じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

学力向上の分岐点

2019-11-26 17:21:55 | Weblog
☆ 湊かなえさんの「告白」(双葉文庫)に面白い段落があった。51頁のあたり。

☆ 中学1年生、メキメキ学力が上がってきた生徒。しかし、やがてスランプが訪れる。「ここからが本当の勝負のしどころ」と作品は書く。自分の実力はここまでと諦めて成績が下がっていく人、現状維持で満足する人、踏ん張って努力し上昇線に乗る人。

☆ まったくその通りだと思う。ただこの踏ん張りが実に苦しい。もはやそんな時代を通り過ぎた大人にとってみれば、「もうちょっと」と思うのだが、生徒にとっては毎日が初体験だ。先行き不透明な未来のために努力するよりかは、安易な逃げ道を求めてしまうのが人の常。

☆ 作品は中学3年生の保護者の「この子はやればできるんです」というセリフも紹介する。

☆ 「やればできる」と期待された子のほとんどが「やることができない子」だったと、厳しい結論を下している。厳しいが的を射ている。的を射ているゆえに、なかなか教師はこのセリフを口に出せない。


☆ 志水辰夫さんの「行きずりの街」(新潮社)では、ある学園の学長のセリフが興味深かった。「教育家であることと、経営者であることは両立しない」と彼は言う。「頭の使い方がまるでちがう」と。「教育家の頭に必要なのは言葉だが、経営者の頭に必要なのは数字なんだ」と言う。(130頁)

☆ 私は昔、ある教育専門誌の記者(見習い)のようなことをしたことがあった。その時、中学、高校、大学を抱えるある学園の理事長が、「グランドを走る生徒が札束に見える」と冗談を飛ばしていた、という話を聞いた。

☆ 当時、私は若く、教育に潔癖だったから憤りを感じたものだが、今思うと理事長の気持ちがわからなくもない。教育も経営も究めるのは難しい。

☆ 読書をすると学ぶことが多い。
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