じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

小川洋子「人質の朗読会」

2021-06-05 19:28:51 | Weblog
★ 連日、新型コロナ感染症で亡くなった人の数が公表される。

★ 数字が大きくなるともはや氏名ではなく数でしか示されない。私がそのことを痛感したのは阪神淡路大震災の時だった。日に日に犠牲者の数が膨らみ、5000人に至っては、もはやその数に驚くばかりだった。そして東日本大震災。

★ 亡くなったり、行方が分からない人、一人ひとりに人生の歩みがあったに違いない。言い残したいことがあったに違いない。

★ 小川洋子さんの「人質の朗読会」(中公文庫)を読んだ。地球の反対側のある国で、日本人を乗せたバスツアーがゲリラ組織に拉致・監禁された。水面下で身代金の交渉が進んでいたが、政府軍が強行突入。犯人グループと共に、人質も犠牲となった。

★ 犯人たちの動静を知るため、アジトの様子は政府軍によって盗聴されていた。緊張の監禁状態。しかし時間がたつと人質たちはその環境に慣れ、そして、順番に自分たちの人生を語る「朗読会」が行われるようになった。その模様は、事件後ラジオで流された。

★ 一人ひとりの日常、人生が語られていた。

★ 結果として短編小説集のような形になっている。無名の人々にもそれぞれの人生があり、それを語ること、そしてそれを人に知らせることが、犠牲者への鎮魂のように感じた。
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