空中楼閣―Talking Dream―

好きなものを徒然なるままに。

雪組「一夢庵風流記 前田慶次」「My Dream TAKARAZUKA」

2014-07-01 23:08:40 | 観劇(タカラヅカ)
お別れ、を噛みしめる作品。

えりたんが好きだった。
頭中将が、トゥスンが、プルキルが、劉邦が、ヴィムが、
文四郎が、フェルゼンが、そしてヘイリーさんが、好きだった。

あゆちゃんが好きだった。
トップになる前も、トップになってからも。
(なぜか今真っ先に思い出したのがエボリ公女だったのは何故だ)

まっつさんが好きだった。
ジロラモが、ヒョンゴが、張良が、ベンヴォーリオが、プガチョフが、
フェリペ2世が、「フットルース」の牧師様が、恭太郎にいさまが、好きだった。

雪組が好きだった。その大好きな人たちが、大勢いなくなる、その卒業公演。

【一夢庵風流記 前田慶次】

原作は、隆慶一郎の小説。(マンガ『花の慶次』の原作でもある)
原作もちゃんと読んでいきました!
……原作読んで行って良かった…と思える詰め込みっぷりでした(笑)

設定盛り沢山過ぎ、パンフの読み応えたるや!
ちょっと落ち着け、と言いたいw 語りたいのは分かるのですがね、大野先生。
まあ、私はもともと大野先生の作品は好きなんですが、
「ロシアン・ブルー」→「エドワード8世」→「前田慶次」と、
ちょっとずつ落ち着いてきているのはわかる。(「夢の浮橋」は生で見られていない…)
ロシアンのパンフとか凄かったもんなあ…「エドワード」だと、真咲君の役柄とか。
…って、もしかして、見る側(私)の予備知識が今回多いだけで、
情報量は変わっていないのだろうか?
(でも、戦国時代詳しい観客に比べて、
1920年代ソ連芸術史に詳しい人は圧倒的に少ないだろう)

…「愛と死のアラビア」ってか、サトクリフの『血と砂』を、
大野先生が作ってたらどうなってたかなあ…と、思わず遠い目になってみる。
ナイリお嬢様がラスボスとかありそうだな。
(トゥスン大好きだったから、どうしても考えてしまうのだ)

閑話休題。ともあれ。

面白かった!ことは、声を大にして訴えたいのですよ。

なんか全体的に、宝塚というより劇団☆新感線っぽい、気がした。
てか、中島かずき作、って言われたら信じてしまいそうな感じの雰囲気だった。
『髑髏城の七人』とか(狸穴さんとか無界のイメージが…)
『五右衛門ロック』シリーズとか(秀吉の造形が似てる。そういえば慶次も出てきた)
この前見た『蒼の乱』とか(馬! 馬!)
トンデモ成分控えめ(当社比)だから『真田十勇士』とか、そんな感じ。

それを95分で、あれだけのキャスト人数さばいてまとめるんだから、
大野先生とタカラヅカは何のかんので凄いと思うのですよ。
(まとまってませんが、というツッコミは、謹んで無視させていただきますw)


前田慶次@えりたん。
原作そのままでありながら、壮一帆そのものであるという、まさに奇跡
原作の印象として、慶次はあくまでも「男のロマン」であって、
本来は宝塚向けではないヒーローだと思うのです。
それをタカラヅカとして成立させてしまう壮一帆、恐るべし。
「傾奇者」の圧倒的な美しさ。
和物の雪組、を背負ったトップスターの集大成。
誰からも愛される、というのは『虞美人』の劉邦っぽくはあるんだけど、
あの頃よりもずっとずっと器が大きくなって。
愛されて、そして愛している。完成された姿を見せてくれた。

そして松風!@松竹さんありがとう
馬かわいいよ馬。
そしてあれに乗ってばっちり「決まる」壮一帆、やっぱり最強(笑)


まつ@あゆちゃん。
「わたくしにおまかせくださりませ」来た!(思わず笑顔に)
安心感と包容力を感じさせてくれる、適役。
それでいてちゃんとかわいらしいしね。
美貌だけじゃなく、愛嬌があるのがいい。
「覚悟を決めましょう」というセリフが印象的。
(ちょうど、漱石の『それから』を読んだばかりで、そのセリフがあったもので。
大野先生も意識したのか?)
利家とは政略結婚で、夫に恋愛感情は持っていなかった設定なので、
全体に「悲恋」要素が強い。
これは、宝塚的には良いアレンジ。


奥村助右衛門@ちぎ君。
地味な役、辛抱役なだけに、ちぎちゃんの圧倒的な美貌と華が必要。
いい仕事でした。そして誠実さがにじみ出てくるのが良いよね。
慶次を愛しながら、自分はかぶかず、真っ当に正面から、前田家を支える。
これからの雪組をよろしくお願いします。
「よろしく頼む、チギーチュ!」(『宙FANTASISTA!!』)

