連日の夏日の中
『脳の処理能力が落ちているのが悩みです。』と患者さんが見えられました。
症状としては「頭重」「咽乾」「口燥」「頻尿」「全身の倦怠感」「頸肩凝り」「腰痛」等でした。
「脳は髄の海」と医書の「霊枢」に記述されていますが「脳」は「腎」に関係が深いとされています。
腹診したところ左心窩部の圧痛と左下腹部の圧痛が認められ、より左下腹部の圧痛が強いため本治法は「積聚治療」の腎虚証で鍼をすることにしました。
「腰痛」も腎の気の異常が原因と考えられます。東洋医学では腰部は「腎の府」と言われ腎の気が衰えると腰痛が起こりやすいのです。
今回は「腎虚証」で治療を進めましたが証としては「心腎不交証」ではないかと考えています。
「心腎不交証」を簡単に説明いたしますと、正常な場合は心陽(火)は腎に下降して腎水を温めており、また腎陰(水)は上に作用して「心火」が亢進しすぎないように「心火」を養っており腎(水)と心(火)がお互いに助けあっています。この状態を東洋医学では心腎相交と言います。
しかし病や疲労や不規則な生活などにより腎水が不足したために心火が亢進したり、ストレスなどにより思慮過敏や情志が失調し心火が上部で亢進したため、下にある腎と相交できなくなると「心と腎の陰陽と火水の協調関係」が失調して心煩・不眠・心悸・健忘・頭痛・眩暈・耳鳴り・腰のだるさ・五心煩熱・咽乾・口燥などの症状が出ます。
今回の心窩部の圧痛も気候が高温のため「腎水」が不足し「腎陰」が衰えたため心火が亢進したのが原因と考えられます。
治療方針としては心と腎の交通を再開させる事と腎陰を補い亢進している心火を下げる事になりますが、「腎虚証」として「腎虚」を丁寧に補う治療を行うと、亢進していた心火も降下して、心火亢進による諸症状も改善いたします。
本治法で腎陰を補った後に標治法として頭部に四神聡+百会+本神+神庭をして後頭部の脳戸+脳空に鍼を行いました。
治療後は『頭が醒めました。』との事でした。