企業再生請負人/技術戦略コンサルタント、田中 純の「経営・技術戦略実践講座」

イノベーションによる企業再生、経営・技術戦略、ドラッカー理論を一緒に考えていきましょう!

◆コモディティ化にどう対処するか ~昨日の成功にしがみつく習性を断ち切るのが日本企業の第一歩】

2012年09月23日 | シリーズ「使える企業戦略を考える」
※日本企業に待ち受ける地獄~過去の成功にしがみつく習性を断ち切らない限り、明日はない。


〔ひとこと〕秋分の日の昨晩からの長雨。久しぶりだ。涼しくて気持ちいいね。



【事業や製品のコモディティ化にどう対処するか ~昨日の成功にしがみつく習性を断ち切るのが日本企業の第一歩】

P.F.ドラッカーいわく、

◆「イノベーションと起業家精神にとっては、規模は障害とはならない。障害となるのは既存の事業であり、特に成功している事業である」

◆「起業家たるための経営政策の第一段階として、すでに活力を失ったもの、陳腐化したもの、生産的でなくなったものの廃棄を制度化し、計画的・意識的に行うことである」
          ※『イノベーションと企業家精神』より.


・・・日本IBMの設立75周年を祝うフォーラムで今月上旬に来日したパルミサーノIBM会長は、自らに課している5つの質問のうち「コモディティー化にどう対処すべきか」という質問に対して、「事業の中核をなさないことがわかったら、たとえシェアNO.1であっても撤退すべき」と述べたそうだ。

事実、IBMは、トップシェアであるパソコン事業から速やかに撤退したことはよく知られている。

一方で、こうした考え方を先に示すと、「新しい事業を開発し、受け皿を用意してからから撤退すべき」などと“大人の”意見を言う人が必ず出てくる。

一見もっともらしいが、これは、企業革新やイノベーション、再生の「実務」を知らない人間の考え方である。資源に限りがあり、人の意識改革がキーとなるこの種の事案については、少なくとも、コモディティ化した事業からの撤退を実行に移し、一定の目処がつき、過去の成功と決別してから新しい事業領域の開発に取りかからないと絶対に成功しない。
(※私自身、世界の主要都市に拠点を置くバイアウト・ファンドと協働しているが、既存のダメな事業を放置したまま、改革や再生に成功した事例を見たことがない)

 ドラッカーが、イノベーションに取りかかる際の第一の質問と位置付けるのが、「もし手がけていなかったとして、今日これから、この製品、市場、流通チャネル、技術を手がけるかを問わなくてはならない。もし答えがノーであるならば、いかにしてやめるかを問わなければならない」というものである。

これを言い換えると、企業は、常に社会環境や市場のニーズと共に歩み、常に顧客を創造し続けなければならない、ということになる。つまり、彼も、コモディティ化した事業や製品にしがみつくべきではない、という警告を第一義的に発しているのだ。

 シャープの例を引くまでもなく、依然として「日本的経営」とか「ものつくり」「伝統」などという言葉を免罪符に、自社の内部事情を社会や市場のニーズよりも優先させ、コモディティ化した事業にしがみ続ける企業には、地獄の業火が待ち受けていることを知るべきである。

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・ジェイ・ティー・マネジメント田中事務所 代表
・独立行政法人 産業技術総合研究所
     イノベーション推進本部 招聘研究員
・淑徳大学オープンカレッジ講師

 田 中  純 (Kiyoshi Tanaka)

〒105-0003
東京都港区西新橋1-2-9日比谷セントラルビル14階
TEL:03-3975-8171  FAX:03-3975-8171
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