Dr. 讃井の集中治療のススメ

集中治療+αの話題をつれづれに

クリニカルパール

2013-02-27 01:47:53 | 集中治療

学会直前のお忙しい時期ですが、みなさんいかがお過ごしでしょうか。

m3.com(登録必要)のサイトですが、ショックの治療コツに関して誤解は承知で言い切ってみました。

m3.com > カンファレンス

にある「クリニカルパール」というコーナー

http://medqa.m3.com/doctor/showMessageDetail.do?messageId=164026

 

「ショック患者に対して血管作動薬を用いるなら、ドパミンでなくノルアドレナリンを投与する、心原性ショックでも同様である」、「一時的にノルアドレナリンを末梢静脈から投与してよい」、「緊急急速輸血ラインとしての有能な透析カテーテル」、「外科的な出血コントロールが完了していない段階では低めの血圧で我慢する」などなど、ある筋の人たちにとっては当たり前のことだったり、逆に「それは違うでしょ」と思う人もいたりするかもしれません。

皆さんもご自分のプラクティスをどんどん教えて下さい。

職場がかわり、毎日のようにギリギリの臨床的判断が求められる世界で生きていることを痛感しています。


こんな◯◯じゃ、駄目だ

2013-02-17 20:35:06 | その他

おお、このブログはできるだけ多くの人に読んでもらわないと、と思ったのと、元同僚U先生の相変わらず毎週月曜日にきっちりaround the clockで更新されるブログを見て「こういう才能は日本一だな、かないません」とあきらめるのではなく、「行き当たりばったり、出たとこ勝負」のせめて「さいたま市1位」を目指して昨日につづき当直の夜の間隙を使ってあえて「月曜」の前日の日曜日に二日連続でブログを更新することにしました。

それぐらい(ん、どのくらい?)に読んで価値のあるブログです。さすが、岩田健太郎先生。

http://georgebest1969.typepad.jp/blog/2013/02/あんな慶応じゃ駄目だ.html

ただし、その読み方にはコツが必要か、とも思いました。

つまり、「慶応」の部分を自分の病院や自分のデパートメントに、自発的に置き換えて考えられる人にとっては、このブログは(かなり耳が痛いが)良質の教材になる可能性があるが、「ああ、やっぱり慶応は.....」とひとごとで終わらせてしまう人にとっては好奇の対象にしかならないのではないかと思ったからです。

実際に、自分で「こんな自分じゃ」「こんな集中治療部じゃ」「こんな自治医科大学附属さいたま医療センターじゃ」「こんな埼玉県じゃ」「こんなJSEPTICじゃ」「こんな日本じゃ」といろいろ置き換えて考えてみると「駄目な」部分がたくさん見つかります。

もちろん「こんな◯◯じゃ」と考えることができて「駄目な」部分に気づくこと自体よりも、気づいた駄目な部分を変えていくことの方がよっぽど難しいのですがね。ここまで気づいてそれでもめげずになんとかしてやろう、と思うことができれば、岩田先生の勇気ある発言も浮かばれるのではないでしょうか。

その証拠に、岩田先生は最後に

「さて、なんとかなるか。各人の受け止め方次第だな。」

と書かれていますね。脱帽です。

 


公式会議的会話

2013-02-16 20:42:48 | その他

とある、お固ーい会議で、出席者の会話をじっくり観察して(聞いて)気づいたこと。

みなさん、比較的定型的な文言(ことばは悪いが、差し障りのない表現)を使用し、淀みなく、かまずに、落ちついてしゃべれるのに感心しました。これぞ「公式会議的会話」見本版を観察できたような。

あー、えー、もほとんどなければ、文章にネジレもありません。聞いている人をぐぐっと魅きつける話し方ではないが、イイタイコトが確実に伝わります、少なくともボクには。

もちろん原稿を読んでいる方はいらっしゃいましたが、そうでない方の方が多数で、少なくとも考えながらボソボソしゃべる方は皆無でした。

こういう「公式会議的会話」の実態を観察できたことは大きな収穫でした。

で、思い出したこと。

米国で臨床研修を開始して(つまりは米国に住みはじめてすぐ、ということです)しばらくは電話で、家に水道を引いたり、電気を引いたり、カード会社のカスタマーサービスと話したり、翌日の麻酔症例を指導医とディスカッションするのに、全部原稿を書いてから、それを読み上げて会話を成立させていました。しかし、しばらくすると原稿なしでも頭の中の準備だけで会話が成立するようになり、さらにしばらくすると何の準備もせずに(日本で電話するように)電話できるようになりました。自分でも不思議でした。

