必要な措置を講ずるものとする。
2 国は、国民が生物の多様性に配慮した物品又は役務を選択することにより、生物の多様性に配慮した事業活動が促進されるよう、事業活動に係る生物の多様性の持続可能な利用に関する情報の公開、生物の多様性に配慮した消費生活の重要性についての理解の増進その他の必要な措置を講ずるものとする。

 (地球温暖化の防止等にも資する施策の推進)
第二十条 国は、生物の多様性の保全及び持続可能な利用が地球温暖化の防止等にも資することを踏まえ、多くの二酸化炭素を吸収し及び固定している森林、里山、草原、湿原等を保全するとともに、間伐、採草等の生物の多様性を保全するために必要な管理が促進されるようバイオマスの利用の推進その他の必要な措置を講ずるものとする。

 (多様な主体の連携及び協働並びに自発的な活動の促進)
第二十一条 国は、生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関する施策を適正に策定し、及び実施するため、関係省庁相互間の連携の強化を図るとともに、地方公共団体、事業者、国民、民間団体、生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関し専門知識を有する者等の多様な主体と連携し、及び協働するよう努めるものとする。
2 国は、生物多様性の保全及び持続可能な利用に関する政策形成に民意を反映し、その過程の公正性及び透明性を確保するため、事業者、民間の団体、生物多様性の保全及び持続可能な利用に関し専門的な知識を有する者等の多様な主体の意見を求め、これを十分考慮した上で政策形成を行う仕組みの活用等を図るものとする。
2 国は、事業者、国民又は民間の団体が行う生物の多様性の保全上重要な土地の取得並びにその維持及び保全のための活動その他の生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関する自発的な活動が促進されるよう必要な措置を講ずるものとする。

 (調査等の推進)
第二十一条 国は、生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関する施策を適正に策定し、及び実施するため、生物の多様性の現状の把握及び監視等の生物の多様性に関する調査の実施並びに調査に必要な体制の整備、標本等の資料の収集及び体系的な保存並びに情報の提供その他必要な措置を講ずるものとする。
2 国は、生物の多様性の状況及びその恵沢を総合的に評価するため、適切な指標の開発その他の必要な措置を講ずるものとする。

 (科学技術の振興)
第二十三条 国は、生物の多様性に関する科学技術の振興を図るため、野生生物の種の特性の把握、生態系の機構の解明等の研究開発の推進及びその成果の普及、試験研究の体制の整備、研究者の養成その他の必要な措置を講ずるものとする。

 (国民の理解の増進)
第二十四条 国は、学校教育及び社会教育における生物の多様性に関する教育の推進、専門的な知識又は経験を有する人材の育成、広報活動の充実、自然との触れ合いの場及び機会の提供等により国民の生物の多様性についての理解を深めるよう必要な措置を講ずるものとする。

 (事業計画の立案の段階等での生物の多様性に係る環境影響評価の推進)
第二十五条 国は、生物の多様性が微妙な均衡を保つことによって成り立っおり、一度損なわれた生物の多様性を再生することが困難であることから、生物の多様性に影響を及ぼす事業の実施に先立つ早い段階での配慮が重要であることにかんがみ、生物の多様性に影響を及ぼすおそれのある事業を行う事業者等が、その事業に関する計画の立案段階からその事業の実施までの段階において、その事業に係る生物の多様性に及ぼす環境影響の調査、予測又は評価を行い、その結果に基づき、その事業に係る生物の多様性の保全について適正に配慮することを推進するため、事業の特性を踏まえつつ、必要な措置を講ずるものとする。
 (国際的な連携の確保及び国際協力の推進)
第二十六条 国は、生物の多様性の保全及び持続可能な利用が、地球環境の保全上重要な課題であることにかんがみ、生物の多様性に関する条約等に基づく国際的な取組に主体的に参加することその他の国際的な連携の確保並びに生物の多様性の保全及びその持続可能な利用に関する技術協力その他の国際協力の推進に必要な措置を講ずるものとする。

 第二節 地方公共団体の施策
第二十七条 地方公共団体は、前節に定める国の施策に準じた施策及びその他のその地方公共団体の区域の自然的社会的条件に応じた生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関する施策を、これらの総合的かつ計画的な推進を図りつつ実施するものとする。

 附則
 (施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から施行する。

 (生物多様性の保全に係る法律の施行状況の検討)
第二条 政府は、この法律の目的を達成するため、野生生物の種の保存、森林、里山、農地、湿原、干潟、河川、湖沼等の自然環境の再生及び保全その他の生物多様性の保全等に関する制度の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

 (環境基本法の一部改正)
第三条 環境基本法の一部を次のように改正する。
 第四十一条第二項第三号中「及び石綿による健康被害の救済に関する法律(平成十八年法律第四号)」を「、石綿による健康被害の救済に関する法律(平成十八年法律第四号)及び生物多様性基本法(平成二十年法律第 号)」に改める。
 (愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律の一部改正)
第四条 愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(平成二十年法律第 号)の一部を次のように改正する。
 附則第五条のうち、環境基本法第四十一条第二項第三号の改正規定中「及び石綿による健康被害の救済に関する法律(平成十八年法律第四号)」及び愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(平成二十年法律第 号)に改める」を「石綿による健康被害の救済に関する法律(平成十八年法律第四号)」の下に「、愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(平成二十年法律第 号)」を加える」に改める。

 理 由
 豊かな生物の多様性を保全し、その恵沢を将来にわたって享受できる自然と共生する社会の実現を図るとともに、地球環境の保全に寄与するため、生物の多様性の保全及び持続可能な利用について、基本原則を定め、並びに国、地方公共団体、事業者、国民及び民間の団体の責務を明らかにするとともに、生物多様性国家戦略の策定その他の生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関する施策の基本となる事項を定めることにより、生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関する施策を総合的かつ計画的に推進する必要がある。これが、この法律を提出する理由である。