*** june typhoon tokyo ***

Louie Vega & The Elements of Life @BLUE NOTE TOKYO


 “キャプテン・ルイ・ヴェガ”がエスコートするワールド・ミュージック・ツアー。

 個人的にハウス・ミュージックにどっぷりと浸かったことはないが、断続的に耳にしてきたなかで比較的聴いてきたのが、マスターズ・アット・ワークやニューヨリカン・ソウルの楽曲だった。それらのプロジェクトを主宰するのが“ニューヨーク・ハウスの帝王”とも呼ばれるルイ・ヴェガ(リトル・ルイ・ヴェガ)で、彼のバンド“ジ・エレメンツ・オブ・ライフ”を引き連れての来日公演があると知り、近年はそれほどチェックはしてなかったものの、早々に予約を完了させた次第。前回公演は2003年というから、約17年ぶりとなるブルーノート東京でのステージだ。

 左端にいかにも黒人ソウル鍵盤者といった風貌のジョシュ・ミラン、右端にカリビアンらしい独創的なヘアスタイルのアクセル・トスカと両端にキーボーディストを配して、その間にはドラムのルイシート・キンテーロとパーカッションのロバート・キンテーロの打楽器勢。ミランとキンテーロの間にベースのジーン・ペレス、中央やや右よりにドーン・トールマンとラモーナ・ダンラップのバックヴォーカル陣が顔を揃える。数曲を経て、エレメンツ・オブ・ライフの歌姫でルイ・ヴェガの妻でもあるアナーネが満を持してステージインするという流れ。ルイ・ヴェガは“コンダクター”という当初のアナウンス通り、DJ機材を扱うのではなく、指揮者に専念。とはいえ、背中からも窺える熱量やバンドとフロアのヴォルテージを高める所作は、コンダクターというよりアジテーターといった“快演”でもあった。

 序盤はシームレスに楽曲を繋ぎ、中盤からは次第に楽曲が醸し出すランドスケープを変化させながら、多彩なアレンジメントで快活なグルーヴを生み出していく。メンバー構成や軽快なビートが走るトラックも含め、インコグニートのようなアシッド・ジャズとの親和性も感じさせるステージ・パフォーマンスだったが、エレメンツ・オブ・ライフはファンキーなトラックはあるものの、やはりスタイリッシュなスタンスを保ちながらもパッションがほとばしるリズミカルな展開が魅力。それを基盤としながら、アーバンな都市風景から太陽煌めく夏の海、広大で滑らかな地平線に美しい夕陽が沈むような地中海性気候地帯、さらにはミラーボール輝くスペーシーな夜空へと景色を変えていく音楽性は、英・探検家のキャプテン・クックに倣えば、さながら“キャプテン・ルイ・ヴェガによる音楽世界の旅”といったところか。世界の音楽に精通する音楽の指南役であるルイ・ヴェガ船長の舵取りによって、跳ねるグルーヴとともに曲ごとに異なる音楽的風景を代わる代わる体感させてくれる。

 アナーネ登壇前は、トールマンとダンラップがそれぞれソウルフルな歌声でフロアの熱量を高めることに成功。バックヴォーカルという位置づけではあるが、馬力と繊細さを兼ね備えていて、楽曲の抑揚とともに豊かな声圧を駆使しながらアジャストし、グルーヴの“襞”をより連ねていく。また、アクセル・トスカが楽曲を手掛けたという「カジェホン」では、制作者のトスカとミランとの両端同士の丁々発止的な鍵盤も披露され、合間に中央の打楽器勢が過不足なく見事に隙間を埋める手数のビートを叩き出すなど順風満帆な音楽的航海に、乗客である自身を含めたオーディエンスは、漕ぎ出でる波の振動に合わせるかように、身体を右に左に心地よく揺らしていく。

 その風景が一変したのが、歌姫アナーネの登場だ。彼女の出自は分からないが、シャーデーのシャーデー・アデュというか、リアン・ベンソン(ディー・インフルエンス・ファミリーで、ドゥウェレやスラム・ヴィレッジを客演に迎えた「セイ・ハウ・アイ・フィール(スラム・ヴィレッジ・リミックス)」で話題となったガーナ出身のR&Bシンガー。以前はこんな記事を書いていた模様→「Rhian Benson is back!」)あたりの西アフリカをルーツに持つ美貌を兼ね備えたエレガントなシンガーで、どこか美しも寂し気な佇まいを帯びたムードは、広大な海と乾いた地平、遮るものがないなかで沈む夕日というような大陸的な乾性も感じさせた。楽し気なパーティライクな航海とはまた異なる、夕暮れから夜に差し掛かった海上の風景を切り取ったようなパフォーマンスは息を呑んだが、それと同時にクライマックスへ向けての力感を蓄えるクッションにもなっていたのだろう。