と思い出しているうちに、さらにつらい思い出を思い出しました。

臨床研修では、入院患者の退院サマリーを作成しなければなりませんよね。退院サマリー作成は、病院の病歴室の専用電話番号に電話してテープに吹き込み、あとで病歴室のスタッフがそのテープを聴いて紙原稿にしてくれる(ディクテーションする、と言います)システムになっていました(注1)。

もちろん、最初は原稿を書いてそれを電話口に向かって読んでいました。最大限英語らしく読んでも病歴室が聞き取れずに作成してくれるサマリーの草稿が結局穴だらけになり、「これなら自分でワープロソフトで打って提出した方がよっぽど速いよ」とブツブツ言いながら修正して、病歴室に持っていっていってました。しかも入退院の数が日本に比べると圧倒的に多いので気を許すとみるみる未脱稿サマリーがたまっていきます(嫌な思い出です)(注2)。

脱線しました。

というわけで何ごとも準備ですかね。行き当たりばったり、新鮮な驚き、出たとこ勝負の緊張感命の自分にとっては、考えさせられる会議でした。

 

以下、注。

注1:北米どこでもそうだと思います。オペ記録もこれ。慣れればワープロソフトで打つよりこっちの方が速いので、日本でも流行ればいいのにと思っているのですが、流行りませんね。米国生活が長かった慈恵医大血管外科のあの大木先生は、日本でもこのシステムを大いに利用していると聞きました。

注2:電話でなんとかしなくちゃいけない(ナースに指示を出さないと仕事が進まない、注文しないとピザが届かない、文句を言わないと家の電気が通らない、飛行機に乗れない、などの)状況は、日本では決して得られないドキドキ感、後がない感、切羽詰まった感があり、こういう体験をするだけのために海外で臨床研修をしたり、居住したりする意味はあると思います。

米国在住当時は、母国語の会話ならなんの苦労もなくイイタイコト言えて楽なんだろうな、と日本語でのディスカッションが憧憬の対象でした。しかし帰国後「母国語会話もそれほど気楽にできるわけではない」ことに気づかされ、ようやくある程度日本語会話もできるようになったかな、と思っても、今回のようにシチュエーションが異なれば会話の方法論も異なることに気づかされ....。

自分のように会話的コミュニケーションが苦手な方は、海外臨床留学は最も有効なショック療法で、しかも英語がある程度できるようになるし、本来の医学的、医療的部分で学ぶことは多数あり......。

 


Intensivist 急性冠動脈症候群 出ました

2013-02-03 04:16:20 | 循環

実はまだ現物を見てないのですが、濃そうですよね。

心臓関連は、不整脈といい、心不全といい、いつも売れ行きがよいので、今回も行くでしょう。

香坂先生、伊藤先生、内野先生ご苦労さまでした。

<特集・急性冠症候群(NSTE-ACS)>

循環器第三弾として「急性冠動脈症候群(NSTE-ACS)」を取り上げます。心筋虚血の急性期をめぐる現在の世界観は10年前とは随分異なっています。病棟や救急外来で遭遇する典型的な虚血性心疾患患者はACS,そのなかでも非ST上昇型急性心筋梗塞や不安定狭心症が増えています。これは虚血性心疾患の病態の理解が深まり,診断に必要なバイオマーカーや画像診断の技術が進歩したことによるかと思われます。こうしたACSの理解の拡大に伴い,そのマネジメントは循環器専門医だけでなく,一般内科医や集中治療医がかかわることが多くなってきました。そこで,本特集では,ACS症例の診療の際に,循環器内科医とのディスカッションをスムーズに行うための基礎知識の解説を目的としています。

1. NETE-ACS特集を組むにあたって:STが上昇したACSが特別扱いを受けるのはなぜか?    
 香坂 俊 慶應義塾大学 循環器内科

“A” is for Acute
2. 非ST上昇型急性冠症候群の初期マネジメント:ステップ ワン・ツー・スリー    
 伊藤 大樹 あおばクリニック

3. 心電図でどこまでACSを読むか?    
 小菅 雅美 横浜市立大学附属市民総合医療センター 心臓血管センター

【コラム】バイオマーカーがすべてを変えた:トロポニンは有用だが,問診と心電図診断もおろそかにしてはならない    
 永井 利幸 国立循環器病研究センター 心臓血管内科部門 冠疾患科 心臓血管系集中治療科

