*** june typhoon tokyo ***

The night is still young...

Lalah Hathaway@BLUENOTE TOKYO

2018-04-15 23:59:59 | ライヴ

 華やかで上質な音世界に包まれた、至高のステージ。

 泰然自若。魅惑のヴォーカルワーク。そして、お茶目でチャーミング。2014年から4年連続グラミーウィナー(5冠)とキャリアハイを更新し続けるレイラ・ハサウェイが、1年4ヵ月ぶりに再び東京へカムバック。昨年にリリースした7作目のスタジオ・アルバム『オネストリー』を携えての来日公演は、彼女の日本でのホームになりつつあるブルーノート東京で。新作を交えたステージに期待を抱きながら、彼女の登場を今や遅しと待ち構えた。

 開演前にバンドメンバーのフィメールDJ、DJスパークが登壇し、レイラ登場に気が逸るオーディエンスへ胸の高鳴るキラー・チューンを投下。プリンス「キス」、マイケル・ジャクソン「スタート・サムシング」、ソウル・II・ソウル「バック・トゥ・ライフ」などを次々とプレイし、ノーティ・バイ・ネイチャー「ヒップホップ・フーレイ」でオーディエンスの腕を左右に揺らせたかと思えば、レイラの父ダニー・ハサウェイの楽曲もセレクト。R&B、ヒップホップ、ソウルの名曲でフロアの熱を高めながら、会場を一つに束ねていくと、バンドメンバーがステージイン。

 左からキーボードのリネット・ウィリアムズ、バックヴォーカルのデニス・クラーク、中央奥にDJスパーク、右に寄ってベースのエリック・スミス、透明アクリルの遮音板の中にドラムのタバリウス・ジョンソンという布陣。前回公演ではギターのアイザイア・シャーキーがいたが、本公演ではギターは不在。その代わりに、DJの打ち込みとベースのエリック・スミスが操ったマックのラップトップ音源で補充する形か。ただ、DJといっても全曲に無節操に加わるのではなく、原則は生バンドでのグルーヴを土台にしながら、曲によって適宜スクラッチも組み込んでいくスタイルゆえ、全く邪魔にはならない。むしろスローからダンスへ転換する場面において、加速度的な効果を発揮していた。
 そして、レイラがゆっくりと登場。まず、目を引いたのがレイラの足元で、普段は裸足で歌う(前回は着物だったため、足袋だった)彼女だが、今回は白の底高のスニーカーにジーンズというカジュアルなスタイル。初めてレイラを観る人にとっては別に大したことではないと思うが、これまで“裸足のレイラ”を観てきたファンにとっては驚きの一つだったのではないだろうか。


 新作『オネストリー』から「チェンジ・ヤ・ライフ」でショウが本格的にスタート。時空がレイラの醸し出すグルーヴに寄り添っているのではないかと思うほど、気づけばオーディエンスがレイラの波長に順応していく。定番となった「サマータイム」ではスキャットやメロディアスなフェイクを随所に用いて、悠久と雄大を感じさせるヴォーカルを披露。アウトロでは口笛も鳴らして、彼女が有するヴォーカルスキルが存分に味わえるパフォーマンスに、オーディエンスは息を呑み、酔いしれ、歓喜に溢れる。
 レオン・ラッセルのオリジナルで父ダニーも歌った「ソング・フォー・ユー」(個人的にはカーペンターズ版で知った曲だが)では、静けさのなかの哀切を重厚過ぎないアレンジで情感たっぷりに歌う。

 そうかと思えば、「ナイスなR&Bを聞きたいでしょ?」とのフリからジョー・サンプルとの共演曲「ユー・ワー・ミーント・フォー・ミー」で心地良いグルーヴを届け、アニタ・ベイカーの「エンジェル」では麗しく優しいコーラスワークでオーディエンスにハートウォームなそよ風を送る。“Would you mind~”の低音ヴォイスで幕を開けるアース・ウィンド&ファイア「ラヴズ・ホリデイ」に続き、ルーサー・ヴァンドロス「フォエヴァー、フォー・オールウェイズ、フォー・ラヴ」ではコール&レスポンスやバンドのソロパートも組み入れながら、たっぷりと。どの楽曲も彼女が持つ歌唱力の奥行き、懐の深さに感心するばかりで、低音から高温まで滑らかに移ろうスキャット、フェイク、ハミングなど、声が人間の感情や表情を最大限に発揮する楽器といわんばかりのスキルで、静かながらも着実にフロアに興奮の渦を呼び起こしていく。


