今年の1月にスキーで頸椎を痛めた方がお見えになりました。
今日は当院での「頸椎症と関連痛」の治療について御紹介したいと思います。
頸椎症とは頸椎の変形(椎間板、椎間関節、Luschka関節、椎体縁のどの狭小や骨棘の形成など)に伴い、その周囲の神経、血管(脊髄、洞神経、後枝内側枝、神経根、椎骨動脈、頸部交換神経などに)障害を合併する疾患です。
当院では頸椎症の中の関連痛型と神経根症状を鍼灸の適応症として治療しております。同じ頸椎症でも脊髄症型、バレー症状型については専門医の診察をお勧めしております。
当院では頸肩背部の痛みや凝り、また上肢の痛みや痺れで来院される患者様が多く、鍼灸治療で一定の効果を上げております。
では具体的に治療例に従って御紹介いたします。
患者さんは20代男性、1月にスキーで転倒、以来3ケ月頸肩部、背部の疼痛、凝り感、圧迫感、頸椎の運動制限とそれに伴う放散痛に悩まされ、最近は右上肢の疼痛、痺れ、脱力感などの症状が出現されたとのことで来院されました。
受傷当時、整形外科を受診されC4ヘルニアとの診断だったそうですが、通院しなかったそうです。
まず最初にタオルの上から頸部、肩背部、脊柱起立筋を軽く擦って体の状態を診ると、左右の板状筋、胸鎖乳突筋、僧帽筋、肩甲挙筋、脊柱起立筋の緊張が分かります。
触診するとC4付近の後頸部痛と肩背部、肩甲間部の肩中兪・肩外兪・曲垣・へい風・じゅ兪・天宗・肩貞・の凝りと痛みが著明でした。
鍼が初めてと言うことなので、一番鍼(太さ0.16mm)を使用する事しました。
具体的な治療(筋に対するアプローチ)として筋緊張および圧痛硬結部へ鍼管を使い刺入後、置鍼としました。
鍼は痛いと構え勝ちですが患者さんに伺うと「刺入したことも分からなかった。」とのことです。
使用した経穴名で言えば、
天柱 :頭半棘筋・頭板状筋・僧帽筋
へい風:僧帽筋・棘上筋
曲垣 :僧帽筋・棘上筋
肩外兪:僧帽筋・肩甲挙筋
肩中兪:僧帽筋・肩甲挙筋
天宗 :棘下筋
じゅ兪:棘下筋
肩貞 :小円筋・大円筋
完骨 :胸鎖乳突筋・頭板状筋
などを使い、さらに背部の菱形形筋上の附分、魄戸、膏肓も使用しました。
曲垣・肩外兪・肩中兪・附分、魄戸、膏肓は頸横動脈が走っており、風池は深部に椎骨動脈が走行しております。
上記の場所に置鍼することにより、筋肉の緊張、硬結が緩むのみならず、血管が拡張する作用により頸部頭部の症状が改善します
風池は深部に椎骨動脈が走行しておりますので刺鍼に注意が必要ですが、深刺でない事と、鍼が細いことから危険性はありません。
上記に上げた治療・経穴名は局所治療であり、局所治療の前提として本治治療を行い、鍼灸のほかに温灸器とビワの葉温灸も併用して気血の流れを整える治療をいたしました。