深草重太夫@ともみん。
オイシイ役…いや、おいしくしてしまうのは中の人の個性か。
すっかり、脳筋キャラが定着してしまったのは心配なんだけど(役柄が狭まるから)
ともみんのハートフルさはいいですね。全体の救いになる。

雪丸@まっつさん。
エロエロ美形悪役。
よく考えると言動にツッコミ所は多いんだけど、ツッコんではいけない。
美しさと美声とエロを堪能すべし(笑)
傀儡衆に声だけで語りかける場面の迫力たるや!
大したことしてないのに頭脳派に見えるのは、軍師役多かったからですね。
プガチョフぐらい大物でも良かったんだけどね…

捨丸@みゆちゃん。
何ゆえにその設定(笑)(多分、原作読者全員のツッコミ)
まあ、原作でも捨丸はヒロインっぽいけどさ~
かわいかったけどね。そして泣けた(ここは、重太夫GJですよ)

直江兼続@大ちゃん。
登場がカッコ良かっただけに、「このままフェードアウトだったらどうしよう」と思ったんだけど、
伏線がちゃんと回収されて良かった。
愛の兜はわざわざ作ったのか、劇団…

黒田官兵衛@きんぐ。
(まつ、兼続と、怒涛の「大河ドラマ主人公」シリーズだなw)
大河のかんべえさんよりよっぽどちゃんと軍師してましたね(爆)
眼帯がカッコ良かったです。
『風の錦絵』の「風林火山」場面を思い出しちゃったけど、あれは山本勘助か。

二郎三郎@ヒロさん。
狸穴さん、フットワーク軽すぎます(違)
この人のお付きを、わかりやすい忍者(服部半蔵とか)にしないのが、
大野先生のこだわりなんだろうなと、前述の中島作品との比較で思う。
全体的には忍者大活躍の作品なのにね。
この人がラスボスだから、最終章にうまく繋がった。
兼続の出番が確保されたというべきか。

秀吉@はっちさん。何というか、専科さんお二人は宝塚の至宝だよね。
そしてそれを上手に生かしてますね。

ハマり役、楽しい役がいっぱいで、目が足りない!状況。
リピートできなかったのが残念です。
とりあえず、加賀@ヒメ様が怖すぎたことだけは書き残しておこう(笑)

花組で組長副組長だった、はっちさんとみとさんが、
花組だったえりたんやまっつさんを見送る場にいてくれて良かったと思う。


『愛のプレリュード』とか『JIN』とかは、
オープニングでダダ泣きした記憶があるのですが、
今回はそういう「去りゆく人と残る人との絡み」をきちんとエンディングで用意してくれて、
しかもそういう知識が無くても華やかで昂揚できるエンディングで、
そこに身を委ねて気持ち良く泣くことができました。
グランドフィナーレがあるっていいよね。
「散らば花の如く、楽しいのう」
また一つ、名セリフが増えた気がします。



【My Dream TAKARAZUKA】

全体的にはこのショー好きです。
退団者への愛にあふれた作品。
見ているだけで、「雪組が好き!」という思いが胸に満ちてくる。

今回の目玉の「伝説〈レジェンド〉誕生」……えーっと。
天下の阿木耀子御大とも思えぬ凡庸な歌詞が、非常に非常に残念でした……
(大階段はあんまり登らないと思うよ)
雰囲気と演出はとっても良かったのになあ。
退団者オンリーの場面とか、えりたんの両サイドに翔咲とか、泣くから!

えりたんの「トップスター」としての輝きを、噛みしめる。
光を、ただ、見つめる。

中村B先生の作品だと娘役がカッコいいから良いですね。
あゆちゃん、最後にこういうショーがあって良かった。

コンビ愛も前面に出ていて。デュエットダンス最高でした!

まっつさんは見せ場たっぷり。
ジゴロかっこいい~! まさに花男!
そしてエトワールの万雷の拍手に、胸が詰まる。

ちぎちゃんの笑顔は、大好きだった、あの人やこの人の記憶につながって、
ちぎちゃんのキラキラをいや増させる。

きんぐ、大ちゃん、がおり、翔君、咲ちゃん、かなと君、
次世代を担う若手の出番もたくさんあって、ライトファンは点呼が大変。
「うわ、イケメン!」と思ったのはレオ君。今更ですが。

娘役陣は、せしるがとにかく美女! そしてあんりちゃんがかわいすぎる。
みゆちゃんも素敵だった。

ひねりはないけど、ちゃんとヅカファンのツボを押さえた、ザ・サヨナラ作品。

これでいいのです。こういうのが見たいのだと思う。

うっとり見とれて、お別れに涙して。
もっともっと見ていたい、終わってほしくない、という思いはいつもあるけど、
満足して、拍手することができる。

夢の時間を、ありがとう。大好きでした。

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