じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

芥川龍之介「戯作三昧」

2019-04-27 18:17:36 | Weblog
★ 芥川龍之介「戯作三昧・一塊の土」(新潮文庫)から「戯作三昧」を読んだ。

★ 滝沢馬琴を主人公に、舞台を天保年間の江戸にしているが、馬琴には芥川自身が投影されており、彼の小説論、芸術論としても読める。

★ 江戸の風呂屋から物語が始まる。馬琴は自らの作品を批判する声を聞き、迷いが生じる。執筆中の「八犬伝」を読み直し、悶々としていたところに出かけていた孫が帰ってきて、子どもならではの天真爛漫で、観音様のお告げ(勉強しろ。癇癪を起すな。そうしてもっと辛抱しろ)を語る。それを聞いた馬琴、迷いが晴れたのか、「八犬伝」と討ち死にする覚悟で、創作三昧の境地に入った。

★ お上による検閲を批判する箇所も見られる。

★ 「何等の映像をも与えない叙景」「何等感激をも含まない詠嘆」「何等の理路を辿らない論弁」、そうしたものが稚拙な文章として挙げられている。
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神西清「少年」

2019-04-27 09:03:08 | Weblog
★ ある問題集に神西清「少年」の一節が載せられていたので、青空文庫で全文を読んだ。

★ 少年は父の赴任に伴い当時日本領だった台湾に渡る。そこでの生活が書かれていた。問題文で採用されていたのは祖母が亡くなるところ。本文のちょうど真ん中あたり。「死」の現実、「死」をめぐる大人たちの様子が少年の目を通して書かれていた。

★ 祖母が亡くなる日、縁側に手を突き遠吠えをする黒犬が印象的だった。

★ 少年の複雑な思いがよく伝わってくる作品だった。
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三浦哲郎「鳥寄せ」

2019-04-27 07:44:18 | Weblog
★ 三浦哲郎さんの「木馬の騎手」(新潮文庫)から「鳥寄せ」を読んだ。本が絶版なのか手に入らないのでKindleで購入した。

★ この作品、かつて共通一次テストに出題され、受験者の中には感動して涙した人もいたという。

★ 「鳥寄せ」とは鳥を寄せる笛のこと。私が想像するにパンフルートのような感じだろうか。舞台は田舎の寂れた農村。12歳の子どもの語りで話が進む。

★ 祖父と両親、それに弟の5人家族。貧しいながらも普通の農家だったが、何があったのか(そこは具体的には語られていない)、悲劇がこの家族を襲う。

★ まず飼育していた3匹の豚が売りに出された。次に牛も売られた。経済的な困窮が感じられる。父親は他の村人と共に町に働きに行くが、慣れない仕事でへまを繰り返し、途中で村に帰ったという。しかし村には帰ってこなかった。後に村の近くの裏山で遺体が見つかる。カバンの中には家族への土産が。家まで目と鼻の先まで来て、どうして父親は命を絶たねばならなかったのだろうか。

★ 母親は身重だったが死産する。その頃から母は精神的に不安定になり、鳥寄せの笛を吹いては夫が帰ってきたとニコニコしている。その母親もある日家を出て深い森に入り行方不明となる。祖父は口をきかなくなる。「炉端の石地蔵」と表現されている。

★ 今では「おら」が鳥寄せの笛を吹いている。「おらは、母ちゃんのように気が触れているわけではありゃせん。こんなことをしても無駄だとわかっているのですが、日が落ちると、とてもこんな鳥寄せの笛でもならさないではいられないのです」と語る。

★ 鳥寄せの笛の音が心に沁みる。
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