山口 香の「柔道を考える」

柔道が直面している問題を考え、今後のビジョン、歩むべき道を模索する。

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裁判の結果

2010-01-05 13:19:52 | Weblog
裁判の結果

昨年4月、PJU(パンアメリカ柔道ユニオン)はIJF(国際柔道連盟)に対してCAS(スポーツ仲裁裁判所)に訴えを起こした。理由は、3月に行われたIJF理事会においてPJUの加盟を無効とし、新しく立ち上げられたPJC(パンアメリカコンフェデレーション)を加盟するとした決議をしたからである。

この紛争は現在のビゼールIJF会長が前会長のパク会長(韓国)と会長の座を巡って争っていた頃にさかのぼる。PJUはパク会長側についており、ビゼール氏が新会長となっても体制派になびくことがなかったために、ビゼール氏
としては厄介な存在であった。

ビゼール氏が会長になって新しい法令が制定された。古い法令では、メンバーの加盟や排除の決定は総会の決議とされていたが、新しい法令においてはその決議が理事会において行えるとされた。さらにメンバーとは、国の連盟を意味していたが大陸もメンバーと解釈されるようにもなった。このことで、IJF理事会は自分たちに対して忠実ではないPJUを排除し、新しい大陸連盟PJCを加盟させる決議を行ったのである。この決議を無効としてPJUはIJFをCASに訴えたという訳である。

昨年12月12日、CASが裁定を下した。結果はPJUの勝訴であり、新連盟は認められないというものだった。理由を簡単にまとめてみると以下のようになる。

* 各大陸の連盟において紛争があった場合でも、その問題は大陸連盟内で解決されるべき問題である。IJFはそういった問題に対して介入するべきではなく、どちらの側にもつくべきではない。
* IJFは現在、スイスに法人登録をしているが、スイスの法律に照らした場合、理事会が総会の権限を肩代わりすることは認められていない。また、IJFがメンバーを排除するには相当の理由が必要であるが、今回に関して相当の理由は認められない。
* IJFの新しい法令は、会長が理事会のメンバー22名のうち、14名を指名できるというものであり、会長の権限が大きいことを認めざるを得ない。こういった状況においての裁定はその点を考慮してIJF理事会に対して厳しい見方をとらざるを得ない。
* IJFは裁判の費用を全額負担すること。さらにPJUに対して15,000スイスフランを支払うこととする。

CASの裁定は極めて常識的なものであった。自分達の意に添わないからといって新しい大陸連盟を作ってしまうというのは明らかにおかしい。考えなくてはならないのは極めて常識的な判断が現在のIJF理事会には存在しないという点である。裁定の記述にも載っているが、PJUが招集した総会に対してビゼール氏は「この総会は違法的な総会であるので出席しないように」といった内容のレターを各国に向けて送っている。また、新連盟創設に関連した会議にビゼール氏が参加しているようである。こういった一連のことに対して裁判においてビゼール氏は言い訳をしているが、それをCASは認めておらず、ビゼール氏、PJCのリーダー的存在の二名を名指しして、「この3人が協力していたことに疑いはなく、この3人のうち、いずれかが嘘をついている」とも述べている。

おそらくIJF敗訴の裁定が大きな影響を及ぼすことはないだろう。しかし、IJFの法令や理事会のあり方、ビゼール氏についてのCASの発言は国際組織としての信用性を大きく失墜したものであったことは間違いない。IJFは裁判の結果を今の段階ではホームページにて報告はしておらず、さらにCASが認められないといったPJCのサイトをリンクしている。

以前にも書いたが、私がこのブログを開設した最も大きな理由は、IJFがビゼール会長のもと、非常に独裁的に組織を運営できる法令を作ったことにあった。今回の裁判で、この法令が外から見れば非常識的であることが明らかになったことは良かったと思う。これによって流れが変わることは期待できないが今後に向けての小さな光ではある。そして、忘れてはいけないのは今のIJF、ビゼール会長を日本も支持しているという点である。

裁定の詳細(英文)
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2 コメント

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国益優先 (初段)
2010-01-06 12:16:29
大事なのは国益になるのはドチラだと言う事。
柔道本来の技の伝承、発展になるのがベスト。
誰がトップ、体制になるかというのも、大事だが日本の為になるのも大事だ。各国各地域とも利益誘導するのが自然。例え非民主的、独占的なトップでも、結果がよければ良い。逆にいえば日本の国益にならなければ、引きずり降ろす手段を講ずるのがベターでしょう。
ヴィゼール体制 (一柔道家)
2010-01-06 13:46:46
独裁体制をとったヴィゼール現IJF会長には、かつてのIOC会長サマランチの姿が重なって見えます。(いかがわしい過去も含めて。) 彼の辣腕な政治手法は、さわやかなスポーツマンシップと相容れるとは思えず、私も嫌悪します。
しかし、改革主義者ヴィゼール氏には上村氏をはじめ賛同者も多く、功罪で言えば、今のところ「功」の部分の方が多いと思われます。政治的な追い落としはともかくとして、あからさまな利益誘導、収賄があるとは寡聞にして聞いていません。
彼の下での急進的な改革は、「三審制」を排して「一審制」にするといった行き過ぎもありましたが、おおむね妥当、あるいは是正されています。今回の下半身攻撃に対する極端な反則処理も、山口先生のおっしゃるような方向にいずれ是正されると思います。
今回のCASに提訴といったPJUのような反対勢力の存在によって、ヴィゼール体制が暴走しないことを願います。不安はたしかにありますが、もうしばらくヴィゼール体制を見守っていきたいと思います。

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