 一転、華やかなリズムとともに続いたのは、キャプテン・ヴェガが「一路ブラジルへ」と声高に放った「バーバラ・アン」。打楽器隊の明朗なリズムとファットなベースが耳や身体に清爽な振動をもたらし、陽気なビートで日本の裏側へといざなっていく。その楽曲の終盤で高揚を呼ぶアドリブを披露したキーボードのミランは、「次はチルドレン・ソングね!」と言ってから導いたのは「チルドレン・オブ・ザ・ワールド」。冒頭はダニー・ハサウェイ「リトル・ゲットー・ボーイ」を微かに思わせるアドリブを鍵盤を弾くと、スキャットを駆使しながら存在感溢れるソウルフルな低音ヴォーカルで魅了。アナーネのほか、トールマンとダンラップのバックヴォーカル陣のみならず、ミランも歌い手として控えていて、それぞれのヴォーカルによって色彩の映え方が異なる味わいを出せるのは、エレメンツ・オブ・ライフというバンドの真骨頂ともいえそうだ。

 実はここまで、多くが身体を揺らしていたとはいえ、初日だからなのか、センターフロアでスタンディングする人はそれほど多くなかったのがやや残念と思っていて、ルイ・ヴェガも「躊躇わずに踊って」(“Don't be afraid to dance!”)と何度か言っていたのだが、「“ニューヨリカン・ソウル”の時代に巻き戻すよ!ケニー・ドープの素晴らしい音楽だ」と言い放つと、一気にオールスタンディング状態に。ミニー・リパートンも在籍したことで知られるシカゴのサイケデリック・ソウル・グループ、ロータリー・コネクションを原曲として、数々のダンス・クラシックスのヴォーカルを執ったジョセリン・ブラウンと言わずと知れたア・トライブ・コールド・クエストのQティップを迎えた「アイ・アム・ザ・ブラック・ゴールド・オブ・ザ・サン」(4ヒーローのリミックスでも知られる)は、ハイテンション・オンリーのアッパーではない、流麗と気品が備わったメロウ・ディスコがミラーボールの輝きとともにオーディエンスの青春をも再び輝かせるような、そんな麗しいアクトになった気がした。また、ミラーボールが回るディスコながらも、これまでの楽曲では音楽的旅船団としてさまざまな土地を訪ねてきた楽曲イメージが、一気に上空から海洋や大地を早回しで俯瞰し、さらにはスペースワールドへと上昇していくようなスペーシーな感覚にも襲われた。
 
 米ゴスペル・グループのジョバート・シンガーズをオリジナルとするゴスペル・ディスコ・クラシックス「スタンド・オン・ザ・ワード」になると、ヴォーカル陣の発露も高まりを極め、演者とオーディエンスが一体となって、巨大なダンシング・グルーヴのうねりに酔いしれる光景に。どちらかといえば小柄なルイ・ヴェガも、その“ハンド・タクト”の振りはこの日最も大きなものとなって、この豪華で享楽に溢れた音楽的航海の針路を見定めていた。“Sunshine, into my life”のフックが至極の饗宴へと導いた「イントゥ・マイ・ライフ」では、おのおのが感情の高揚に任せたまま、フロア全体がただひたすらグッド・ヴァイブスに触れるという恍惚の時間に陥っていた。

 ハウス・ミュージックというと、どこかテクニカルな要素にフォーカスされることも少なくないが、キャプテン・ルイ・ヴェガによる航海は、バンド・セットということもあって、非常に生命力に溢れた音空間を実感。終演後も嬉々とした声が渦巻いた興奮は、次は(17年ぶりという)レアなものにしてはいけないのでは、との感情が高鳴る好アクトだった(次回は、マスターズ・アット・ワーク「ライク・ア・バタフライ」あたりが聴きたいぞ)。

◇◇◇

<SET LIST>
00 INTRODUCTION 
01 Spirits Taking Over
02 Elements Of Life
03 Feeling Good(Original by Anthony Newley, always known as sing by Nina Simone)
04 Callejon
05 Terra Longe
06 Barbara Ann(Original by Webster Lewis)
07 Dreamer
08 Love Fantasy
09 Into My Life(You Brought The Sunshine)
10 Children Of The World
11 Thinking About Your Body(Original by Josh Milan)
12 I Am The Black Gold Of The Sun(Nuyorican Soul, Original by Rotary Connection)
13 Stand On The Word(Original by The Joubert Singers)
14 Into My Life(You Brought The Sunshine)

<MEMBER>
Louie Vega(conductor)
Anane(vo)
Josh Milan(key,vo)
Axel Tosca(key)
Gene Perez(b)
Luisito Quintero(ds,perc)
Robert Quintero(perc)
Dawn Tallman(back vo)
Ramona Dunlap(back vo)

OPENING & ENDING DJ:
沖野修也


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