不妊症の治療を受けてみたいと初診の患者さんが見えられました。
当院では腹診して証を立て、「証」に従って治療を行います。東洋医学では「証」に従って治療を行うことを「従証療法」と呼びます。
腹診すると臍の左下方と曲骨上の圧痛が強く瘀血があり、子宮が冷えている胞寒の様に感じられました。
今回は「腎虚症」で治療を進めました。東洋医学の不妊症の治療で一番大切なのは「気」を高める事です。
「気」と言うと捉えどころが無い様に思いますが、実は「気」と「血」の間には相互依存・相互資生・相互為用といわれる密接な関係があります。
「気」には「先天の気」と「後天の気」があり「先天の気」とは腎、「後天の気」とは胃腸の事を言います。臓腑で言えば脾と胃に当たります。
東洋医学で言う「腎」とは現代医学の腎臓のみでなく内腎・副腎・外腎の三つを言い、内腎・副腎は腎臓・副腎、外腎は泌尿生殖器を指すと思ってください。
女性の場合は膀胱・子宮・卵巣が外腎に当たります。
そしてこの「腎」の機能が低下することを「腎虚」と言います。
東洋医学では腎虚・血虚・血瘀・痰祖・胞寒などがあると「腎の気=腎精」が損傷して妊娠しずらくなると考えられています。
胞寒とは命門という東洋医学でいう生命力の火(即ち、体の温度)が弱く、胞宮が冷え、寒が胞宮に悪い影響を与えていると考えるものです。
胞宮とは子宮の事です。東洋医学では奇恒の腑に属し女子胞(子宮)、胞宮、子宮、子臓、胞臓、子処、血臓とも呼ばれます。
当院では、妊娠に関係の深い臓腑は腎・脾・肝であると患者さんに説明していますが、簡潔に言えば腎と脾(胃)が「先天の気」と「後天の気」の生成に深く関わり、肝は血を蔵し気血を主り、気血の流れをのびやかに全身の隅々までゆきわたらせる働きがあります。
「冷え」と「瘀血」と「ストレス」が不妊症の原因とお話しするのも肝がストレスに弱い臓腑であり「冷え」と「瘀血」と「ストレス」が腎虚・血虚・血瘀・痰祖・胞寒の原因となり易いからです。