4. ACSにおける血流画像検査の役割:心筋血流イメージングで心筋梗塞の急性期診断のみならず,慢性期のリスク層別化も    
 松本 直也 駿河台日本大学病院 循環器科

【コラム】心臓MDCTはERでの胸痛患者に対して有用か    
 伊藤 大樹 

【コラム】ACS急性期の心エコー図の役割:その特徴と限界を理解し,非侵襲性という強みを最大限に利用する    
 武井 康悦 東京医科大学病院 循環器内科

【コラム】MRIで深まったACSの理解:各撮像法の特徴を理解し,適切に組み合わせて検査を行う    
 奥田 茂男 慶應義塾大学医学部 放射線科学教室

“C” is for Coronary
5. ACSの薬物療法1:抗血小板療法と抗凝固療法    
 伊藤 大樹

【コラム】本邦未承認の抗血小板薬と抗凝固薬:多種多様な選択肢を有する米国での使用法    
 小船井 光太郎 東京ベイ・浦安市川医療センター 循環器科

6. ACSの薬物療法2:MONA,β遮断薬,ACE阻害薬/ARB,スタチンによる補助療法    
 上月 周 大阪府済生会中津病院 循環器内科
 平岡 栄治 東京ベイ・浦安市川医療センター 総合内科

7. NSTE-ACSの心カテーテルによる冠動脈造影検査とインターベンション:重症NETE-ACS患者における有用性を考える    
 酒井 孝裕 小倉記念病院 循環器内科

8. ACSの心カテーテル治療(PCI):テクニカルな話題と手術適応    
 青木 二郎 三井記念病院 循環器内科

【コラム】ACSの手術適応:外科医の立場から:PCI,CABG,OPCABの評価とその比較    
 西川 幸作・田端 実 榊原記念病院 心臓血管外科

【コラム】IABP/PCPSの使い方:あくまで“補助装置”であることを念頭に,適応となる症例を的確に判断する    
 田中 寿一 東京慈恵会医科大学 循環器内科
 香坂 俊 

“C” is for Complication
【コラム】ACSの急性期合併症1:腎保護の見地から,そして腎症が起こってしまったときの対応    
 猪原 拓 慶應義塾大学 循環器内科
 小松 康宏 聖路加国際病院 腎臓内科

【コラム】ACSの急性期合併症2:出血合併症:出血したときの抗血小板薬や抗凝固薬は?    
大野 博司 洛和会音羽病院 ICU/CCU

【コラム】ACSの急性期合併症3:ショック    
 阿古 潤哉 自治医科大学附属さいたま医療センター 循環器科
 村木 浩司 埼玉社会保険病院 循環器内科 

【コラム】ACSの急性期合併症4:不整脈    
 足利 洋志 Cardiac Arrhythmia Service,Division of Cardiology, Johns Hopkins University School of Medicine

“S” is for Syndrome
9. ACS という概念がもたらしたもの    
 安斉 俊久 国立循環器病研究センター 心臓血管内科

【コラム】ACSの病理学:不安定プラークを基質とする血栓形成メカニズム    
 水野 篤・西原 崇創 聖路加国際病院 心血管センター 循環器内科

10. ACS with normal coronary:単一の病態ではなく,さまざまな機序によって起こり得る    
 澤村 匡史 東京ベイ・浦安市川医療センター 集中治療科

11. 包括的心臓リハビリテーション:ACSからの回復をどうサポートするか?    
 長山 雅俊 榊原記念病院 循環器内科

12. ACSの長期予後を視野に入れた薬物・生活のマネジメント:科学的根拠と最新の知見    
 島田 悠一 Division of Cardiovascular Medicine, Brigham and Women’s Hospital, Harvard Medical School
 香坂 俊

13. 「特集 急性冠症候群」解説:ACSはカテ室から集中治療の現場へ    
 香坂 俊

【連載】
■Lefor’s Corner
第6回:Ventilator Management:Part II. Ventilator Modes and Settings    
 Alan T. Lefor Department of Surgery, Jichi Medical University

■ICUフェローからのメッセージ
第18 回:米国の医学シミュレーションセンターの取り組み    
 鹿瀬 陽一 東京慈恵会医科大学 麻酔科 集中治療部

■呼吸器離脱座談会:
こんなときどうする“もし◯◯患者の人工呼吸器離脱を考えたら”2例目    
 古川 力丸 日本大学医学部 救急医学系 救急集中治療医学分野
 内野 滋彦 東京慈恵会医科大学 麻酔科 集中治療部
 大庭 祐二 University of Missouri 呼吸集中治療内科
 讃井 將満 東京慈恵会医科大学 麻酔科 集中治療部

■集中治療に関する最新厳選20論文    
 柳井 真知 聖マリアンナ医科大学 救急医学
 藤谷 茂樹 東京ベイ・浦安市川医療センター/聖マリアンナ医科大学 救急医学

■JSEPTIC簡単アンケート    
第7回:補液,鎮静,人工呼吸器の設定と離脱
 内野 滋彦