Jun日記(さと さとみの世界)

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ダンスは愉し 24

2019-02-16 17:36:56 | 日記

 その後鈴舞さんは、雄介さんのその女性達から受ける人気が異常なまでに高い、という事実に気付くのにはそう時間が掛かりませんでした。何しろサークル練習終了前の、サークル員全員参加の乱舞の時には、音楽が数曲かかるのですが、曲が変わる時だけでなく、1曲が掛かっている間の途中でも、熱心に彼と踊りたいとアプローチしてくる女性が何人もいたからでした。

 「次は私と。」「少しでも私と練習してください。」こう言って迫って来る女性達に、鈴舞さんは、そんな彼女達からの最初の申し出で彼からあっさり手を解かれると、やって来た女性に、フェミニストの雄介さんを取られてしまいました。その後は自分は壁の側で佇んだ儘、雄介さんや他のサークル員のダンスを眺めているのみでした。

 これは彼女がまだそう多く踊れない、今日がサークル初日だという理由もありましたが、サークル員の女性達の積極的な行動力や、逆らい難い情熱に気圧されてしまったからでした。

「やぁ、早速やられたね。」

鈴舞さんの側に来た部長が彼女に声を掛けました。

「春野の奴はモテるからな。」そう声を掛けて、驚いただろうと鈴舞さんを思いやりました。前の彼女も可哀そうだったよ。結局、彼女達に追いだされた感じでサークルを辞めて、春野との仲もそれっきりだったからな。

「春野も可愛そうと言えば可哀そうだな。」

そんな事をこっそりと鈴舞さんに言うと、部長は彼女の顔を見てにっこり笑いました。

「ま、君は最初から春野に連れて来られたんだから、他の女性陣とは別格という感じだし、彼女達も少しは遠慮してくれるだろうがね。」

そう言ってポン!と、鈴舞さんの肩を叩くと、部長はにっと笑って、「頑張ってね。」と言うと、如何にも意味深な感じの微笑みを湛えたまま、横にいた自分のパートナーの手をさっと取って先に立ち、テンポよく曲に乗ると、皆の踊りの輪の中へと戻って行ったのでした。

 『ダンスサークルってそんなにすごい所だったのか!』

鈴舞さんは目を丸くしました。こういった男女間の感情のもつれは読書サークルでもある程度懲りていただけに、彼女はそれに輪を掛けて男女の鞘当てが激しそうな新入サークルの雰囲気にすっかり飲まれてしまいそうでした。中高のフォークダンスの時に感じた爽快な青空は頭上には無く、純粋に肢体を伸ばし、音楽に乗り運動するような感覚で踊りを楽しむ。そんなダンスの愉しみが此処にはないのではないか、そう考えると、鈴舞さんは社交ダンスクラブでの自分の未来に、暗澹たる未来予想図を描いてしまうのでした。

                                      終わり


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