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合格発表

 30年前、私は東京の大学2校と京都の大学1校を受験した。その時代の合格発表は大学構内の掲示板に貼り出された。私のように名古屋近郊に住んでいる者にとって、合格発表を見るためだけにわざわざ上京することもできず、かといって大学からの合否の案内を待つだけの心の余裕もないため、試験会場の近くで盛んに勧誘していた学生アルバイトの合格電報を頼んだ。大学はそれにまったく関与していないことを強調していたが、電報の文面にも各大学で特色があったというような話も聞いたことがあるほど、当時としてはごく当たり前のことだったと思う。
 京都の大学は、母と発表を見に行った。発表を見たらすぐに下宿を探そうというつもりであったから、自信満々というか怖いもの知らずの高校生だった。でも、さすがに掲示板に近づくにつれ足取りが重くなって、どきどきしながら発表を見た。運良く自分の受験番号と名前があるのを見つけた時には小躍りしたのを覚えている。そうだ、当時は個人情報などという難しい観念は全くといっていいほど気にかけられていなかった。今では信じられないことだが、大学合格者の氏名が出身高校別に新聞に掲載されてもいた。母が私の名前の載った新聞を大事そうにとっておいたが、今はもうどこに行ったのか分からない。おおらかな時代であったと言えなくもないが、今の時代があまりに世知辛いと言いたくもなる。
 しかし、今は合格者の名前どころか受験番号さえも、大学の構内に掲げられなくなってきた。3年前娘が国立大学に合格したときは、掲示板の前で自分の受験番号を指差している記念写真がとってあるから、確かに受験番号は掲示されていた。しかし、今年になって息子が受験した私立大学の合格発表では、大学構内での発表をしている学校は1つもない。すべてインターネットか電話案内になっている。インターネットで大学のHPに合格者の受験番号を掲示するのはもう随分前から行われてきた。息子の受験したうち1校はHPでしか発表せず、大学からの案内も合格者にしか届けられず、不合格者には何も連絡しないという学校があった。そのため合格発表時間にはHPへの訪問者が殺到し、30分以上接続できなかった。塾生の中には、途中であきらめて何時間か経ってからやっと合否が分かったという子もいたほどだ。全学の合格発表を同時に行えば当然こうなることは分かっているのに、何も対策を講じなかったのだから何て要領の悪い大学なんだろう、と私も思わず毒ついてしまった。
 でも、このインターネットでの発表は、昔ながらの掲示板を使った発表をIT化したものに過ぎない。便利ではあるが古典的でもある。今ではも一段進んだ、電話を使って合否を知ることのできる「電話応答システム」というものを採用している大学が増えている。娘の時にはまだごく小数の大学しか利用していなかったと思うが、今年は随分多くなっている。私はもう何度かこれを使って息子の合否を知った。簡単な操作でまったく他人に知られずに自分の合否が分かるだけに今後も採用する大学が多くなるだろう。以下にある大学の操作手順を書いてみる。
  
  ①各大学の入試合否案内センターに電話する。
  ②各大学で決められた、学部・学科・専修コード(4桁)、各受験者の受験番号(5桁)を続けてダイヤルする。
  ③ガイダンスが復唱するので、正しければ暗証番号4桁を、訂正するときは5をダイヤルする。
  ④暗証番号は受験者の(生年)月日になるので、私のように6月15日生まれなら0615をダイヤルする。
  ⑤すると、合格の場合には「おめでとうございます!合格です!」
        不合格の場合には「残念ながら、不合格です」
   と案内される。

私はもう何度か「残念ながら・・・」というのを聞いた。いずれもセンター出願の私立大学の発表なので、センターを失敗した息子には当然の結果である。それでもあわよくば、などと甘い考えを持ってしまう私を諭すように、このアナウンスはご丁寧にも2度繰り返される。とほほ・・である。
 しかし、今のところ1校は「おめでとうございます!合格です!」という声が聞けた。それを聞いて思わず涙がこぼれたが、まだこれから何校か合格発表が残っている。通える大学は1つしかないが、合格して悪い気がするはずはないから、これからもどんどん「あめでとうございます!・・」という声を聞きたいと願っている。
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