 一方でレイラは大変ユニークな人で、シンプルに歌のみをパフォーマンスするだけでなく、ちょいちょい茶目っ気のあるところを見せる。歌唱パートに入りかけながら、(もちろんわざとだが)のどの調子がおかしいといった顔をして何度もペットボトルの水を飲みに行って焦らしたり、バンドメンバーのソロパート、たとえば、リネット・ウィリアムズが髪を歌舞伎の連獅子のように髪を振り乱してキーボードを演奏している姿に“クレイジーだわ”といった表情を見せるなど、ヴォーカルパフォーマンス以外でもステージを楽しんでいるようで、あちらこちらに笑いのこぼれる瞬間が。

 本編ラストは東京公演“お約束”のTOKUが飛び入りする「イッツ・サムシング!」へ。ここでレイラが“オールドフレンド”のTOKUに対して“ニューフレンド”として紹介した“Zeebra The Daddy”ことZeebraがサプライズで登壇。レイラがスキャットを始めるとTOKUもそれに応える流れから、互いに“あいつにもスキャットやってもらうか”と目配せしてZeebraへマイクリレー。これを受けたZeebraは“スキャットはしないよ”と前置きしながら“呼ばれたからには即行、ヤバイ即興”“俺の後にはもちろんTOKU 控えてるからかましとく”などのメロウなライミングを繰り出して場内を沸かせる。


 アンコールはDJスパークのスクラッチ導入も駆使しての新作『オネストリー』から2曲。ゆったりとした前半から父ダニーのカヴァー・パートを経て、スムースなグルーヴが流れる終盤へ。アンコールでビートをやや強めにしたアレンジと、ジャズからソウル、R&B、ヒップホップと、多岐にわたってレイラ流ワールドを構築。弱点が見つからないといえばいいのか、自由自在に歌いながらもブレがないヴォーカルワークで、自らのテリトリーに引き込んでしまう吸引力が圧巻。焚きつけるようにパワフルに引き込むのではなく、しなやかで美しく、気品を伴いながら彼女の世界へといざなえるのは、楽曲の咀嚼が優れているに他ならない。セットリストを振り返れば、カヴァー曲が少なくないことに気づくが、演奏中はそれを感じさせないほどで、それはまさにどのカヴァー曲も自分の歌にしてしまっている高い解釈力があるからこそだ。
 
 心の内にある感情の襞をほどよくくすぐるラヴリーで深淵な歌唱と、それに呼応するバンド・サウンド。激情をぶちまけるサウンドや歌唱でなくとも体躯を火照らせるエモーショナルなステージは、さすがグラミーウィナーといったところだ。旨味に満ち、芳醇な薫りで包まれる珠玉の空間は、オーディエンスに多くの愉悦をもたらしたことだろう。充実一途のレイラに恍惚を覚えた夜となった。


◇◇◇
<SET LIST>
00 INTRODUCTION
01 Change Ya Life
02 Baby Don't Cry
03 Y.O.Y.
04 Summertime(Original by George Gershwin, Also known as singing such as Billy Holiday)
05 When Your Life Was Low(Original by Joe Sample & Lalah Hathaway)
06 A Song For You(Original by Leon Russell)
07 You Were Meant For Me(Original by Joe Sample & Lalah Hathaway)
08 Angel(Original by Anita Baker)
09 Love's Holiday(Original by Earth, Wind & Fire)
10 Forever, For Always, For Love(Original by Luther Vandross)
11 It's Something!(Original by Brenda Russell)(Special guest with TOKU & Zeebra)
≪ENCORE≫
12 Honestly
13 I Can't Wait

<MEMBER>
Lalah Hathaway(vo)

Dennis Clark(back vo)
Eric Smith(b)
Lynette Williams(key)
Tavarius Johnson(ds)
DJ Spark(DJ)

Special Guest:
TOKU(tp)
Zeebra(vo)

◇◇◇

【レイラ・ハサウェイのライヴに関する記事】
※ リンク先で該当公演の記事が読めます
・2012/01/07 LALAH HATHAWAY@BLUENOTE TOKYO
・2013/01/25 Robert Glasper Experiment@Billboard Live TOKYO
・2015/12/25 Lalah Hathaway@BLUENOTE TOKYO
・2016/12/12 Lalah Hathaway@BLUENOTE TOKYO
・2018/04/15 Lalah Hathaway@BLUENOTE TOKYO(本記事)

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